iPhoneケース専門家、ポッドキャスト・ラジオのパーソナリティーである弓月ひろみさんがiPhone 13シリーズを体験した。今回は動画機能を中心に、これまでのモデルとどう違うのか、レポートしてもらった。

 今回発売された新機種は、「iPhone 13」「iPhone 13 mini」「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」の4モデル。ストレージ容量は128GB・256GB・512GBで、iPhone 13 Proには大容量の1TBモデルも用意されている。

 全機種でセンサーサイズが大きくなり、広角カメラにセンターシフト光学式手ブレ補正が搭載された。この手ブレ補正は、2020年のフラグシップモデルである「iPhone 12 Pro Max」にしか搭載されていなかったので、今回のiPhone 13モデルはお得感が高い。

 また、ProシリーズのiPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Maxは、どちらも滑らかで美しいディスプレイ(リフレッシュレートが最大120HzのProMotionを採用したSuper Retina XDRディスプレイ)を搭載しているので、タップした指に動きが追従してくる感覚が味わえる。

 また、全てに最新SoCであるA15 Bionicチップを搭載。ただし、13 Proと13 Pro MaxのGPUは5コア。13と13 miniのGPUは4コアで1つ少ない。また、iPhone 13 Proと13 Pro Maxには、マクロ撮影機能と、望遠レンズを搭載している。望遠は光学3倍ズームでの撮影が可能で、どのレンズも静止画だけでなく、動画にも対応している。

 iPhone 13シリーズの目玉は、なんといっても動画だろう。今回、「シネマティックモード」という、誰でも簡単に“映画のような動画”を撮影できるオプションが全機種に搭載された。簡単にいえば、ポートレート撮影機能の動画版だ。撮影時に被写体以外の背景をぼかし、狙ったところにフォーカスを合わせられるから、映像がドラマティックな仕上がりになる。

 筆者も触ってすぐ、虜になった。これはiPhone史上最も楽しい映像体験といえるだろう。筆者は普段から動画をたくさん撮影しているが、日常生活の撮影で、こんなにワクワクした体験は久しぶりだ。

 シネマティックモードでは、iPhoneが自動的に撮影者が狙いたいポイントを判別し、被写界深度を切り替える。発表会でも映像が流れていたが、そんなにスムーズに行くのだろうか……と実際に試すことにした。

 こちらは、シネマティックモードをオートで撮影した動画のスクリーンショットだ。最初はiPhoneの手前にいる筆者にピントがあっているのだが、振り返ると、奥にいる人物にフォーカスが自動的に切り替わる。これは、iPhoneが顔認識をしているからだ。

 iPhoneのフレームの外からフレームインしてくるような撮影も試したが、超広角カメラで人物を捉えているのだろう、ディスプレイに人物が入ってくる直前からフォーカスの準備をしている様子が見けられた。

 カフェで撮影した際は、ケーキとアイスティーの前にiPhoneを手持ちで掲げ、同じ画角のままフォーカスだけを移動させてみた。完成した動画はまるでテレビのグルメ番組のような雰囲気でうれしくなる。

 シネマティックモードは、人物だとほぼオートで判別できるようだが、被写体がモノの場合や奥行きが薄いと、フォーカスが迷いがちになる。そんなときは、手動でピントを合わせよう。片手で構え、常に指をディスプレイの近くに置き、狙った部分に細かく合わせれば狙い通りの絵が撮れる。シネマティックモードは通行人の姿も自然にボケるので、街ゆく人の肖像権に配慮する意味でも、良さそうだ。

 iPhone 13 Proには、先述の通り望遠レンズが付いている。これがシネマティック撮影にも、大いに活躍する。

 例えば左の写真は、やや離れた場所にいる被写体を、望遠レンズ+シネマティックモードで撮影中の画面。右はiPhone 13 で撮影したもの。望遠レンズがない分、ダイナミックな表現ができていない。

 シネマティック撮影に慣れると、もっとこんなふうに撮影したい、こんな絵も取ってみたい……と欲が出てくるのは必至。カメラ好き・ガジェット好きなら、13 Pro、13 Pro Maxを選ぶのが賢明だろう。

 シネマティックモードはインカメラにも対応している。InstagrammerやYouTuberなら買って損はない。

 映像を日常的に撮影・発表していない人でも、思い出の残し方が変わってくるはずだ。ホームビデオ感覚で撮影しても、部屋の背景がきれいにボケるなど、いわゆる「エモい」動画が撮れるようになる。家族や、ペット、友達、恋人……思い出を記録するのに最適なビデオカメラだろう。

 シネマティックモードで撮影した動画は、撮影後、被写界深度を自由に変更できる。撮影時に失敗してしまっても、後から編集すれば良い。

 ここまでアクティブに撮影・編集が可能で、かつ、仕上がりも美しいとなると、このモードが4Kに対応していないのが悔やまれる。現時点では1080Pの30fpsなので、ここは今後のバージョンアップに期待したいところだ。

