楽天グループが、11日に第3四半期の決算を発表した。5月に1GB以下0円を廃止した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表して以降、ユーザーの流出が続いていた楽天モバイルだが、移行措置のキャッシュバックは8月に、ポイントバックは10月に終了した。契約者数を一定程度維持しつつ、“有料”に持ち込めるかは1つの焦点だった。11日の決算説明会は、その答え合わせができる場だったといえる。同社が初めて公開したARPU(1ユーザーからの平均収入)からも、その動向をうかがうことができる。

 1GB以下無料の廃止で収入増が実現しつつある楽天モバイルだが、基地局への投資コストも一巡しつつある。収益の増加と費用の減少の両輪を回し、2023年の黒字化を目指すのが同社の戦略だ。また、総務省のタスクフォースから出された報告書案を受け、プラチナバンド獲得の公算も高まっている。ここでは、0円廃止後の楽天モバイルが取る戦略を読み解いていきたい。

●0円廃止でユーザー数は減少、一方でARPUは向上

 5月に発表されたUN-LIMIT VIIで1GB以下0円の廃止を打ち出して以降、楽天モバイルの契約者は減少を続けている。契約者数の推移を見ると、その様子が分かりやすい。UN-LIMIT VIIを発表した5月に契約者の減少が始まり、サービス開始直前の6月にその谷が大きくなっている。7月は純減を抑えられたものの、8月には再び減少幅が顕著になった。これは、1GB以下のユーザーに対する1078円のキャッシュバックが8月いっぱいで終わったためだろう。

 9月の契約者数は8月からほぼ横ばいだが、わずかに減少。楽天モバイルの自社回線は、ユーザー数が455万まで低下した。第1四半期には491万契約まで伸ばしていたため、そこから36万契約ほど失った格好だ。半年で1割弱、契約者が減少したのは異例といえる。10月は同社の第4四半期になるため、データは公開されていないが、楽天ポイントでのポイントバックも同月で終わるため、契約者はさらに減少している可能性が高い。複数のMNOやMVNO関係者が、「10月はMNPでの獲得が伸びた」と語っていることも、これを裏づける。

 一方で、楽天モバイルに残ったユーザーも多かった。グラフの軸がないため、正確な数値は不明だが、4月時点では半数以上が無料で済ませていた。UN-LIMIT VIIの発表や導入で、この割合が急減するかと思いきや、8月時点でも4割弱の無料ユーザーが残っている。そのユーザー数をほぼ維持したまま、9月には全ユーザーが有料になった。この急激な有料ユーザーの割合増加が収入に与える影響は大きい。

 また、最後の移行措置であるポイントバックが10月31日で終わり、契約者数も増加に転じているようだ。楽天モバイルのCEO、タレック・アミン氏によると、「11月はUN-LIMIT VII発表前まで(純増数が)上がってきている」という。11月はまだ11日しかたっていないものの、新規契約者数が解約者数を上回っていることがうかがえる。残ったユーザーと同様、新たに獲得したユーザーも最低1078円は支払うため、楽天モバイルの収入は確実に増加する。

 こうした効果を反映しているのが、楽天モバイルの売上だ。UN-LIMIT VII発表前の第1四半期は、MNOの売上高が118億1700万円だったのに対し、UN-LIMIT VII導入後の第3四半期は205億6700万円を記録。ユーザー数は減少した一方で、売上高は大きく伸びている。内訳を見ると、音声通話やオプションはほぼ横ばいか微増なのに対し、データ通信料収入の拡大幅が大きい。

 初めて公開したARPUからも、その傾向がつかめる。1273円だった第2四半期のARPUは、UN-LIMIT VII導入後の第3四半期に1472円まで上昇。9月から、100%のユーザーから料金を取れるようになった結果、ユーザー1人あたりからの収入も伸ばせたことが分かる。音声通話のARPUや、オプションのARPUが上昇傾向にあるのは、同社の回線をメインで使うユーザーが増えている証拠だ。アミン氏によると、「オプションの付帯率も増加している」という。こうした収入の増加が、1GB以下0円を廃止した効果といえそうだ。

●基地局建設やローミングコストを削減、23年中の黒字化を目指す

 それでも、楽天モバイルが“火の車”であることに変わりはない。楽天グループのモバイルセグメントは、第3四半期で1290億円の赤字を計上。赤字幅は、前年同期の1052億円から拡大している。インターネットサービスやフィンテックといった他のセグメントはいずれも好調で黒字だが、それを打ち消している格好だ。2023年中に楽天モバイルの黒字化を果たすには、収入を増やすだけでなく、コストの削減も急務といえる。

 その手段の1つが、基地局建設コストの削減だ。急ピッチでエリアを拡大してきた楽天モバイルだが、9月には基地局数が5万を突破。2023年中には、これを6万局まで増やし、人口カバー率99%超を目指す。アミン氏によると、「6万の基地局ができれば、コストは下がっていく。開設費用のOPEX(事業経費)が下がり、メンテナンスには自動化などを入れていく」という。「コストは徹底的に管理していく」(同)というのが楽天モバイルの方針だ。

