Twitterの有料サービス「Twitter Blue」が、1月11日に日本で導入された。同サービスは、月額980円/1380円(iOSのApp Storeを経由した場合)。一部の新機能を先行で利用できるようになる他、タイムラインに表示される広告が半減したり、アイコンを変更できたりといったメリットがある。Twitter Blueは、米国やオーストラリアで先行導入されていたサービスだが、起業家のイーロン・マスク氏が同社を買収して以降、世界展開を急ぐことが明かされていた。日本での導入は、その一環と見ていいだろう。

 そんなTwitter Blueで、Twitterの使い勝手はどのように変わるのか。同サービスを2009年からおよそ14年弱の間、(無料で)使い続けてきた筆者も、サービスイン初日に契約してみた。その方法や、Twitter Blueならではの新機能を紹介しつつ、同サービスの今後を考えてみた。

●Twitter Blueへの申し込みは簡単 ブラウザ版とiOS版で料金が異なるので要注意

 1月11日の昼ごろ、いつものようにブラウザを開いてTwitterにアクセスしたところ、サイドバーの見慣れない文字が目に飛び込んできた。「Twitter Blue」だ。マスク氏が推し進めるリストラの一環で広報部員が軒並み日本法人を去ってしまったためプレスリリースのようなものは届いていないが、タイムラインを見る限り、他のユーザーも使えているようだ。発表はないが、正式なリリースと見ていいだろう。筆者も、すぐにWebから申し込んでみた。

 手順は簡単で、画面左に表示された「Twitter Blue」をクリックして、クレジットカード情報を入力し、「申し込み」のボタンを押すだけだ。料金は月額980円(税込み、以下同)。毎月、入会した日に次の支払いが発生する。途中で解約しても、いきなり利用できなくなるわけではなく、翌月の更新日まで有効のまま。1カ月分の有効期限を自動更新で購入していくという考え方が採用されている。こうした仕組みは、App StoreやPlayストアのサブスクリプションに近い。

 決済には米Stripeのプラットフォームが利用されている。解約したい場合や、領収書が欲しい場合は、Web版の場合、画面左の「もっと見る」をクリックした後、「Twitter Blue」→「設定」→「サブスクリプションを管理」→「現在のサブスクリプションを管理する」と進んでいくと、Stripeのページが表示される。ここで「プランをキャンセル」を選ぶと解約できる他、クレジットカードを変更したり、「インボイスの履歴」から領収書をダウンロードしたりすることが可能だ。

 ここまでの手順はPCを使ったブラウザ版の話だが、Twitter BlueはiOSにも対応している。iOSの場合、アプリからの申し込みにはApp Storeの月額課金機能を利用する形になる。ただし、このときの料金はブラウザからの申し込みより高い1380円。TwitterからAppleに支払う手数料の30%分が上乗せされている格好だ。厳密にいえば、Appleは2021年に1年以上経過したサブスクリプションの手数料を従来の30%から15%に値下げしているが、Twitter Blueの料金には反映されていない。

 サービス内容はどちらから申し込んでも同じため、クレジットカードを持っている場合は、ブラウザ経由がお勧めだ。クレジットカードを所有しておらず、Apple Gift Card経由で現金払いしたいというようなケースを除けば、わざわざ高い方を選ぶ理由はない。ただし、ブラウザで申し込んだ場合、iOSアプリからStripeのページを開くことができない。課金機能は、プラットフォームごとに分けられているというわけだ。

●便利な編集機能と使いどころに悩む取り消し機能、認証バッジ付与も

 申し込みが完了すると、すぐにTwitter Blueの各種機能が利用できるようになった。ただし、特典の1つであるアカウント名につく認証バッジは、付与に時間がかかる。筆者の場合、Twitter Blue申し込み直後に「通知」欄に「ご利用のアカウントは、まもなく認証されて青のチェックマークが付きます」という通知が表示された。翌々日の13日には、いつの間にか認証マークがついていたので、2日ほど時間がかかった格好だ。認証といっても、お金を払っていることを証明するだけのマークでしかないのだが……。

 とはいえ、認証アカウントは、通知欄の「認証済み」にツイートやリプライが表示されるようになる。筆者のように、フォロワーが1万を超えていると、何気ないつぶやきをしただけで、通知欄が埋まってしまうことも少なくない。数が多すぎると、必要な通知を見逃してしまう恐れも出てくる。このようなときに、認証済みのユーザー同士なら、リプライをすぐに確認できて便利だ。ただ、これも認証済みのユーザーが限られている場合の話。Twitter Blueのユーザーが増えれば、このような使い方は機能しなくなる。

 筆者がTwitter Blueに期待していたのは、ツイートの編集機能が使えるようになることだ。仕事柄、記者会見を聞きながら素早くキーパーソンの発言をツイートするといった使い方をしているが、急いで入力すると、どうしても誤字が多くなってしまう。スマートフォンからサッとツイートした際にも、予測変換に引っ張られて予想外の言葉が入力されていることがある。ツイートの誤字をそこまで気にする必要はないかもしれないが、数字の間違いなど、致命的なものは直したい。