 なお、iPhone 13シリーズ同士であっても、シネマティックで撮影した動画をAirDropで移動させると、HDRのMP4に書き出されるため、後から編集ができなくなる。2台使いをしている人は注意が必要だ。編集可能な状態でAirDropしたい場合は、共有画面から「オプション」をタップし「すべての写真データ」をオンにすると良い。

 また、iOS 15から動画撮影時にHDRをオン・オフできなくなった。iPhoneで撮影した動画は、自動的にHDR処理が施される。そのためFinal Cut ProなどMac・PC側のソフトで編集する際は一手間必要だ。

 最近ではYouTubeもHDR動画に対応しているため、細かい編集をするのでなければ気にすることはなさそうだが、もしiPhone単体でHDRなしの動画に変換したい場合は、iMovieを利用すると早い。いったん取り込んでから、書き出し時にオプションでHDRをオフにする。

 iPhone 13シリーズは、センサーサイズが大きくなったことで、ナイトモードやスローモーションも一段と美しくなった。こちらはナイトモード撮影の一例だ。目で見る限り「暗い夜道」という感じで、多少のノイズは否めないものの、十分撮影できている。

 さらにスローモーションも、光の表現やテクスチャーなどがより豊かになった。これらの映像をシネマティックモードと組み合わせれば、ミュージシャンやアーティストのPVのような作品も手軽に撮れてしまうだろう。

 続いて、マクロ機能について見ていこう。

 iPhone 13 Proのマクロ機能を使う場合、特別なことは何もしなくていい。カメラを構えて被写体にぐっと近づけば、自動的にレンズが切り替わる。使うのは超広角レンズなので、撮影スタート時は1倍を選んでおくと、切り替わる瞬間が分かる。被写体には最短2センチまで近づける。

 今回はケーキやフルーツなど食べ物を撮影したが、モノによっては手触れてしまわないか気になるほどだった。マクロ撮影は、テクスチャーや植物、虫などの撮影に使われるイメージがあるが、筆者はマクロの動画撮影で、食べ物を撮影するのが気に入った。肉・パン・フルーツなどは、マクロだとシズル感が出せる。グルメブロガーなど、フード系の仕事についている人にもオススメできる。

 なお、マクロ機能は通常動画のみで、シネマティック撮影には対応していないが、シネマティックモードでもかなり近距離まで寄ることはできるので、使い分けていくと良いだろう。

 今回2日ほどかけて、各機能を使いたくさん撮影したが、シネマティック、スローモーション、HDR動画など、どのシーンでもフォーカスの移動にもたつきを感じることはなく、撮影後の処理も非常に速かった。また撮影した動画を加工するため、「iMovie」を使ったが、1.5GBほどある撮影データも、楽に書き出すことができた。

 筆者は海外や展示会取材でiPhoneで動画取材をし、そのままiPhoneで編集してYouTubeにアップロードする仕事スタイルを2014年から続けている。だからこそ、撮影時や編集時の処理スピードには敏感な方だと自負しているが、iPhone 13 Proで撮影した動画をiMovieで編集し書き出したところ、あっという間に終わってしまった。GPUによるものなのか、その他の処理なのか不明だが、動画の処理速度は確実に速くなっていることが実感できた。

 シネマティックモードがどの機種でも撮影できるとなると、悩んでしまうのが本体サイズ。筆者は写真と動画の撮影を追求したいので、iPhone 13 Proを購入したが、Pro Maxにするかどうかは直前までかなり悩んだ。

 というのも、iPhone 12 Pro Maxを1年間愛用してきて、そのサイズ感の良さにも気づいていたからだ。ディスプレイが大きければ、YouTubeやNetflixなどのエンタメコンテンツも楽しめる。

 同時期に発表されたiPad miniをPro Maxの代用品にするというアイデアもあるのだが、ProMotion搭載のスーパーRetina XDRディスプレイは文句なしに美しく、現在発表されているApple製品の中でもハイグレードなタイプなので、iPad miniだと、新モデルとはいえ、やや見劣りを感じる人もいるかもしれない。

 Proのような充実したレンズは要らないけれど、シネマティックモードを気軽に撮影したいなら、オススメはiPhone 13 miniだ。5.4インチはとにかく軽く、ホールドしやすい。子どもやペットを抱き上げていても、安定して撮影できる。特に新色も美しいので、触っているうちに筆者も欲しくなってしまった。

 どんなケースを装着するかによってもiPhoneの使用感は変わってくると思うので、その辺も含めて吟味したい。なお私はiPhoneケース専門家としても活動しているが、iPhoneのPro Maxシリーズは、残念ながらそのサイズを取り扱っているメーカーが少ない。私が今回6.1インチに変更するのもそれが大きな理由の1つである。

 今回のiPhone 13シリーズは、総じて動画が素晴らしい。もし、たくさんの人がこのiPhoneを手にしたら、YouTubeやTikTokに投稿される映像のデフォルト値が変わってしまいそうだ。

 発売後には、“シネマティック”が当たり前になっていくのでは、と感じられるほど。これを一度体験してしまうと、元には戻れなくなるかもしれない。プロの作る映像作品も楽しみだが、今後iPhone 13 シリーズを手にした多くの人の、よりクリエイティブな作品を見るのも、とても楽しみだ。