近年、iOSは6年前までのモデルをサポートすることが多かった。例えば、2021年秋ローンチのiOS 15は、2015年秋に発売されたiPhone 6s/6s Plusをサポートしていた。しかし、今年の秋にローンチされるiOS 16は、2017年秋発売のiPhone 8、iPhone Xからしかサポートしていない。Appleのサイトを見てもサポートするモデルがグッと減った気がする。これはなぜなのだろうか?

●一挙に2年分サポートされなくなった

 最近のAppleは新iOSで6年分のiPhoneをサポートすることが多かった。われわれガジェット好きは1〜2年、長くても3年ぐらいでスマホを買い替えるが、一般には5〜6年使われる方もいるかもしれない。とはいえ、iPhone 6s/6s Plusとなると、さすがに使っている人は減るのではないだろうか? 性能的にもそろそろ厳しい。だからそれがサポートされないのはまぁ仕方ない。しかし、今回はiPhone 6s/6s Plusだけでなく、同時にiPhone 7/7 Plus、iPhone SE(初代)、さらにiPod touch(第7世代)までもが一気にサポートから外された。

 OSの更新は最新のテクノロジーを反映するためだ。しかし、同時にセキュリティアップデートを施すためでもあるから、なるべく多くのモデルをサポートした方がいいのは言うまでもない。しかし、あまり古いモデルもサポートするとなると、最新の技術を利用できなくなる。だから、過去のモデルが切り捨てられていくのは仕方がない。むしろ、AppleがiOS 15でサポートした6年分というのは、長い方だ。Appleは「同じモデルを長く使ってもらうことは、環境負荷を下げる」とも言っており、なるべく古いモデルもサポートするというのは、同社の方針だと言える。

 では、なぜ、今回一気に2年分のモデルをサポートから外してしまったのだろうか?

●搭載されているチップセットを見てみよう

 おそらく、その理由は搭載されているチップセットにある。

 今回、対応機種から外されたiPhone 7/7 Plusに搭載されているのはA 10 Fusion、iPhone SE(初代)に搭載されているのはA9だ。対して、継続サポートされるiPhone 8、iPhone Xに搭載されているのはA11 Bionic。

 1世代ではあるが、今にして思うとA10 FusionとA11 Bionicには大きな違いがある。A11 Bionic以降のチップセットには機械学習専用のニューラルネットワークハードウェア『Neural Engine』が搭載されているのだ。

 Neural Engineは機械学習のためにチューニングされた専用の回路である。登場時には、Face IDの顔認識に使われると説明されていたが、現在では写真の撮影、加工、音声認識ほか、ありとあらゆる機能で使われるようになっている。例えば、写真を1枚撮っても撮影された状況や対象などをNeural Engineで認識し、対象が人物であれば肌色をキレイに、目鼻立ちをしっかりと描写する、風景であれば青空をきれいに描写しノイズが乗らないように、建築物は逆にディテールを細かく描写する……という処理を行う。Siriが行う音声認識でもNeural Engineは使われるし、利用シーンはますます増えている。

 そんな中で、Neural Engineを搭載しないA10 Fusion搭載モデルをサポートするのが難しくなってきたのだろう。A11 Bionicであれば毎秒6000億回、最新のA15 Bionicにいたっては15兆8000億回の演算が可能だというNeural Engineなしには、新しいiOS 16は成り立たないのだろう。

 「背景からの対象物の抜き出し」「写真やビデオの画像に表示されるテキストの認識」「音声入力とキーボードの同時使用」「アクセシビリティで、カメラ画像からのドアの検出」など、iOS 16がサポートする機能は、ますますNeural Engineの必要性を高めている。iOS 16ではiPhone 7/7 Plus、iPhone SE(初代)がサポートされなくなったのは、Neural Engineが搭載されていないからだと見て間違いない。残念だが、これは時代の趨勢。仕方ない。

●春まで売っていたiPod touchがサポートされないのは辛い

 今回iOS 16のサポートから外れるモデルの中で、もうひとつ注目しておきたいのがiPod touch(第7世代)だ。

 本機もA10 Fusionを搭載しているから、先に展開した論でいえばiOS 16のサポートから外れるのは止むを得ないところだといえる。

 しかし、本機の販売終了は2022年5月12日。春まで販売されていたモデルが、秋の新OSでサポートされないというのは少し辛いところだ。

 iPod touchはレストランでの注文の受注や工場内などで業務用端末として広く使われてきた経緯もある。それらの利用目的でいえば最新OSの機能は必要ないとはいえ、業務用に使っているだけに最新OSを使わないことでセキュリティレベルが下がってしまうのは心配なところだ。

 Appleには、せめてセキュリティアップデートだけでもなるべく長期間行って欲しい。

(村上タクタ)