メタバースがTwitterのトレンド常連ワードとなり、テレビやラジオ、雑誌でも多く取り上げられるようになった現代。いまだメタバースの定義は定まっていませんが、メタバース、さらには現実を超える世界を見せてくれるVR/AR/MRを活用する企業は増えてきています。

 既存の世界の一部をアップデートしてくれる期待が持てるメタバースを、商業的に活用したいと考える企業や自治体も増えてきています。2022年8月13日より開催される世界最大のメタバースVRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」には、みずほ銀行やJR西日本、泉佐野市が参加を表明していますし、海外の話となりますが、ドバイ首長国のハムダン皇太子は今後5年間で4万件ものバーチャルジョブを創出することをツイートしました。

 ところで先日、筆者はVRChat内で撮影された某ドラマのVRシーンにエキストラとして参加しました。その現場で感じたのは、メタバースの1つであるソーシャルVR内の活動をスムースに進めるためには、ソーシャルVRを詳しく知った人が欠かせないということ。現実とは違うことができるのと同時に、現実でできることがソーシャルVRでは実現できないこともあるため、理想と現実の差分を埋める役割が必要になるのですね。

●ソーシャルVR=メタバースを活用した就職フェア

 メタバースに明るい人材を探したい企業は今後増えていくし、普段からVRChatやclusterといったソーシャルVRにアクセスしているユーザーの中にも、自分のスキルを活かした仕事と出会いたいと考えている人も増えていくはず。そのマッチングを行うべく、開催されたのがメタバース就活フェス「METANAVI」です。

 VRChatプラットフォームを用いて、特設会場となるワールド内に出展企業の各ブースを設置。各企業の担当者は中央のステージでプレゼンを行ったあと、自社ブースで1人1人の就職希望者と直接話せるイベント。また複数のユーザーで企業の担当者に質問を投げていくことも可能でした。全体のタイムスケジュールは2時間ほど。各ブースをまわってじっくりと話、他の方の質問にも耳を傾けていくと、あっという間に終了時間となるほど高密度なイベントです。

 4月29日に初開催された「METANAVI」の参加者は、VRChat内会場は抽選で選ばれた30人ほど。参加企業の方とスタッフを合わせたら50人ほどでしょうか。

 注目度が低いと思うかもしれませんが、現状のソーシャルVRで好きなアバターを身にまとい、快適に会話して移動できる環境を整えるには参加人数を絞り込む必要があるのです。YouTubeライブ、Zoomの視聴者数は1000人を超えており、ソーシャルVRでの就職イベントに注目を持つ方は多いということが伺えます。

 6月24日に開催された第2回「METANAVI2」の参加人数は現在のところ公開されていませんが、初回と同じ規模だと感じました。

●5社5様の企業が出展したMETANAVI2

 「METANAVI2」の出展企業を見ていきましょう。まずC Channelは女性向けメディアC CHANNELやmama+(ママタス)、mysta(マイスタ)などを運営するメディア企業であり、InstagramやTikTokで活躍するインフルエンサーコミュニティを持ち、データドリブンマーケティングとAIを得意とする企業です。

 Metaverse Standards Forumに属し、法人向けのXRプロダクトの企画・開発を手掛けるSynamonは、新規サービスとして独自のメタバース総合プラットフォームを開発中。NFTとNFTコミュニティを取り入れることで、持続性のあるメタバースを作ろうとしています。

 VRゲームが好きな方なら、東京クロノス、アルトデウス:ビヨンドクロノスの名前をご存知でしょうか。Quest 2やPC VR用のVRゲームを作り続けているMyDearestも出展していました。「メタバースくそくらえ!」というキャッチコピーと共に新規タイトル企画の投票イベントを開催するなど、VRユーザーを巻き込む施策も行っています。

 ambrは2018年の段階で国産ソーシャルVR「ambr」のα版をリリース。2021年9月には法人向けメタバースプラットフォーム「xambr」を提供し、東京ゲームショウ2021のVR会場としても使われました。同プラットフォームの価値を高めるべくユーザー体験の最大化を目指したメタバースクリエイティブスタジオ事業も展開中です。

 そしてmeleapは、ARを活用したテクノスポーツ「HADO」を2016年より展開中。ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーにより、「子供の頃からかめはめ波を撃ちたかった」というCEO福田浩士さんの夢を叶えたこのコンテンツは世界中に広がり、公式大会が開かれるほどの規模となりつつあります。

●企業との、人事担当者との距離の近さを感じる

 メタバースの定義はまだ定まっていないと前述しましたが、VR/AR/MR企業だけではなく、インフルエンサーマーケティングを得意とする企業も「METANAVI2」に出展するあたり、メタバースを知る人材の需要は高いのではと感じます。というのもC Channelの担当者として会場に訪れたのは、CEOの森川亮さんでしたから。

 特定のプラットフォームに集約される中央集権時代から、分散型のWeb3時代へと移り変わっていく現在において、インフルエンサーマーケティングの視点からみてもメタバースには興味を示しているそうです。ハンゲーム時代はゲームという仮想空間の中に住む社員を見てきたそうで、森川さんはいち早くメタバースの片鱗を感じとってきた起業家ともいえます。

 「METANAVI2」の特徴というか、ソーシャルVRの特徴として全国から、もしくは世界中から1つのワールドにユーザーが集まることが可能です。もし東京のオフィスに通えないユーザーからの応募があったときはどう対応するのかと尋ねたら、「社内イベントのときはオフィスに集まっていただきたいので、完全リモートワークを求められたときは考えてしまうのですが、その点を理解していただけたら大きな問題はないと思います」と答えてくれました。

 ambr CEOの西村拓也さんが「METANAVI2」での出会いを求めていたのは「VRやエンターテインメントが好きな方です」。今現在VRに深くハマっている方も、バズワードになっているから関心を持って、VRの可能性に共感を持ってくれる方も大募集。

 実際の募集職種としてはゲームサーバエンジニア、Unityエンジニア、シェーダーエンジニア、アートディレクターetc.ですが、「ソーシャルVRで多くの人数を集めたイベントを企画した方ともお話をしてみたいです。技術だけではなく、ユーザーの満足度を高める活動経験も活きてくるのがソーシャルVRのコンテンツ製作ですからと話していました。

 「METANAVI」を取材して感じたのは、担当者の方とユーザーの距離が近いこと。初めての人と話すのが苦手なユーザーであっても、担当者の方が優しげな雰囲気を持つアバターを用いているためか、積極的に質問できる場になっていると感じます。

 現実世界でのコミュニケーションが及び腰になってしまう方でも、ソーシャルVRを活用した就職イベントは能動的に参加したいと思えてくるのではないでしょうか。また出展企業も、現実世界でのリクルーティングとは異なる人材と出会える場となるのでは、という期待を抱ける就職フェアになっていると感じました。

(武者良太)