米Appleが9月14日(米国時間)に開催したスペシャルイベントで発表された、「iPhone 13」シリーズ。今回は先代のiPhone 12シリーズを踏襲し「iPhone 13/mini/Pro/Pro Max」の4機種が登場した。従来モデルと比べながら、新機能や注目ポイントを紹介する。

●ほぼ同じ? iPhone 13/miniとiPhone 12/miniの違いは

 6.1インチの有機ELディスプレイを搭載し、前作の「iPhone 11」以上にスタンダードモデルとしてのポジションを獲得した「iPhone 12」だが、iPhone 13では上位モデルの機能を取り入れるなど、スペックが強化された。ブラック、ホワイト、グリーン、ブルー、(PRODUCT)REDの5色だったカラーは、ピンク、ブルー、ミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDに置き換わった。

カメラハードは進化も大きな変化はなし 13シリーズ全体で動画撮影強化

 カメラは、広角1200万画素、超広角1200万画素のデュアルカメラ仕様と、大きなスペック差は見られないが、広角カメラはピクセルサイズが大きくなり、これまでに比べ47%多く光を取り込めるようになった他、「iPhone 12 Pro Max」で初めて採用されたセンサーシフト式の手ブレ補正がiPhone 13にも搭載された。

 映画のような動画撮影を実現する「シネマティックモード」も搭載。被写体を捕捉し続けることで正確なオートフォーカスが可能な他、被写体が顔を背けると、その先にある被写体にピントを移動する。内部では深度マップを作成しており、単焦点レンズで撮影したような被写体の背景ボケを動画に加えられる。撮影後にピントの位置やボケの量を調整することも可能だ。ただし記録できるのはフルHD/30fpsの動画に限定される。

 カメラ以外では、最新SoCの「A15 Bionic」を搭載。バッテリーもiPhone 12より2.5時間長持ちになった。ディスプレイはサイズ、解像度ともに同じだが、輝度が28%向上。HDRコンテンツの再生では1200ニトまでアップするという。ストレージサイズも64GBを撤廃。512GBを新たに追加し、128GB、256GB、512GBの3種類を用意する。

 5.4インチのiPhone 13 miniも同じ傾向で、縦横のサイズやデザインは12 miniを踏襲する。カメラ性能はiPhone 13と同等のため、13 miniでもピクセルピッチが広がったイメージセンサーに、センサーシフト式の手ブレ補正を搭載。シネマティックモードも利用できる。こちらもバッテリーを強化した。

コロナ禍でもFace ID続投

 順当にスペックアップしているiPhone 13/miniだが、12/miniと変わらない部分もある。コロナ禍で「Touch ID」の復活を願う声は多いが、生体認証は引き続き「Face ID」を採用。iPhone 12 Pro/Pro Maxで採用された測距センサー「LiDAR」もiPhone 13には降りてこなかった。

 どちらも無接点充電の「MagSafe」に対応し、インタフェースはLightning。デザインも12シリーズを踏襲して大きく変わらないため、シネマティックモードに関心がない場合は積極的にiPhone 12から乗り換える要素が薄くなる。また、iPhone 13は11g増の173g、iPhone 13 miniは7g増の140gと若干重く、両モデルとも0.25mm厚みが増してしまっている。

 コロナ禍に入り深刻さを増しているのが半導体不足。影響の大きさから値上げが予想されていたiPhone 13シリーズだが、意外にもiPhone 13/miniの価格はほぼ横ばいとなっている。

●Proモデルは本格的な動画撮影用途を強調 可変リフレッシュレート「ProMotion」にも対応

 今度はiPhone 13 Pro/Pro Maxと、前モデルの12 Pro/Pro Maxとの違いを見てみる。13 Pro/Pro Maxも前モデルのデザインを踏襲した順当なアップデートで、カメラと動画性能の強化が中心となる。

カメラシステムが進化 ProとPro Maxで共通仕様に

 カメラは引き続き超広角カメラ、広角カメラ、望遠カメラの3眼仕様だが、全てのカメラに手が加えられている。超広角カメラは最短撮影距離2cmのマクロ撮影に対応。レンズも前モデルのF2.4からF1.8へと明るくなり、センサーも刷新したことで92%多くの光を取り込めるようになったという。

