ソーシャルVRサービス「VRChat」を使ったVRイベントはいろいろあるが、現時点で最高峰の作り込みを体験できると言っても過言ではないのが「バーチャルマーケット」だ。

 バーチャルマーケットは3Dモデルなどの売買や音楽ライブなどを行えるVRイベント。8月28日午後11時まで第6弾の「バーチャルマーケット6」が開催している。筆者がVRChat内の友人と参加したところ「タダでこんなに楽しくていいの?」と思えるほど、凝った装飾で目に入る情報量が多く“エモい”空間だった。

 バーチャルマーケットの初開催は2018年8月。20年4月に開催した第4弾は、出展ブースの総数が1104店舗と、「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」としてギネス世界記録に認定された。21年1月の第5弾では合計来場者が100万人を超えるなど、回を重ねるごとに盛り上がりが増している。

●バーチャル秋葉原駅から山手線に乗って仮想旅行へ

 今回のバーチャルマーケット6も、VRイベントの中でも群を抜いて大きな規模だ。特に企業ブースワールド「World Festi-VR Core」の作り込みがすごかった。

 JR東日本の企業ブース「バーチャル秋葉原駅」は、広いスペースを使ったブースで秋葉原UDX側から見たJR秋葉原駅が眼前に広がる。駅前にはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場するエヴァンゲリオン各機と第4の使徒が襲来していた。

 本来ならビルが建っている場所が遊歩道になっており、現実世界では目にできない風景が楽しめた。街をデフォルメして再現できるバーチャル空間の利点を生かしている。

 自動券売機に触れるとバーチャルな「Suica」カードを受け取ることができ、Suicaを持ったまま改札機をタッチ&ゴーで駅構内に入る。Suicaを使えば、ホーム上にある自動販売機でレッドブルを購入することもできる。

 見慣れた秋葉原駅で、改札機のピピッという音や構内に響き渡るアナウンスは現実そのもの。しかし駅構内のコンビニ「NewDays」にはゆるキャラ「ちいたん☆」が倒れ、お笑いコンビ「ジョイマン」の高木晋哉さんのアバターが飛び跳ねているなど、カオスな空間だ。

 2番線ホームに到着した山手線に乗れば、企業ブースやワールド内の街並みを車窓から眺めることができ、旅行をしている感覚になる。自宅にいながら、移動時間ゼロで友人と旅行できる体験は珍しい。

●VR空間をツーリング、視界も感覚も本物そっくり

 他にも目を引くブースがある。ヤマハ発動機が展示していたのが、バーチャル空間に再現したバイク「YZF-R1」「MOTOROiD」だ。これらは実際に操作することができる。

 企業ブースワールドは複数のフィールドに分かれているが、それらの中をヤマハのバイクに乗ったまま移動できる。バイクを“無料レンタル”できる10分間で、バーチャル空間をツーリングできるというわけだ。バイクに乗った視点で変化する風景を眺めながらの移動は、リアリティーを強く感じた。

 操作方法はこうだ。バイクのハンドルを握れる位置まで前傾姿勢を取り、右コントローラーのトリガーを引くとアクセルを入れられる。低い視点からの景色はスーパースポーツバイクに乗っている視界そのもので、膝にタンクの硬さが伝わってくるような感覚が湧き上がる。VRが本物そっくりの感触を呼び起こし、脳がだまされていく感じだ。

 慣れていないと反対車線や建物に飛び込みそうになるほど、繊細な操作が必要だった。道路上に事故車と思われるバイクが放置されていることもあった。しかしここはバーチャル空間。バイクは放置しても一定時間たてば自動で元の位置に戻るため、乗り捨てしても問題ない。

●IT大手参入のメタバースを手軽に体験

 2021年はメタバース(多人数が参加できる仮想空間)の話題が多い。FacebookはOculus Quest2を使ってバーチャル会議できる「Horizon Workrooms」(β版)を8月に発表、NVIDIAも4月に開催したオンライン基調講演の一部は同社のメタバース「Omniverse」から配信していたと発表するなど、業界の熱い視線が集まっている。

 バーチャルマーケット6は、一定以上のスペックのPCがあれば誰でも無料でメタバースの密度感を味わえるイベントだ(非VRモードならVR機器がなくても来場可能)。PCとVRヘッドセットを持っている人は、バーチャルマーケット6のVR世界を楽しんでみてほしい。