日本でも自動運転バスやタクシーの運用が少しずつ始まり、ホンダは大手タクシー会社と連携し、GMらと共同開発する自動運転車両を使用したサービスを2020年代の半ばを目処に開始することを発表した。自動運転の運用を検証する実証実験は、全国各地で数年前からかなりの数が行われており、既存の車両を自動運転に置き換えることをそれほど難しくないところまで来ているように見える。

 だが本当の意味で自動運転が当たり前になるには、一緒に道路を走る他のモビリティを含めて安全性を確保する新たな交通システムの構築やルールづくりが必要になる。そうした未来に向けた第一歩となるような実証実験が、先日大阪の舞洲で行われた。

 「レベル4を見据えた自動運転車両を核とした次世代交通システムの実証実験」は、2025年に開催される大阪・関西万博(以下、万博)で活用予定しているさまざまなタイプの次世代モビリティを一元管理するための課題を抽出することを目的に実施された。大阪市の人工島の1つである舞洲に約5000平方メートルの「舞洲実証実験会場」に、1周約400メートルのテストコースを設け、その中で7車種21台のモビリティを同時にスムーズかつ安全に運用する方法を検証するのが狙いだ。

 実証実験を行う「チーム大阪」は、大阪市交通局の民営化組織であるOsaka Metroをはじめ、あいおいニッセイ同和損害保険、NTTドコモ、大林組、関西電力、ダイヘン、凸版印刷、日本信号、パナソニック、BOLDLYの10社で結成されている。参加企業の幅広さからも今回の実証実験の目的が、単なる自動運転の性能を確認することではないのが分かる。

●多様な自動運転車を混在させて運用

 実際、使用する自動運転バス「NAVYA ARMA」はレベル4相当の性能を持ち、すでに国内外のあちこちで運用されている。レベル2の性能を持ち、ティアフォーが開発に参加するJPN TAXIの自動運転タクシーは、都内の公道を走行する実証実験でも使用されている。その他の低速自動走行モビリティ「iino」(イーノ)や、追従型パーソナルモビリティ「PiiMo」(ピーモ)も含め、いずれのモビリティも性能面ではほぼ実装可能なレベルにある。

 コースには信号のある交差点や横断歩道、側道が設けられ、実際の交通ルールーに従って運用する。運用に関するシステムは、ソフトバンクの社内ベンチャーでスマートモビリティサービス向けのシステムを開発するBOLDLYが担当し、モビリティの遠隔コントロールは、パナソニックのクロスエリアを活用している。会場に設けられた遠隔監視室では、運用に必要なスタッフの人数や配置などについても検証が行われる。

 実験場は閉鎖空間なので複数のモビリティが同時に走っていても、運用するのはそれほど難しくないように思える。しかし、モビリティによって自律走行したり、遠隔コントロールしたり、一般の利用者が運転するなど条件が異なるため、システムを連携して一括管理するにしても限界がある。

 例えば、ロボットが荷物を運ぶために走っている時にどう追い越せばいいか、シチュエーションによってどう安全を確保し、事故につながらないようにすることはできるが、安全を優先するあまり渋滞を引き起こしたり、バッテリー切れになるような事態に陥ってはいけない。サービスとしての移動効率や快適さも考える必要があり、だからこそ今回の実証実験が必要だと感じた。

●新しいサービスに対するアレルギーをどうなくすか

 さらに会場では、モビリティに加えて顔認証による乗車チェックやキッチンカーでの買い物、乗車中にタブレットを使って遠隔にいるスタッフがバーチャルキャラクターで案内するといったサービスも併せて検証している。

 これらは一般向けの体験乗車会でも公開された。新しいテクノロジーを社会実装するには利用者のアレルギーをなくすのは大事であり、大阪の人たちは新しいもの好きが多いといっても、自動運転に抵抗感を持つ人も少なくないはずなので、そうしたマイナス面を少しでも早く解消しようという動きはいいことだと思えた。

 そして一般の人たち以上に、将来自動運転サービスの現場を担うOsaka Metroの職員たちの抵抗感をなくそうとしていることも分かった。Osaka Metroはオンデマンドバスの運行や電動自転車・キックボードのレンタルなど、大阪市内で都市型MaaSの運用を進めており、さらに万博を通じて次世代モビリティの運用ノウハウを蓄積し、大阪市内での実装につなげようとしている。

 自動運転技術が当たり前になった時に、これまでの運転手の仕事をどう変えることになるのかを考えてもらうためにも、今回の実証実験では自動運転タクシーの運転をOsaka Metroの職員が担当している。

 実証実験のテーマには“レベル4を見据えた自動運転車両を核とした”とあるが、現在サンフランシスコで行われているような完全無人のタクシーサービスを実現することはOsaka Metroでは考えていない。むしろ、運転手が同乗することで実現できる新しいサービスを模索しようとしている。

 日本ではこのような技術の上に人がどう関わっていくかを考えることが、自動運転の実用化を進める上でとても重要なのかもしれない。

(野々下裕子)