中国のHuawei(華為技術、ファーウェイ)が米国政府に端を発するさまざまな規制でピンチに直面したことは広く報道された。今回はあまり知られていない“その後”について紹介したい。

●Honorブランドは売却、自社スマホは足踏み続く

 同社が直面した規制について振り返ると、通信インフラでは、米国のHuaweiを対象とした米国製品の禁輸により、Huaweiの5Gインフラの海外進出が滞っている。またスマートフォンについてはGoogle Play非対応となったほか、台湾TSMCがHuawei傘下のHiSiliconが開発するSoC「Kirin」の量産の新規受注を停止した。

 2020年11月にはサブブランドの「Honor」を分離し別会社にすることを発表。Huaweiは「深セン市智慧城市科技発展集団」とHonorのディーラー30社による新会社「深セン市智信新信息技術有限公司」にHonorブランドを売却し、Honorはファーウェイとの関係を断ち独立した。当時Huaweiは悔しさをにじませるコメントをしていた。

 その後の2021年だが、Huaweiからは「Kirin 9000」を採用した折りたたみスマホの「Mate X2」(これが約30万円と恐ろしく高い)と、別会社となったHonorからは台湾MediaTekの「Dimensity1000+」採用の「V40」ほか数機種を発表した。とはいえDimensity1000+採用マシンでは、競合他社がリリースする同価格帯のSnapdragon 888搭載機と比べるには性能ではあまりに分が悪い。最新のコンシューマー製品発表会では、ノートPC「Mate book」やディスプレイ類を発表したが、スマートフォン製品は発表されなかった。

 その間にも中国のライバル企業のOPPOやvivoやXiaomiがスペックを更新した新製品をリリース。足踏みしたHuaweiはシェアを大きく落とした。

 Strategy Analyticsの2021年第1四半期の世界スマートフォン出荷台数レポートによると、Huawei、Honorともシェアは5位以下の「その他」に凋落。Canalysの同四半期の中国スマートフォン出荷台数レポートにおいても、Huaweiは前年同期の30万1000台から14万9000台に半減し、シェアは3位に落ちた。

 ファーウェイの余承東氏は微信(WeChat)のグループチャット内で、「米国の制裁のせいで2年間という短い時間で極端な状況に追い込まれ、ハイエンドはAppleに、ミドルとローエンドはSamsung、OPPO、vivo、Xiaomiに取られた」と恨み節のコメントをしている。

 HuaweiはIoT製品とクラウドを活用したSI企業の一面と、スマートフォンなどのコンシューマー向け製品をリリースする一面がある。SI事業については、中国と世界でさまざまなプロジェクトに関わっている。

 特に中国国内においては、ネットインフラから学校、医療、農業、金融、道路や鉄道などの交通、スマートシティーに至るまでさまざまな業界との提携を発表し、ありとあらゆるニーズに応えたシステムを開発している。中国国内では失速という雰囲気はまるでない。

 一方スマートフォンをはじめとしたコンシューマー向け事業だが、スマートフォンの柱を失いそのままコンシューマー事業をフェードアウトさせるのかというと答えはノーだ。

 スマートフォンのリリースはまだ厳しいが、一方で現段階ではスマートフォンが作れていない中で、各種同社製品を「つながること」に重心を向けている。発表会ではHuaweiがプッシュするスマートテレビ「華為智能屏」の廉価版「華為智能屏SE」を発表し、ますます繋がることを重視している。

●「HarmonyOS」による家電連携が当面の戦略か

 先行して発売されている鴻蒙ことHarmonyOS 1.0搭載のスマートテレビ「華為智慧屏」も、同社製のスマートフォン、Webカメラ、スマートウォッチ、フィットネス機器などと連携し、スマートフォン数台のゲーム画面をディスプレイ上に映し出したり、ルームランナーとスマートウォッチと連携してフィットレスのレッスン画面を表示しながら脈拍や利用データなどを収集しまとめることが可能となっている。

