KDDIが、トヨタ自動車と連携し、交通事故が起きやすい危険地帯を予測するソリューション「危険地点スコアリング」を、法人や自治体向けに2024年春から提供する。

 KDDIとトヨタは、2020年10月30日から、「通信技術およびコネクテッドカー技術の研究開発」と「人々の生活を豊かにするサービスの開発」に共同で取り組んできた。今後は、「安全・安心なモビリティ社会の実現」「グリーンなモビリティ社会の実現」「モビリティ体験価値の拡張」の取り組みを強化していく。

●KDDIとトヨタのデータを掛け合わせて事故の危険地点を可視化

 安全・安心なモビリティ社会を実現する上で課題になるのが交通事故だ。2022年に発生した交通事故は約30万件に上り、警察庁の統計によると、見通しの悪さに起因する事故が約4割を占めている。この事故を解消すべくKDDIとトヨタが開発しているのが、危険地点スコアリングだ。

 KDDIが持つスマートフォンの位置情報、契約者の属性情報(性別・年代)などの「人流データ」、トヨタが持つ車両数、平均車速、急減速発生件数、一時停止率、右左折率などの「車両データ」、道路特性や交通事故発生数などの「オープンデータ」をAIで分析し、危険地点をスコアリングして可視化する。

 例えば高齢の歩行者が多い、自転車の交通量が多い、急ブレーキが多発しているなどの要因が判明すれば、道路標識を新設するなどの対策が取れるようになる。この機能は車と自転車の事故防止から取り組んでいく。

●車と自転車の「出会い頭の事故」を防ぐための接近通知技術も開発

 車と自転車の位置情報を活用し、危険な交差点に車や自転車などが近づいたら、それぞれの運転者のスマートフォンに通知をする接近通知「Vehicle to Bike」も開発している。これは、車とさまざまな物をつなぐ「Vehicle to X」の取り組みの一環となる。事故発生の10〜5秒前に車と自転車の双方に通知することで減速を促し、出会い頭に衝突するといった事故を防げるようになる。

 名古屋大学とトヨタの共同研究によると、交差点進入の5〜6秒前に通知をすることで、余裕を持って減速できるという。また、通知対象の探索単位を絞り、交差点での衝突判定ロジックを高速化することで、低遅延での処理が可能になるとしている。

 さらに、危険地点スコアリングと組み合わせることで、危険な交差点でのみ通知を発生させて煩わしさを低減する。危険な交差点との距離に応じて位置情報の更新頻度を抑えることで、スマートフォンの電池持ちを向上させる。こうした、継続的に使ってもらえる工夫も施していく。

 2023年2月1日から2月28日まで、東京都板橋区の公道で実証実験を行ったところ、交差点への進入速度が時速平均10.1km減速する効果があることを確認できたという。

 危険度のスコアリングを一般提供するかどうかは未定だが、例えばアプリ開発ベンダーに提供し、カーナビアプリに搭載するといったことは可能だという。

●コネクテッドサービスを監視する体制も構築

 こうした無線通信を利用した安全の取り組みは、通信障害やサーバへの攻撃が起きたら致命的になる。そこで、コネクテッドサービスを監視する体制として、「つながる みまもりセンター」を設ける。ここでは、トヨタの車両情報やサーバ情報、KDDIのモバイルネットワークを横断的につなげ、サービスに不具合がないか、車ごとに状況を把握する。

 KDDIとトヨタの知見を生かすことで、ネットワーク、車両、サーバそれぞれで異常な通信パターンを検知できるようになるとしている。

 今後の取り組みとして、2024年2月5日から「グリーンなモビリティ社会の実現」をテーマに、液浸冷却技術を活用した小型データセンターを設置。大容量データをネットワークエッジで処理するフィールド実証を実施している。

 2024年2月20日から5月31日まで、「モビリティ体験価値の拡張」をテーマに、複数人で共同編集できるコミュニケーション型おでかけ計画サービス「おでかけデザイン」、ARグラスお試しモニターのトライアルサービスを実施する。

●海外展開や他事業者との連携も視野に

 KDDIとトヨタの取り組みの一部は、スペイン・バルセロナで開催される展示会「MWC Barcelona 2024」で展示する予定で、海外展開も視野に入れている。「モビリティは、移動するので、国を超えた領域で広がっていくことをも想定されている。グローバルで展開する前提でこういった仕組みを考えている」(KDDI 執行役員 経営戦略本部長の門脇誠氏)

 なお、ソフトバンクは本田技研工業・本田技術研究所と、コネクテッドカーを対象に、歩行者と車の事故低減に向けたセルラーV2X(モバイル回線を用いて車が道路インフラや歩行者などと接続する仕組み)の取り組みを進めている。今回、KDDIとトヨタが推進するのはスマートフォン同士の連携にとどまる。「セルラーV2Xは今後の課題」(KDDI 技術統括本部 技術戦略本部長の大谷朋広氏)だとした。

 モビリティサービスは公共性が高いことから、他の事業者や街全体と連携していくことが求められる。KDDIとトヨタともに、自社で閉じたサービスを提供するのではなく、他のモビリティサービスとの連携も必要との認識。ただし具体的に決まっていることはなく、これから検討するフェーズになる。