今年春に購入した「Nreal Air」の話を何度か書いているが、久々に「本格活用編」を書いてみようと思う。

 というのは、6月以降の海外を含む出張で何度か使い、さらに、外出時にもちょっと工夫して使ってみたからだ。あくまで自分の中での実験ではあったのだが、なかなか面白い知見が得られた。今後のデバイスでどんな体験が得られるかの予測も含め、ちょっといろいろお伝えしてみたいと思う。Nreal Airがどうこうというより、「軽量なHMDが普及したら」という想像を膨らませるための実験、と考えていただきたい。

 なお、いくつかの写真は現地での撮り漏らしがあったため、後日仕事場で再現したものである点はご了承いただきたい。

●飛行機の中で出張のお供に

 機器の性質をおさらいしておこう。

 Nreal Airは、サングラス型のシースルーディスプレイである。Androidスマホと組み合わせることでAR機器としても使えるのだが、そこはまだかなり発展途上である。現状は、「画質がかなり高いメガネ型ディスプレイ」としての価値がほとんど、といっていい。USB Type-Cを介してDisplayPort規格で接続するディスプレイになるので、対応機器であれば、スマートフォンでもiPadでもPC/Macでもつながる。

 その性質上、まず有用なのは「リラックスして使う映像表示デバイス」としての使い方だ。

 というわけで、飛行機での長時間移動中につかってみた。6月の米国出張時にはiPad Proに、7月の高松出張時にはGalaxy Z Fold 3とつないで使っている。

 どちらも利用方法はシンプルだ。

 USB Type-C端子にNreal Airをつなぎ、目的のアプリで映像を流すだけだ。その際、本来音はNreal Airからも出せるのだが、周囲に音漏れするのでBluetoothヘッドフォンを併用する。

 そうすると、機内では以下のような風体になる。今はマスク着用も必要だし、かなり怪しい感じになってしまうのだが、その点は致し方ない。

 使い勝手は「なかなか快適」のひとことだった。席にもたれかかり、自然な姿勢で座ると空中に映像が見える感じになるので、長時間見ていても疲れにくい。「Oculus Quest」などのVR用HMDを使えば同じことはできたのだが、画質と頭への負担の両方で、快適さがまったく異なる。代替する機器が出るまで、出張時のお供には最適だと感じた。映画もいいのだが、本を「下を向かずに読める」のもなかなかいい。自宅でも「寝転んで使う」ことはあったが、それと同様の快適さだ。席ではテーブルは出さず、手元に機器を置いて使う感じにするといい。

 Nreal Airは、メガネ部を覆う「シェード」をつけると完全に周囲が見えなくなり、真っ暗な空間で映像を見られる。そうすればちょっとしたパーソナル映画館。発色も、シェードを付けたほうが良くなる。

だが、結局途中からつけるのはやめた。特に海外移動の時はそうだった。なぜなら、飛行機内が暗くなるので、シェードをつけなくても良くなったからだ。シェードなしなら一応周囲も見えるし、その方が安全ではある。あまりお行儀はよくないが、つけて映画を見ながら食事だってできた。

 こうやって使うときには、iPadやスマホの方では、ディスプレイの輝度を最低まで下げるのがいい。本来の画面はNreal Airの方に出ているので、明るくしておく意味がない。電力消費を下げるにも効果的だ。画面を暗くしたiPadやスマホを手元にもってそちらの画面をタッチして操作するのだが、映像を見ているときはほぼ操作する必要はないし、本を読むときもスワイプする程度なので、画面が暗くても困りはしない。

 アメリカ出張時には片道で4時間ほど、高松出張時にはフライト中の1時間半の間使い続けたが、輝度を落としていたこともあり、バッテリーは十分に余裕があった。これなら実用性もまったく問題ない。

 将来的に、スマホなどのデバイスをつながず同じことができる「スタンドアロン製品」が出てきたり、ディスプレイ用のケーブルが不要となる「ワイヤレス対応製品」が出てくる可能性もあるだろう。

 ただ、バッテリーのことをあまり気にせずに使えたのは「ケーブルで本体とつないでいたから」でもあり、そのために、メガネ部にはバッテリーがなく、軽くなっているという事情もある。意外と「ケーブルでつなぐ」今の形態は、ちょうどいい現実解になっているという印象も受けた。

●小さなゲーミングPCとの組み合わせは?

