東京大学と米Microsoftの研究チームが開発した「TelemetRing」は、指輪のように装着し、キーボードなしにタイピングが行えるバッテリー不要のリング型無線ウェアラブルデバイスだ。テーブルや太ももなどをたたくようにタイピングして入力できる。

 デバイスは5本の指に装着するリング型コイルと、その動きを読み取るリストバンド型コイルで構成。装着した指を机や膝の上で叩いた時の衝撃を検出し、どの指かを分類する。

 たたくことで発生する衝撃振動により、装着したリングのインピーダンス(電圧と電流の差)が変化し、そのインピーダンスの変化が磁界結合(2つのコイル間でワイヤレス伝送する仕組み)を介してリストバンドに伝わり、測定システムの信号処理によりタイピングを識別する。

 5つのリングはそれぞれ異なる共振周波数が設定されているため、どの指がタイピングされたかが区別できる。たたいた指の組み合わせによって文字やコマンドを表現する。例えば、中指と小指で同時にたたくと“U”、人差し指と薬指で同時にたたくと“I”、親指の次に人差し指でたたくと“S”、中指だけでたたくと“T”、というように1文字ずつ入力が行える。

 課題は、リングとリストバンド間の磁界結合が弱く、インピーダンスの変化が小さくなる現象だった。研究チームは微弱な磁界結合でもインピーダンスの変化を正確に読み取るシステムを開発し、この課題に取り組んだ。

 その結果、異なる周波数で5つの高感度チャンネルを構成し、タイピングの検出とタイピングされた指の分類を同時に実現。タイピング認識率を評価した実験では、89.7%の認識精度を報告しその有効性を示したとしている。

※この記事は、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。