先週は、「Xbox Series S」および「Series X」(以下Xbox S/X)、「PlayStation 5」(以下PS5)と、新型のゲーム機が相次いで発売された。西田も、私物のPS5こそ手に入れられていないが、Xbox Series Sは購入できた。

 筆者は長くゲーム機とそのビジネスを取材しているが、それは単にゲームが好きだから、ではない。比較的短期間で、定期的にアーキテクチャが大幅に刷新されるコンピュータだからだ。

 コンピュータのアーキテクチャは、技術だけで決まるものではない。ビジネス上の要因と根深く絡み合っており、特にゲーム機はその傾向が強い。だからこそ、過去と現在を比較した場合、非常に興味深い点を多く見つけることができる。

 今回は、2つの最新ゲームプラットフォームを、「ネットワークサービスとの関わり」という観点から見ていこう。

●今振り返る「前世代」ゲーム機

 前の世代である「PlayStation 4」「Xbox One」以降、米Microsoftとソニーのゲーム機は似た部分が多くなっている。同じ時代に、同じような世代の技術を使い、AMDと共同開発したSoCを活用するからだ。

 もちろん、同じSoCを使っているわけではない。それぞれに得手・不得手が若干あり、それがゲーム上の表現の違いとして現れることがある。しかし、それは優劣というよりもそれぞれの個性と言っていいレベル。そしてその個性も、1980年代や90年代のゲーム機ほど濃いものではない。

 ゲーミングPCとの親和性を高めつつ、もっと手軽に手に入り、プラットフォームとしての完結性の高いデバイスになっていたのが、前世代のゲーム機と言っていい。その結果として、開発効率が向上し、ソフトウェアの充実が図られた。

 一方で、ゲーミングPCとの差別化は大きな課題となり、裾野をいかに広げるかの策を充実させるかがポイントとなった、といってもいいだろう。

●「PS4そのまま」の互換性を重視したPS5、テレビとのセットで訴求

 この観点でPS5やXbox S/Xを見ると、それぞれ向かっている特徴がかなり異なっているのが分かってくる。ポイントは「互換性」だ。

 PS5は、PS4とほぼ完全な互換性を持つ。100%ではないが、過去、PS2がPS1の互換性を持っていた時に近い感触だ。

 従来と違うのは、現在のゲームプラットフォームは「オンラインが基本」になってきていることだ。ディスクからの起動による互換はもちろんだが、それ以上に、ゲームそのものや互換性向上パッチのダウンロードにより、PS4世代のゲームがより快適にPS5で動く、という点が重要になっている。

 PS5のゲームライブラリからは、PS4のゲームもPS5のゲームも、あまり差がなく、同じように見える。どちらも同様に「重要なゲーム」だからだ。

 そういう意味では、PS5は新しい高性能ゲーム機であると同時に、「より良いPS4」なのだ。そのことは否定されるべきものではないし、むしろ消費者にはプラスといえる。

 一方で、PS5がまだ買えない、まだ欲しいPS5タイトルがない人には、PS4というプラットフォームをメンテナンスしていく必然性がある、ということでもある。

 PS4を単純に低価格モデルとして位置付けるのか、それとも、PS5の拡販と低価格化を進め、素早く移行していくのか。

 おそらくSIEは、初期には「緩やかな移行」を志向していたものの、今はPS5への移行を加速するつもりなのではないかと読んでいる。PS5へのデマンドが大きいうちに生産体制を整え、加速した方が、「PS5ならでは」のゲームを多く作れるようになるからだ。データ読み込みの速度や3Dオーディオ、コントローラーの工夫など、PS5ならではの部分は多々ある。

 「テレビにつながったPS5でしかやりにくいこと」を多くしていき、PS5ならではのゲームを増やすことこそが、SIEの戦略といえる。

●仮想マシンで互換を実現するXbox S/X

 一方でXbox S/Xは、PS5に比べ、互換対応のソフト供給が大変なようだ。それは、PS5が「PS4をそのまま動かす」ためのハードウェアに近い構造をとなっているのに対し、Xbox S/Xが「仮想マシンによる互換レイヤーで、ハードウェア依存性を下げて対応する」モデルになっているからだ。具体的には、OS上にHyper-Vの仮想マシンが用意され、その上で互換レイヤーを動かす。

 利点は、ハードウェア依存度が低く、ゲーム機が世代をまたいだり、ハードウェアに変更が加わったりしても、互換維持を実現しやすいというところだ。そのため、Xbox 360を含めた過去のXboxからの互換性を保ち、古いソフトを動かせる。PS5は結局PS4のゲームしか動かない。今後対応の可能性もあるが、「過去のものを今のクオリティで遊べる」のはXboxシリーズの美点である。

 欠点は、互換対応の検証や修正が重くなりやすいこと、そして、ゲーム機内で動くOSレイヤーが厚くなり、ゲームそのものに割けるリソースが減りやすいことだ。ハードの会社であるソニーと、ソフトの会社であるMicrosoft……というのは、少しシンプル化しすぎだろうか。

 MicrosoftはXbox One世代でPS4の後塵(じん)を拝した。Xbox Oneを売り続けることに拘るよりも、新世代でビジネス環境を変える方が望ましい。もちろん、Xbox Oneや、それ以前のXbox 360などとの互換性は重要だし、ファンも維持する必要がある。

 今回、MicrosoftはXbox Series Sという廉価モデルを用意した。筆者は構造が気になったのであえてこちらを買ったが、性能はPS5やXbox Series Xほど高くない。だが、安価で小さいのはメリットだ。一方、これだけハードウェア構成が違うモデルを用意すると、実質的には「2つのゲーム機をローンチしている」ような部分もある。ソフトウェアレイヤーでの調整と、開発支援キット上での支援が欠かせない。

 互換レイヤーなどのソフト部分を厚くしているのも、「ハードウェアのバリエーション」を増やすことを想定してのものかもしれない。

 また、Xboxのネットサービス「Xbox Live」には「Xbox Game Pass」という、ゲームの定額制遊び放題サービスも用意されている。こちらを使えば、同じゲームの一部がXboxでもPCでも遊べる。

 ネットワークサービスをより厚くし、さらに、PCまで含めた多数のハードウェアを「Xbox」ブランドとしてまとめるのがMicrosoftの戦略である。Xbox S/Xというハードウェアを軽視したわけではないが、単体での魅力以上にサービス連携の魅力を重視したのが、ハードウェア構成からも感じられる。

●親近感は「プラットフォーム設計」が醸成する

 このように、両者は意外と異なっている。

 ビジネスモデル的にはSIEの方が保守的であり、Microsoftの方が攻めているようにも思える。まあ、「負けている側が積極的になる」のは当然のことともいえるのだが。

 購入を考える場合には、「テレビ+ゲーム機」を軸にするPS5か、「PCまで含めた複合的な市場」を考えるMicrosoftか、という見方をする必要はあるだろう。

 もちろん、単に好みで選んでもいい。プラットフォームに対する思い入れは親近感は重要だ。そしてある意味、それをどう醸成するのかも、ハードウェアやプラットフォーム設計の仕事である。

※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、西田宗千佳さん執筆のコラムを転載したものです。