 編集機能は、このようなときに役に立つ。ブラウザ版の場合、編集したいツイートの右上に表示されている「…」をクリックして、「ツイートを編集」をクリック。アプリ版も、操作方法はほぼ同じだ。ただし、ブラウザでツイートして、iPhoneで編集するといったことはできない。また、同機能も含めたTwitter Blueは、申し込んでしまいさえすればAndroidアプリでも利用できる。あくまで、課金プラットフォームが対応しているかどうかの話というわけだ。Androidだから申し込みはいいや……と思っていた人は、ブラウザから申し込めばいい。

 残念なのが、リプライがついたツイートは編集できないこと。親切なフォロワーが誤字脱字や事実誤認を指摘した段階で、編集ができなくなってしまうのは本末転倒気味だ。また、自分のツイートにリプライする形でツリーにした場合も、編集は無効になる。リプライがついた後、もともとの発言を180度変えてしまうことを防ぐ意味合いもありそうだが、編集したツイートにはその履歴も表示されるため、一定の抑止効果にはなる。5回までの回数制限はいいが、30分という時間制限は少々残念。間違いに気付いても、あとの祭りになってしまうことがあるからだ。

 Twitter Blueのもう1つの大きな機能が、「ツイートの取り消し」だ。こちらは、取り消しと銘打たれてはいるものの、どちらかといえば、時間差投稿に近い。ツイートボタンを押してから実際に投稿されるまでの間にタイムラグを設け、その間に取り消しをできるようにするためのものだ。時間は5秒、10秒、20秒、30秒、60秒の5段階。ツイートだけでなく、返信、投票、引用、スレッドそれぞれで、ツイートの取り消しをするかどうかを変更することが可能だ。

 Twitter Blueを有効にすると、標準でこの機能が適用され、20秒のタイムラグが設けられる。設定変更は、クライアントごとに適用される。PCのブラウザとスマートフォン用アプリなど、複数のデバイスを使っている場合には少々面倒。設定を同期する機能は欲しい。ただ、投稿がすぐに反映されないのはスピード感に欠けるきらいもある。せっかちな人には、あまり向かない機能といえそうだ。かくいう筆者も、この機能はオフにしてしまった。すぐに投稿することもできるが、ワンタップ分、操作が増えてしまうのも面倒だ。

●ただよう割高感、バンドル化は普及の鍵になるか

 逆に、企業アカウントやインフルエンサーなど、ツイートがビジネスに直結しているユーザーには、編集や取り消しは便利な機能といえそうだ。また、Twitter Blueに申し込むと、アップロードできる動画の解像度が1080p(フルHD)になり、尺も最長で60分に伸びる。こうした機能も、どちらかといえば企業やインフルエンサー向き。収益化の方法がないため魅力は限定的だが、企業がプロモーションの映像を配信するといった使い方はできそうだ。日常生活の延長でSNSを楽しむというより、Twitterをヘビーに使いこなしているユーザー向けの機能といえる。

 もっとも、それゆえにTwitter Blueを利用するユーザーがどこまで増えるかは未知数だ。現状ではツイートの編集や取り消し、動画の強化などが中心だが、機能の数に対して、価格は割高といえる。もともと、Twitter Blueが米国などで始まった際の料金は350円だった。このぐらいなら気軽に支払えそうだが、980円となると、どうしても他のサービスと比較した際のコストパフォーマンスが気になってくる。

 例えば、Netflixのベーシックプランは990円。720pと解像度は制限されるものの、この金額を払えば膨大な映像作品が見放題になる。1億曲を超える楽曲が再生し放題になるApple Musicも、個人向けプランは1080円。ECの配送特典や動画、音楽、ストレージなどのサービスがセットになったAmazonプライムは、月額料金で500円とさらに安い。1000誌以上の雑誌が見放題になるdマガジンも、わずか440円。こうした価格帯の近い各種サービスと比べると、980円という料金はやはり割高に見えてくる。

 そこそこ(かどうかの判断は読者およびフォロワーの皆さまにお任せする)Twitterを活用している筆者ですら、編集や取り消しの機能だけのために毎月980円払うのはためらう。よりライトなユーザーであれば、なおさらそう思うはずだ。今は長くお世話になったTwitterを支える一助になればと、お礼のような気持ちでTwitter Blueに加入しているが、継続するかどうかはかなり悩ましい。ヘビーユーザーには中途半端だし、そうでないより多くのライトユーザーには高すぎる。収益化を急ぐあまり、値上げしたことが裏目に出ているような印象だ。

 もっとも、このTwitter Blueの機能が“何かのオマケ”として使えるのであれば、うれしい人は多いだろう。Twitter Blueの各種機能は、インフラであるモバイルネットワークやスマートフォンなどと、特に相性がいい。auが展開している「使い放題MAX ○○パック」の中にいちサービスとして含まれていたり、スマートフォンを購入した際の特典として利用できたりすれば、使ってみようと思うユーザーは増えるかもしれない。キャリアやメーカーにとっても、データ容量や端末に搭載された機能の利用促進につながる。このようなバンドルができるパートナーを見つけることが、今のTwitterにとって必要といえそうだ。