 HarmonyOS搭載機ではないが、発売済みの車載ディスプレイ製品においても同様に対応スマートフォンとのシームレスな画面連携ができる。

 中国のスマート家電というとXiaomiをイメージするだろう。Xiaomiは対応家電とスマートフォンとをつないで、アプリからさまざまな設定や、利用記録の蓄積・分析ができる。

 対してHuaweiのアプローチはさらに、ディスプレイがある機器同士をつなぎ、スマートテレビにWebカメラやスマートフォンの画面を表示するといったこと可能にする。より直感的にさまざまな家電をあらゆるディスプレイのある機器で操作するというものだ。

 Huaweiはスマートディスプレイをプッシュしているが、他にも対応するスマートフォン製品がないと心もとない。

 Huawei自体がネットワークカメラなど対応製品を発売するほか、「華為智選」というHuaweiお墨付きのスマート製品販売を販売するプラットフォームを用意。ロボット掃除機やランニングマシンやドアホンなどさまざまな対応他社製品を販売し、対応製品のラインアップを拡充させている。

 中国では何かとQRコードを使ってスマートフォンとサービスの連携を行いがちだが、Huaweiの機器はおおむねNFCを利用して連携する。つまり同社スマホを対応機器にピッとタッチするだけでリンクするというものだ。

 Huaweiのスマートフォンやスマートテレビや各種対応機器をそろえることで、ワンランク上の各機器がつながって便利に利用できるという提案をしている。現状ではスマートフォン自体を売り込むのではなく、つながると便利で楽しいということをコンシューマー向けに売り込んでいるのだ。

 一方GoogleのOSやサービスが利用できないため、分散式オペレーティングシステムHarmonyOSをプッシュしている。

●スマホ向け「HarmonyOS 2.0」(β版)が登場

 これまでHarmonyOS搭載機種はテレビやWebカメラなどで搭載機種が出ていたが、4月末に同社の新機種でインストールできるスマートフォン向けHarmonyOS 2.0のβバージョンをリリースした。

 6月にもHarmonyOSに関する何らかの発表があると予告していて、とにかくコンシューマーで忘れられないように、対応のスマート製品の発表をコンスタントに行っている。

 正式なローンチについては今年の10月を目標としているが、GoogleのGMS(Google Mobile Services)に含まれる各種サービスを代替する地図・メール・動画・検索など各種サービスについての進捗に関するニュースはあまり聞かない。まずはGMSがなくてもなんとかなる中国でのリリースを優先するのではと予想する。

 スマートフォン向けHarmonyOS 2.0だが、見た目は同社のカスタムROMで独自UIの「EMUI」そのままで、Android用のアプリもそのまま動くと報告されている。ユーザーからすればスマートフォン単体で利用する限りは違いが気にならないレベルだろう。

 もともとのアナウンスによればAndroid+EMUIよりも、メモリ使用量は少なく軽快に動作するというが、インストールしたユーザーのレポートによれば、βバージョンと動作の軽快さはほとんど変わらないという。

 HarmonyOSはやはり対応機器同士で画面をシームレスにつながることがポイントだ。同社のスマートフォンやノート`Cやテレビで、同じコンテンツを同期できるようにもなる。

 例えばビデオチャット時にHarmonyOS搭載のWebカメラからの映像をリアルタイムで出す、スマートフォンの画面をノートPCに映す、スマートテレビでビデオチャットしながらスマートフォンの画面をリアルタイムに送る……といったことができ、さらにさまざまな家電を直感的に接続できるようになる。

 発売済みのHarmonyOS対応ハイエンドスマホや、スマートディスプレイをハブに、Xiaomiよりもさらに直感的で分かりやすいスマート製品を続々とリリースし、Huaweiだからこそできる体験を求めるユーザーを当面は囲い込んでいく、というわけだ。新しいスマートフォンのリリースはもうしばらくは出ないと予想している。

(山谷剛史)