Apple製品マニアの人は「そこは迷うところじゃないだろ!」と思うかもしれないが、13インチのMacBook Proというのは、Appleが「世界で2番目に売れているノートパソコン」というほど売れているのだ。

 当然のことながら、今度のM2 MacBook Proもそれなりに売れる目算があるからこそラインアップされている。どちらを選ぶべきか、この製品がなぜ最初のM2マシンとして投入されたのかも含めて、深堀りしたい。

●「安い方のMacBook Pro」こと、2ポートのMacBook Pro問題

 Appleの製品をずっと追いかけて取材している身としては「安い方のMacBook Pro」は常に不思議な存在だ。

 このライン、つまり「安い方のMacBook Pro」が登場したのは、2016年。Thunderboltポートを持つMacBook Pro 13インチが登場した時だった。

 この時点で、フルスペックの4ポートモデルと、スペックが制限された2ポートモデルに分かれたのだ。4ポートモデルはTouch Barを備えており、2ポートモデルは物理的なファンクションキーを持つ。

 しかし、最も重要なのは、4ポートモデルは冷却ファンを2つ持っておりTDPが28W、2ポートモデルは冷却ファンを1つしか持っておらず、TDPが15Wだったという点にある。

 TDPというのはクルマで言えば排気量のようなもので、この範囲のチップセットしか搭載できない。つまり、2ポートのMacBook Proとは「処理能力の低いMacBook Pro」なのだ。

 この2ポートモデルのラインは、ずっと冷却ファンを1つしか持っていない。この冷却ファンを1つしか持たない「安い方のMacBook Pro」の最新モデルがM2 MacBook Proなのだ。

 ちなみに、「高い方のMacBook Pro」である4ポートモデルのMacBook Pro 13インチは、昨年秋にM1 ProやM1 Maxを積むMacBook Pro 14に進化した。

●同じM2を積むが、冷却ファンがあるのがMacBook Pro

 従来のMacBook AirはTDP10WのCPUが使われていた。Apple SiliconになってからはTDPは公表されていないが、おそらく10Wを下回るのだと思われる。

 Intel CPU時代は、MacBook Airと「安い方のMacBook Pro」の違いは搭載されているCPUの違いだったりしたが、Apple Silicon時代になってからは同じMシリーズのチップを搭載し、冷却ファンが1つあるのが「安い方のMacBook Pro」、冷却ファンを持たないのがMacBook Airという構成になった。

 では、1つでも冷却ファンを持つMacBook Proの方が高性能なのかというと、そうとも言いきれない。

 そもそも、iPhoneのプロセッサであるAシリーズチップのコア数を増やして増強したチップセットであるMシリーズチップは、発熱が非常に少ないのがウリである。M1搭載機もM2搭載機も、MacBook Airが冷却ファンを持たないのは、Apple Siliconの発熱が少ないからだ。

 M2 MacBook Proの冷却ファンが効力を発揮してくるのは、相当長時間負荷をかけた場合。しかし、そもそもそんなに負荷のかかる処理をするなら、MacBook Proの14インチを買うべきだろう。というわけで、そのあたりの事情を理解している人にとっては、M2 MacBook Proは非常に微妙な存在というか、選ぶべきではないチョイスなのである。

●では、なぜ「安い方のMacBook Pro」が売れるのかという謎

 しかしながら冒頭にも書いたように、「安い方のMacBook Pro」は世界で2番目に売れているノートパソコンなのである。

 このあたり、われわれ分かってるつもりの人間にとっては、悩ましい部分である。

 1つには、われわれのようにスペックを調べまくって、買う人間ばかりではないという現実がある。そのあたりの情報を伝えきれていないメディアにも責任があるのかもしれない。

 近い値段で「Air」と「Pro」という商品があったら、「Pro」の方が高級に見えるという心理もあるのかもしれない。

 また、いろいろな人に意見を聞いたところ、「Pro」とある方が業務用途では購入しやすい、経費で購入しやすい……という話もあるらしい。

 事実、シリコンバレーのIT企業では、ほぼ標準モデルとして、この「安い方のMacBook Pro」が選ばれているらしい。これなら、何も言わなくても会社から提供されるが、他のモデルを欲しがると、いろいろと書類手続きが必要になる……というわけだ。

 というわけで、そういう事情があるのならともかく、自費で買うならスペック、機能ともに明らかにM2 MacBook Airがお勧めだ。お間違いなきように。