 広角カメラは「iPhone最大のイメージセンサー」をアピール。レンズはF1.6からF1.5と若干明るくなり、2.2倍多くの光が捉えられるようになったという。センサーシフト式の手ブレ補正にも新たに対応する。望遠カメラは、13 Pro/Pro Maxともに光学3倍だ。

 iPhone 12シリーズではPro Maxのみ、広角カメラに大型センサーとセンサーシフト式手ブレ補正、2.5倍の望遠レンズなどProとスペック差があったが、13 Pro/Pro Maxでは同じカメラシステムを搭載。どちらも前モデルから性能向上しているのだが、スペック差があった分、12 Proからの方が向上幅が大きいといえる。

「Dolby Vision」や「ProRes」サポートなど動画撮影周りが充実

 動画性能も向上している。12 Pro/Pro Maxと同様、4K60fpsでのDolby Vision撮影に対応するが、新たに動画フォーマット「ProRes」(最大4K30fps、128GBモデルはフルHDのみ)での動画記録に対応する。映像制作分野だとポストプロダクション用途で主に使われているものだ。MP4などの動画フォーマットと比べて圧縮率が低いため、カラーグレーディングなど高いレタッチ耐性を持つ。13/miniと同様にシネマティックモードもサポートする。

120Hz描写の「ProMotion」 可変リフレッシュレートでバッテリー節約も

 13 Pro/Pro Maxで新たに搭載されたのが「ProMotion」だ。ディスプレイのリフレッシュレート(1秒間に画面を書き換える回数)を60Hzから120Hzに引き上げるもので、iPad Proでは2017年モデルから搭載されている。今回、リフレッシュレートを10Hzから120Hzの間で可変調整する機能を追加しており、書き換える必要がないときはリフレッシュレートを落とし、バッテリーを節約する。

 iPhone 13/miniと比べると、iPhone 13 Pro/Pro Maxは前モデルよりも多くのアップデートがある。iPhone 12 Pro/Pro Maxがもともと動画撮影に注力していたモデルなだけに、今回のアップデートは動画撮影を重視するユーザーにとっては目が離せないものばかり。LiDARも内蔵しているため、フォトグラメトリの撮影などAR/VR分野での活用もできる。ただし、13 Proは前モデルより16g増の203g、13 Pro Maxは12g増の238gと若干重く、0.25mm厚くなっている。

 価格は、前モデルから5000円程度の値上げとなっている。今回からストレージ容量のラインアップに新たに1TBが追加されたが、Proの1TBモデルは18万2800円、Pro Maxの1TBモデルに至っては19万4800円と、過去最も高価なiPhoneになりそうだ。

●まとめ 全体的に動画撮影強化 意外性は少ない

 iPhone 13シリーズも、iPhone 12シリーズで移行したスタンダードモデル2機種とプロ向けモデル2機種の合計4機種体制を踏襲した。基本的にはiPhone 13/miniで大半のニーズをカバーし、より写真撮影や動画撮影を好むユーザーにiPhone 13 Pro/Pro Maxを提供する。

 しかし、今回のアップデートは全体的に動画撮影機能の強化が中心となっており、センサーシフト式手ブレ補正、動画のピント送りやボケ味を追加するシネマティックモードはiPhone 13/miniにも搭載されている。動画撮影機能に関心がありつつもコストを抑えたいユーザーに向けたモデルといえそうだ。

 ただし、本体デザインやFace ID、Lightning端子を引き続き採用するなど、動画以外のアップデート要素が少ないのも事実だ。おそらく、2世代以上前のモデルやAndroidスマートフォンからの乗り換えニーズが中心となるだろう。

 一方で、13 Pro/Pro Maxは、マクロレンズの採用、ProRes記録、シネマティックモード、大型センサー、センサーシフト式手ブレ補正、3倍に伸びた光学ズームなど、iPhoneを動画機材として使うユーザーからすると魅力的なアップデートが多い。スペック差があった12 Pro/Pro Maxと異なり、13 Proでも13 Pro Maxと同じ性能のため、大画面が必要なケース以外は、サイズ・コスト面で有利な13 Proを選択できる。

 意外性のあるアップデートは少なかったものの、「コンパクトでハイスペックのスマートフォンが欲しい」ユーザー向けにはiPhone 13 mini。「写真と動画がきれいに撮影できる大画面のスマートフォン」ならiPhone 13。「ProResでの撮影や望遠ズームなど、高いカメラスペックが必要」であればiPhone 13 Pro。より大画面が必要ならiPhone 13 Pro Maxというすみ分けになるだろう。