「世の中の案件は全て広告案件なのに、なぜ広告と書く必要があるのか」──ステルスマーケティング(ステマ)をやる事業者の中にはそんな意識のところもある。消費者庁は9月16日、「第1回 ステルスマーケティングに関する検討会」を開催した。

 同会では、ステマの実施状況や海外事例の分析、経済学や心理学などから見たステマの影響などを論じる。初回は、広告代理店やインフルエンサーを対象にした調査結果から、ステマの現状を整理した。

●ステマは現状「不当表示」に当たらない

 ステマとは「広告主による広告宣伝のうち、消費者に広告主を明かさないもの」のこと。ステマの中には、事業者が発信しているにもかかわらず第三者を装う「なりすまし型」、事業者がインフルエンサーなどに金銭などの利益を提供して宣伝しているにもかかわらず、その事実を表示しない「利益提供秘匿型」がある。

 例えば、広告表示のない広告記事、ECサイトなどのやらせレビュー、インフルエンサーが広告表示せずに商品を広告する行為などが該当する。

 現状の景品表示法では「優良誤認表示」「有利誤認表示」と内閣総理大臣が指定している不当表示が規制されている。優良誤認は商品などが実際より著しく優良だと示すこと。有利誤認は競合商品などより著しく有利だと示すこと。内閣総理大臣が指定する者の中には原産国の不当表示などが含まれる。

 ネット広告業界では、広告の審査が甘く出稿ハードルが低い場合があることや、業界団体の規制が効きにくいことなどで、ステマが起きやすいという。

 ステマのように広告であることが分からないように表示する行為は現在は不当表示に当たらず、法的には問題ないことになっている。ステマ規制がないのはOECD加盟国のうち日本だけだった。

●「ステマをやりたがる広告主もいる」

 消費者庁は、広告代理店や広告主、インフルエンサーなどにヒアリング・アンケート調査を実施した。

 広告代理店などからは「ステマをやりたがる広告主も、それを受ける代理店もある」「不正レビューの公募は公然と行われている」という声が上がった。中には「世の中の案件は全て広告案件なのに、なぜ広告と書く必要があるのかという意識のところもある」という証言もあったという。

 インフルエンサー300人へのアンケート調査でも、全体の41%はステマ依頼が来たことがあると回答。そのうち45%は実際に依頼を受けたとしており、ステマが確実に存在することが分かった。

 インフルエンサーを使った広告は投稿数に応じて報酬が決まる固定報酬型であることが多いため、インフルエンサーが自身の判断で広告効果を挙げようと広告表示を消すメリットは特にないという。

 広告主がインフルエンサーに広告表示しないよう指示することはある。近年では、商品を提供してその感想を投稿していいことにし、投稿する場合はPR表記をしないよう指示するケースもあることが分かった。

●ステマは「体感で20%効果が高い」

 インフルエンサーがステマをする意味は少ないが、広告主からするとステマの効果は絶大だという。

 広告代理店へのヒアリングの結果によると「広告表示しないほうが売り上げにつながりやすい」「ステマ広告は通常広告より体感20%効果が高い」「ステマで売り上げランキングが大きく上がったり、売り上げが数倍になったりする」などの声も。短期的なメリットは大きいことが分かる。

 そのため、広告主や代理店ごとにステマに対する意識にも違いがあることが分かった。ステマは消費者にばれるとSNSなどで炎上することもある。リスクが大きいと考えられる事業者にとってはステマは危険だが、そうではない事業者は「法的に問題ないため謝罪するだけでいい」という意識もあるという。

 一方、ステマを放置していると他社の広告に対抗するためのステマが氾濫する、長期的に見ると消費者が広告に嫌悪感を持つようになり広告の信頼性が落ち、広告表示をしなくなる悪循環が発生するとの見方もある。

 検討会に参加した河野太郎デジタル大臣は「ステマが一般消費者の自主的・合理的な消費行動、商品選択を困難にしているという指摘もある。今後も発展していくだろうネット広告市場が健全に発展を続けられるように、消費者に分かりやすく適正な広告を維持実現していくことが非常に重要。必要ならステマに関する何らかの規制も考えなければならない」との方針を示した。

 検討会は今後、第2回から第4回にかけて関連する事業者からヒアリングを実施。11月の第5回では論点を整理し、12月の第7回までに報告書を取りまとめる。