東日本旅客鉄道(JR東日本)は3月18日から、「モバイルSuica」(※1)で中学生および高校生向けの通学定期券を購入できるようにする。また、PASMO協議会(パスモ)も同日から、一部の鉄道/バス事業者において「モバイルPASMO」(※1)で中学生および高校生向けの通学定期券を購入できるようにする。同日以降は、中学生/高校生用の「Suica通学定期券」「PASMO通学定期券」をそれぞれのアプリに取り込むことも可能となる(※2)。
なお、中学生/高校生の通学定期券を購入するには、定期券の新規購入を行うためのアプリ(※3)を最新バージョンにする必要がある。
(※1)特記のない限り、Apple Pay(iPhone/Apple Watch)のSuica/PASMOを含む(※2)通学定期券の発売元、発売区間や経路によっては取り込めない場合がある(※3)Androidスマートフォンでは「モバイルSuica」「モバイルPASMO」の各アプリ、Apple Payでは「Suica」「PASMO」の各アプリ
●中学生/高校生向け通学定期券の購入方法
中学生/高校生向け通学定期券の購入方法は、基本的に大学生(※4)向けの通学定期券と同様だ。
(※4)購入年度内に満19歳以上になることが条件で、高等専門学校(高専)の4年生以上と専門学校生も含む
中学生/高校生向けの通学定期券は、中学校および高等学校(または両者に相当する課程)に通学する13歳以上の生徒を対象に発売する。13歳未満(12歳)の生徒については、現時点ではAndroidスマートフォン向けのモバイルSuicaのみ対応する。また、「実習用通学定期券」(※5)と小学生用の通学定期券の発売には引き続き対応しない。
新規購入時と年度またぎの継続購入時(※6)は「通学証明書」「通学定期乗車券発行控」あるいは「通学定期乗車券発行控と一体化された学生証」を用意する必要がある(※7)。
(※5)教育実習や実技研修など、学校(キャンパス)外に通学する必要がある場合に限り発売される(もちろん通学証明書類は必要)(※6)継続後の有効期限が「5月1日」以降になる場合(※7)モバイルPASMOでバス通学定期券を購入する場合、一部の会社では会社指定書式の通学証明書類でも代用可
具体的な購入方法は以下の通りとなる。
新規購入/年度をまたぐ継続購入
通学定期券の新規購入と、年度をまたぐ継続購入は各サービス用のアプリでの購入が必須となる。手続きは大きく「購入予約」と「実際の購入」の2つに分かれる。新規購入を例に、簡単な流れを解説する(継続購入時は一部手順が異なる)。
【ステップ1:購入予約】
1. アプリで「定期券の購入」メニューを開く
2. 購入する定期券の種類で「通学定期券」を選ぶ
3. 通学区分を選ぶ(※8)
4. 自宅の最寄り駅(停留所)から学校の最寄り駅(停留所)を入力する
5. 利用(乗車)経路を選択する(※9)
6. 定期券の利用開始日と購入期間を選択する
7. 学生情報(定期券購入者や学校に関する情報)を入力する
8. 通学証明書類を指示に従い撮影し、アップロードする(※10)
9. 予約内容を確認し、問題がなければ完了する
(※8)中等教育学校の1〜3年生や義務教育学校の7〜9年生は「中学生」、中等教育学校の4〜6年生や高専の1〜3年生は「高校生」を選択する(※9)通学証明書類で通学経路が指定されている場合は、必ず合致する経路を選択する(※10)スマホで通学証明書類の写真を撮影できない場合は「会員専用Webサイトでの写真アップロード」または「サポートセンターへの郵送」も選べる(詳細は手続き時に確認可能)
予約内容はサポートセンターで確認され、その結果はメールとアプリを通して通知される。アプリで証明書類を撮影した場合、モバイルSuicaでは原則として予約完了の翌日から翌々日に、モバイルPASMOでは予約完了日から最長1週間で結果が届く。
承認通知が届いたら、実際の購入手続きに移行する。
【ステップ2:購入】
1. アプリで「定期券の購入」メニューを開く
2. 予約のある旨が表示されたら、画面の指示に従って購入手続きを進める
3. 定期券の代金をアプリごとに指定された方法で支払う(後述)
4. 購入完了
年度内の継続/履歴購入
年度内の継続購入または履歴購入(有効期限が切れた定期券と同一区間/経由での買い直し)については、上記のような手続きは不要だ。通勤定期券と同様に、アプリの「定期券の購入」メニューから簡単に購入できる。
なお、この場合、Androidを利用している場合は「Google Pay」アプリから、Apple Payを利用している場合は「ウォレット」アプリからも手続き可能だ。
●通学定期券の代金を支払う方法
通学定期券の代金は、以下のいずれかの方法で支払える。なお「カード」はクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードのことを指す。
・モバイルSuica/モバイルPASMOの会員情報に登録したカード
・主要カードブランドに対応(Diners ClubはモバイルSuicaのみ対応)
・「3Dセキュア 2.0」による本人確認が必須
Google Payに登録したカード
・Android版アプリとGoogle Payアプリを利用する場合のみ
Apple Payに登録したカード
・iOS版アプリとウォレットアプリを利用する場合のみ
・Visaブランドのカードは一部のカード発行会社のみ対応(参考記事)
・Diners Clubブランドのカードは利用不可(※11)
(※11)「コンパニオンカード(Mastercardブランド)」を別途発行できる場合は、Apple Payにコンパニオンカードを登録することで利用可能(ビジネスコンパニオンカードを除く)
ただし、上記は全て本人名義のカードを利用することを前提としており、中学生や高校生にはハードルが高い。そこで、JR東日本とPASMO協議会では以下の対策を講じている。
モバイルSuica(JR東日本)
JR東日本は3月18日から、モバイルSuica会員“以外”の名義のカードを使ってモバイルSuica通学定期券の代金を支払えるサービス「ワンタイムクレカ決済」を導入する。
ワンタイムクレカ決済を使うと、他者(保護者)が持つカードを使ってモバイルSuica通学定期券を「代理購入」できる。決済に利用するカードは「3Dセキュア 2.0」による本人確認に対応している必要がある。
なお、ワンタイムクレカ決済は、iOSのSuicaアプリによる「My Suica」(記名式で定期券情報のないSuicaカード)の新規発行時に行う「初回チャージ」でも利用できる。ただし、チャージ額は「1000円」に固定される。
モバイルPASMO(PASMO協議会)
パスモは、他者(保護者)による代理決済の仕組みを導入しない。
中学生や高校生がモバイルPASMO通学定期券を購入する場合は、3Dセキュア 2.0に対応するデビットカードやプリペイドカードを会員情報にひも付けた上で、預金/チャージ残高を使って通学定期券を購入する方法を推奨している。
●中高生の通学定期券を買えるようにしたのはなぜ?