 もう1つは、ローミング費用の圧縮だ。現状、楽天モバイルは47都道府県全てで自社回線への切り替えを行っているが、ビル内や地方では依然としてパートナーエリアが残る。アミン氏は、「トラフィックの95%は楽天モバイルの自社ネットワークを流れている」とはいうものの、ローミングエリアには5GBの制限が設けられているため、データ容量が無制限になる自社エリアとはどうしても開きが生じる。基地局を6万まで増設し、人口カバー率が99%超になればこの費用を抑えられるというわけだ。

 楽天モバイルの代表取締役社長、矢澤俊介氏は、「KDDIとの契約があるので詳細は申し上げられないが、エリアマップを見ていただければ、ローミングが郊外に集中していることが分かる。今後、(そのエリアには)1万局のオンエアを見込んでいる」と語る。コストが抑えられるだけでなく、楽天モバイルの自社回線比率を拡大することは、ユーザーの獲得にもつながる。プラチナバンドだけを借りるローミングエリアと比べ、通信速度が速く、データ容量も無制限で「体験が素晴らしくなる」(アミン氏)からだ。

 UN-LIMIT VIIによる無料ユーザーの有料化と、基地局建設やローミングコスト削減の両輪で黒字化を目指す楽天モバイルだが、その収入はまだまだ少ない。データ通信と音声通話で1307円という第3四半期のARPUは、他社と比べると半額以下の水準だ。ドコモは、光回線を含まないモバイルだけのARPUが第2四半期で4060円。KDDIは3920円、ソフトバンクは3880円と、いずれも4000円前後。3社と比べ、楽天モバイルは料金が安いため、ARPUが上がりづらいのは事実だが、平均的なユーザーのデータ使用量が少ないことが影響している可能性もある。

●ARPUとユーザー数拡大で収入増も目指す

 ARPUを上げるには、楽天モバイルをメイン回線として使うヘビーユーザーを獲得していく必要がある。段階制の料金プランを採用している同社の場合、他社以上に実利用を増やしていくことが鍵になりそうだ。仮に全体の半分が20GBを超過すれば、残り半分が1078円にとどまっていても、データARPUだけで2178円になる。3GB以下と3GB超20GB以下、20GB超のユーザーがそれぞれ3分の1ずつでも、結果は同じ2178円。天井に張り付くヘビーユーザーや、3GBを超える中容量のユーザーを増加させることが、ARPU上昇の鍵になる。

 ネットワークの進化は、その有力な手段になりうる。5Gエリアの拡大は、ユーザーのデータ使用量増加に貢献するからだ。「干渉の問題がなく、最大の展開ができた」(同)という大阪では、5Gユーザーのデータ使用量が21.3GBと40%増加。支払う料金もデータ使用量に比例して上がり、ARPUは4Gのみ1612円から2013円へと25%上がっている。5Gの導入、拡大でデータトラフィックが増加するのは、世界共通の傾向。楽天モバイル以外の3キャリアも、これに近いデータを開示している。

 ここでも重要になるのが、基地局数だ。楽天モバイルの5Gに対応した基地局は、9月時点で6440にとどまる。5万局を展開した4Gと比べると、まだ桁が1つ少ない。競合他社もすでに万単位で5Gの基地局を展開している。ドコモは、2022年3月末に2万局を開局。ソフトバンクも、2月に人口カバー率85%を超えた段階で2万3000局を設置している。KDDIは計画に遅れが出ているものの、今期中の人口カバー率90%達成を目指す。4Gのエリア展開が一段落した今、楽天モバイルも5Gの拡大に注力する必要がありそうだ。

 また、エリアの拡大は、ユーザーの獲得にもプラスに働く。実際、人口カバー率が最も高い東京23区では、楽天モバイルの申し込み率が10.1%に達しているという。大阪府のように、人口カバー率で東京に迫る地域で8%を割っているケースもあるため、エリアと申し込み率が完全に連動しているわけではないが、やはり自社エリアを広げないことにはユーザーもついてこない。安定した収益を稼ぐには、契約者数そのものも増やさなければならない。1GB以下無料という“上げ底”がなくなった11月以降、どの程度の純増数を維持できるかに注目が集まる。

 エリアの拡大については、楽天モバイルに追い風が吹いている状況だ。楽天モバイルは、10月1日に改正された電波法の新たな制度を活用し、ドコモ、KDDI、ソフトバンクから5MHzずつ周波数を奪う形で、プラチナバンドのサービスを開始しようとしている。その移行方法を巡り、既存3社と意見が大きく対立していたが、8日に発表された総務省の報告書案では楽天モバイルの主張がおおむね認められた。プラチナバンド獲得に大きく前進した格好で、基地局の「実装は2024年3月を目指す」(同)。

 アミン氏によると、「プラチナバンドも、低コストで開設できる」という。1.7GHzの基地局と場所を共用する形で、「バックホールやダークファイバーなどの既存のインフラも活用する」(同)からだ。2023年に人口カバー率99%を達成した後、その数値には表れないエリアの“穴”をプラチナバンドで埋めていくことになる。ネットワーク品質やエリア展開で、大手3社にどこまで迫れるのか。これによって、楽天モバイルの成否が左右されそうだ。