 では「仕事」はどうだろう? これまでもPCやMacで使っているが、もっともっと荷物をシンプルにし、「目にディスプレイをかけているからできる」使い方を試してみた。

 以前の記事で、「ポータブルゲーミングPCにつなぐと面白い」ことは分かっていた。では、さらにキーボードを用意するとどうなるだろう?

 ということで、ポータブルゲーミングPCである「AYANEO 2021 Pro」を用意し、試してみた。

 スマホとつなげばもっとミニマムになるのは分かっている。例えばGalaxy Z Fold3と組み合わせれば、サムスン独自のデスクトップ環境である「DeX」を使い、PC的に作業は可能だ。だがやはり「PCではない」ので機能的にも操作的にもちょっと不満が残る。iPadでもできるが、iPadは広い画面あってのものなので、やはりこちらもいまいち。ならば……ということでAYANEOの出番となった。

 AYANEOとNreal Airをケーブルでつなぎ、Bluetoothでキーボードをつないだら、AYANEOはそのまま足元のかばんの中へ入れてしまう。すると、卓上にはキーボードしか残らない。今回はタッチパッド付きの「FMV Mobile Keyboard」を使っているので、机の上は極限までシンプルになる。

 Windows 11の場合、外部ディスプレイ接続時には「外部ディスプレイにだけ映像を出す」設定もできる。具体的には以下の画面のように、「2のみに表示する」を選ぶ。そうするとAYANEO本体には画面が表示されなくなるので、バッテリーの節約になる。

 AYANEOはゲーム機としてみると、「PCゲームがかなり動くが、大柄な割にバッテリーが持たない」という欠点がある。ゲームを本気でプレイすると、2、3時間でバッテリーが切れる。

 だが、文書作成レベルなら別だ。実はこの原稿、基本的な作業をすべてNreal Air+AYANEOで行っているのだが、2時間ほど作業を続けた段階で、バッテリーは20%くらいしか減っていない。そもそも負荷が低い上に、電力を大量に消費するディスプレイが点灯していないからだろう。これはなかなか実用的だ。

●シースルーディスプレイだからダークモードが生きる

 もう1つ重要な設定変更として、「画面をダークモードにしておく」ということがある。

 Nreal Airは黒を「透明」として扱う。シースルーを実現するために必要なことなのだが、ということは、ダークモードにすると「黒で表現される部分は背景が透けてみえる」ことになるのだ。以下の写真は、Nreal Airから見える映像を、スマホのカメラで接写したもの。なんとなくイメージがつかめるのではないだろうか。

 さらに、文書作成でもダークモードにすると、文字だけが空中に表示されているような感じになる。実景と合成して再現するとこんな感じになる。手元にある飲み物などは楽に持てるし、机の上はシンプル。しかも、自分の視線の方向に編集中の画面が見えるので、首を下に向けず、正面を見て作業ができる。

 この軽さのHMDであるならば、「机の上に固定された四角い画面」でなくても十分に仕事ができることは、よく分かった。ノートPCの「ディスプレイ部がないもの」があってそれと組み合わせることができればベストであったように思う。

 もちろん欠点はある。

 Nreal Airをディスプレイとして使った場合、「視野の中央に映像の表示位置は固定」なので、首を傾けても映像がついてきてしまう……というのが最大の課題だ。スマホと連携しない限りシンプルなディスプレイなので、どうしてもそうなってしまうのだ。

 将来のデバイスでは、同じようなことをしたときに「リアルな風景の特定の場所に画面を固定する」ような使い方ができれば……とは思う。いわゆるAR機器ではなく、PCとの連携を強化して、「リアルな空間をディスプレイとして使う専用機器」があったとすれば、それはそれで実用的なのではないか、と確信している。

※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、西田宗千佳さんのコラムを転載したものです。