プライバシー保護の観点からサードパーティーCookieの規制が進む中、民放の公式テレビ配信サービス「TVer」は自社で取得するファーストパーティーデータをリッチ化して広告主のニーズに応える。4月27日に開催した「TVer Biz Conference2022」で明らかにした。

 TVerではアプリ導入時に利用者の性別や生年月日の他、「美容」「ビジネス・経済」「ゲーム」「自動車」など17項目の中から興味のあるジャンルを選択させて動画広告の配信に利用している。例えば化粧品メーカーの広告がある時は「美容」にチェックを入れた端末を優先する。同社はこれをアフィニティデータ(Affinity:親和性)と呼ぶ。

 「広告業界ではサードパーティーCookieやIDFA(Appleが端末にランダムに割り当てるID)取得のオプトイン化など、トラッキング情報に関する規制強化が課題になっている。しかしTVerは潤沢なファーストパーティーデータを活用できるのが強みの1つ」という。

 例えばタレントの新垣結衣さんを起用したKOSE「エスプリーク」の例では、広告を見ていない人を100%とするブランド認知効果(ブランドリフト率)が、「美容」に絞って配信したところ783%まで上がったという。平均でも228%だ。

 動画広告をスキップできない仕様にしたことによる95%という視聴完了率の高さも強み。ゲストとして登壇したKOSEの宣伝担当、中村豪さんは「化粧品は(消費者に)イメージを伝えるために動画広告が多く視聴完了率は重視している。今後はAffinityデータがサードパーティーCookieの代替になるか検証したい」とした。

 一方で「美容」という「ざっくりとした分類」には課題もあるという。「化粧品に興味がある人といっても、ドラッグストアで購入する人もいれば専門店に行く人もいる。程度の差も分けられるといい」(中村さん)。

 TVerは22年度の開発目標として、1)アンケートで取得する17分野より詳細に利用者を分類できる「Affinity拡張ターゲティング」、2)動画広告の横や下に同じ広告主の静止画やテキストを表示する「コンパニオン広告」の2つを挙げた。TVerで広告プラットフォームの開発を担当する矢部怜史さんは、拡張ターゲティングについて「メタデータと機械学習による推定で、例えば未就学児がいる家庭なのか? など細かい分類が行える」と説明している。

 TVerが「TVer広告」をうたい営業活動を本格化したのは2021年4月。この1年間で月間動画再生数は2億5000万回以上となり、出稿した広告主は533社に上る。売上の金額は明かしていないものの「昨年4月を100%とすると今年3月は1945%」と成長ぶりをアピールするTVer。放送では文字通り「送りっ放し」だったテレビ広告にネットで付加価値を与えた。