その名の通り「通学定期券」は学校に通学する人を対象に発売される定期券(定期乗車券)である。通学定期券は誰でも買えるわけではなく、初めて購入する際、または年度をまたいで継続購入する際には通学証明書類の提出が必要である。当然、係員による確認も必要なので係員のいる「定期券発売窓口」での購入が原則だ。
しかし昨今、人手不足や新型コロナウイルス感染症による乗客の減少を受けて、鉄道/バス会社は定期券発売窓口の縮小/廃止を急速に進めている。その影響で、通学定期券の購入に際して鉄道やバスを使って移動して定期券発売窓口に赴かなければならないケースも増えている。当然、少なくなった窓口に購入客が集中することにもなるため、混雑も激しくなる。
鉄道/バス会社によっては、混雑時に臨時窓口を開設したり、係員の手動操作(確認)をもって駅の自動券売機で購入できるようにしたりする措置を講じている。それでも“常設”窓口は減ってしまったので、混雑に拍車が掛かることは想像に難くない。年度内の継続購入は一部の自動券売機でサクッと行えるのだが、そのことを知らない人も思いのほか多く、新年度前後でなくとも窓口が混雑してしまうこともある。
今回、モバイルSuicaとモバイルPASMOの通学定期券の発売対象を「中学生以上」に広げるのは、窓口の混雑緩和を図ると同時に、購入のために必要な余計な手間を掛けさせない(≒窓口のある駅までの移動の手間を省く)ことを狙っているものと思われる。
●モバイルPASMO定期券を購入できる鉄道/バス会社(参考情報)
モバイルPASMOでは「鉄道定期券」と「バス定期券」を1枚ずつ購入(搭載)できるが、発売できる事業者が限られている。
鉄道定期券
モバイルPASMOの鉄道定期券は、以下の会社の駅を“発駅”とするものを購入できる。首都圏Suicaエリアを含めて「連絡定期券」も購入可能だが、経路によってはモバイルPASMOでは購入できないこともあるので注意しよう。
・小田急電鉄
・京王電鉄
・京成電鉄
・京浜急行電鉄
・埼玉高速鉄道
・相模鉄道
・首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)
・新京成電鉄
・西武鉄道
・多摩都市モノレール
・千葉都市モノレール
・東急電鉄(世田谷線は「バス定期券」として発売)
・東京地下鉄(東京メトロ)
・東京都交通局(都電荒川線は「バス定期券」として発売)
・東武鉄道
・北総鉄道
・ゆりかもめ
・横浜高速鉄道(みなとみらい線)
・横浜市交通局
・横浜シーサイドライン
バス定期券(路面電車を含む)
モバイルPASMOのバス定期券は、以下の会社のものを購入できる。路面電車の定期券もバス定期券として発売される。なお、対応している会社でも、系統/路線によっては発売していないこともあるので注意しよう。
・江ノ電バス
・小田急バス
・神奈川中央交通
・川崎市交通局
・川崎鶴見臨港バス
・関東鉄道(関鉄バス)
・関東バス
・京王バス
・京成トランジットバス
・京成バス/京成タウンバス
・西武バス
・相鉄バス
・立川バス
・東急バス
・東急電鉄(世田谷線のみ)
・東京都交通局(都電荒川線を含む)
・東武バスセントラル/東武バスウエスト
・東洋バス/千葉シーサイドバス
・西東京バス
・日立自動車交通
・船橋新京成バス
・横浜市交通局
ちなみに、モバイルSuicaでも「PASMOバス定期券」は搭載できる。ただし、以下の条件と制約があるため気を付けよう。
・アプリでは購入できない(バス会社の定期券窓口で購入する必要がある)
・My Suicaまたは定期券登録のあるモバイルSuicaのみ対応(無記名だと搭載不可)
・アプリではバス定期券の券面を確認できない(発行時に手渡される「内容控」を常に持ち歩く必要がある)
・モバイルSuica定期券(鉄道定期券)を使っている場合、定期券の内容によってはバス定期券を搭載できない場合がある
・紛失/盗難時の対応がカードタイプのPASMO/My Suica(定期券を含む)と一部異なる