観客が密集し、マスクをしていない人も声を上げて盛り上がる。コロナ禍の日本とは思えない光景に動画を見た多くの人が目を疑った──愛知県常滑市で8月29日に開催された野外音楽フェス「NAMIMONOGATARI 2021」の状況が明らかになり、その影響は自治体や出演者にも及んでいる。

 フェスの状況が明らかになった30日、自治体の首長が主催者に抗議した。地元・常滑市の伊藤たつや市長は「国や県の要請、ガイドラインも全く守られていない、極めて悪質なイベント」と断じ「二度と市の施設であるりんくうビーチを使用させない」とした。NAMIMONOGATARIは2016年から19年まで常滑市のりんくうビーチで開催していた。

 今回イベントで使用した中部国際空港島の「AICHI SKY EXPO」を管理する愛知県の大村秀章知事は「今後スペースはお貸しできません。市町村にもやめてもらいます」と怒りを露わに。今後、NAMIMONOGATARIは愛知県内の公共施設から事実上、閉め出されることになった。

 主催者のOffice keefは30日、公式サイトに「お詫びと経緯のご説明」を掲載した。これによると愛知県に緊急事態宣言が発令された27日は全ての準備が終わったイベント前日で、中止や延期は「物理的にできなかった」という。

 会場では地面に1m間隔のソーシャルディスタンスシールを貼り、公演中もメイン画面やナレーションで観客に注意喚起したが、あまり効果はなかった。「大規模な音楽イベントの感染予防対策に対する認識の甘さ」が原因としている。

 8000人を超える観客が集まったのは、常滑市がまん延防止等重点措置地域に指定された20日より前にチケットを販売していたため(適用外)で、酒類の販売については自粛を求められたもののキャンセルできない分について県の担当者に事前に報告して販売したと説明した。しかし愛知県の大村知事は31日、「自分達(主催者)に都合の良いように事実と異なる記述がなされている」と指摘し、主催者に厳重に抗議する考えを示した。

●誤った情報が拡散して公演を延期

 影響は出演アーティストにも及んだ。ラッパーのZeebra(ジブラ)さんやAK-69さんは自身のTwitterアカウントでNAMIMONOGATARIの出演や当時の対応について謝罪。また8人組HIPHOPグループ「BAD HOP」(バッド・ホップ)は、横浜アリーナで9月1日と2日に行う予定だったライブを延期した。

 BAD HOPの横浜公演は神奈川県のガイドラインに沿った形で行う予定だった。しかしNAMIMONOGATARI 2021当日に会場の様子をSNSで公開すると批判の声が上がり、さらに9月公演の告知を加えたことで誤解を招いた。Twitterでは「BAD HOPはNAMIMONOGATARIの主催者で、9月にも横浜で同じようなフェスを行う」といった虚偽の情報が拡散していた。

 BAD HOPは「出演者の皆さんや来て下さるお客さんが少しでも後ろめたい気持ちで横浜アリーナに来場するような状況で開催するのは不本意」として公演の延期を決めた。公演はAbema TVでライブ配信する予定だった。