「フリマアプリでは日本一になれなかった悔しさが残っているので、今回はビジネスとしてスケールさせて大きなプロダクトにしていきたい」――家計簿アプリ「B/43」(ビーヨンサン)を運営するスマートバンク(東京都渋谷区)の堀井翔太社長は7月15日、アプリリリース後、初めて開催された報道陣向けの発表会で事業への意気込みをこう語った。

 ビーヨンサンは1月に公開したiOS向けの家計簿アプリ。日本初のフリマアプリ「FRIL」(フリル)の創業者として知られる堀井社長が設立した、社員11人のベンチャー企業「スマートバンク」が運営する。

 同アプリが狙うのは、生活費の支出を現金で管理する層だ。「生活費が限られる中、無駄な支出は気にするが、銀行口座とのひも付けには抵抗がある、という課題を持つユーザー層がある」と堀井社長はにらむ。

 ビーヨンサンは、VISAブランドの専用プリペイドカードと家計簿アプリを組み合わせたサービス。プリペイドカードに生活費をチャージし、加盟店の店舗で決済するとアプリに通知し、残高を表示する仕組み。プリペイド形式にすることで銀行口座とは切り離しつつ、あらかじめ用意した生活費分からカード払いできること、払った分を即デジタル管理できるのがメリットだ。

 利用用途別に生活費を分割して管理する機能を備える他、同棲中のカップルや夫婦向けの「ペア口座」機能も新たに実装。同機能では支出状況をリアルタイムで相互に確認でき、プリペイドカードも無料で2枚発行できる。

 サービスを公開してから約半年の現在、主な利用者層は10代から20代。63%が1万円以上チャージし、生活費の管理アプリとして利用しているという。

 アプリ名の43には「予算」、Bには「Budget」(生活費)という意味が込められており、将来的には資産運用用途のサービスも展開予定のため「資産」と「Balance」(バランス)の意味もあるという。

●日本初のフリマアプリ創業者が再出発に挑むワケ

 2012年に堀井社長が創業したフリルは2016年に楽天に買収され、その後、同社の「ラクマ」と統合された。堀井社長も18年まで楽天に在籍したが、再度起業するため、退職した。

 起業を決断したのは、今やフリマアプリの代表格となったメルカリに先んじてフリマ市場に参入しながらも日本一になれなかった悔しさだけでなく、フリマアプリを取り巻く事業環境が変化していたことも理由だ。

 退社後に自身が手掛けたフリマアプリの現状を見つめ直した結果、「フリマアプリの本質は『モノをお金に変換する』というフィンテックだという結論に至った」という堀井社長。例えば、競合のPayPayフリマはPayPayに、メルカリはメルペイにそれぞれ売上金をチャージする形で、決済手段として普及。日本でキャッシュレス決済が普及している一因になっている。そんな時、堀井社長に「キャッシュレス決済が普及しきった社会はどんなものだろうか」という疑問が浮かんだ。

 そこで、日本と同じ島国である英国に注目。人口規模やGDPなどが近く、12年のロンドン五輪を契機に、政府主導でクレジットカードやApple Payなどによるキャッシュレス決済が急速に普及していたからだ。渡英し、約1カ月間、現地調査を重ねたところ、英国では、バスや電車などの公共交通機関はもちろん、スーパーや屋台、路上パフォーマーへのチップ、ホームレス支援など慈善事業に至るまで、あらゆるものがキャッシュレス決済できたという。つまり、カードかスマートフォンさえあれば、生活にほぼ困らない社会だったというわけだ。

 現地調査では意外なニーズも判明した。英国ではキャッシュレス化の進展とともに、デジタルネイティブ世代を中心に家計簿アプリのニーズが上がっていたのだ。生活費のキャッシュレス決済に給与直結の口座をひも付けてしまうと、無駄遣いしてしまう恐れもある。そのため、支出項目に応じて予算を立て、計画的に使いたいニーズがあったという。英国では、HSBCなどのメガバンクが提供するアプリのUIがよくないこともあり、新興企業による生活費管理アプリがシェアを伸ばしていた。

 日本では現金を封筒に入れるなどアナログな方式で支出を管理する層が一定数存在する。しかし「キャッシュレス化が進み、貨幣の流通が減ると、従来のような形で管理するのは難しくなるのではないか」。そう考えた堀井社長は日本で家計簿アプリの事業を立ち上げることを決めた。

●「時間はあるけどお金はない」 フリルの経験で見えたユーザーの特徴

 事業化を決め、メインターゲットの設定で生きたのが、約7年間のフリマアプリの運営経験だ。堀井社長によると、フリルユーザーの特徴が「時間はあるけど、お金はない」という点だったという。具体的には、都内在住(主に郊外)の20代で、手取りが月20万円程度の層が多かったという。

 独自調査の結果、支出にクレジットカードを使っているものの、後払いのため、残金の把握が難しいという意見や、銀行口座との連携ができないといった声があった。

 当時、家計簿アプリは20種類ほどあったが、多くは銀行口座との連携が前提で、各サービスのUIも日々のキャッシュフローではなく、資産のポートフォリオを見るような設計のものだったという。

 独自調査では、銀行とカード決済のアプリを往復して閲覧し、入出金をiPhoneのメモ帳に転記してマイナスにならないよう管理している人や、無印良品のパスポートケースに用途別に現金を分けて支出を管理している人の存在も判明した。

 堀井社長は「銀行口座に直結する形の家計簿アプリは連携範囲が広すぎて、支出をアナログ的に管理してきた人たちの課題解決になっていない」と考え、ターゲットを設定した。

●当面のビジネスモデルは「カード発行手数料」

 現在はVISAからのカード発行手数料がメインの収入源。当面は発行枚数=ユーザー数の純増がマネタイズに直結する。今後は、生活費の使い道を増やして管理する機能の有料化を検討している。個人の生活費管理だけでなく、家族や仕事仲間の家計管理にも横展開し、将来的には資産運用アプリとしての展開も視野に入れているという。

 現在はiOSのみの展開だが、Android版アプリも開発中だという。堀井社長は「年内のリリースを目指す」としている。