2022年春、古いフィルム一眼レフカメラにiPhoneを合体して撮影できるようにしちゃおうという、なんともユニークでおかしな製品「デジスワップ」を以前紹介したけれども、開発中だったアレがほぼ製品版に進化したというので再度挑戦してみたのである。

 前回の開発中バージョンは画質にちょいと難があったのだが、今回はちょいとレベルアップしていたのだ。前回のレビューと重複するところはなるべくあっさりとすませつつ、進化点を見ていきたい。

 実は、画質が格段に上がりつつ、一願レフのレンズならではの味を楽しめる撮影モードが用意されたのである。

●カメラやiPhoneの機種に合わせてパーツを組み上げる

 きちんとパッケージングされて届けられたデジスワップ。シンプルな箱がよい。

 早速組み立てるところから始める。

 デジスワップの理屈は非常に簡単だ。

 カメラの裏蓋を外し、フィルムの代わりにiPhoneを置くのである。

 もちろん、フィルムの位置にただiPhoneのカメラを持ってきても何も……は言い過ぎだけど、写真として成り立つようなものは撮れない。カメラはフィルム面にピントが来るように設計されているからである。

 そこでデジスワップではフィルム面に半透明のスクリーンを置き、そこに投影した画をiPhoneで撮影するという構造をとっている。

 こんな感じである。

 だからまずスクリーンがフィルムの位置にくるよう位置決めをして、三脚穴を利用して固定する必要があり、そのために3つのパーツを組み合わせてネジ留めするわけだ。

 一番大事なのは投射スクリーンの位置決め。光軸にぴったりあわせる。青空など明るい所に向けてシャッターをバルブで開いて映してやるのがいいけど、一願レフの光学ファインダーって光軸上にあるので、それと中心を合わせてやるといい。

 スクリーンがフィルム面があるべき位置にきっちり収まるのも重要で、ずれると無限遠が出ない、ファインダーでピントを合わせても実際のフォーカス位置と合わない可能性がある。

●新しい撮影モードだと画質がこれだけ違うのだった

 さて本体を組み上げたら、iPhoneをセットする。

 といってもiPhoneにケースがあったりなかったりケースが分厚かったり薄かったりすると微妙に位置がずれるので、デジスワップではデジスワップ向きのケースが同梱されることになった。

 日常使ってるケースでうまくハマらなかった場合は付属のケースを使うといい。

 セットしてアプリを起動する。最初に、設定画面から「フォーカスのキャリブレーション」を行う。これ大事。投射スクリーンの位置にiPhoneのフォーカスをロックするわけだ。

 そして撮影。

 撮影モードは2つ。1つは前回の試作品でためした、カメラのシャッターと連動して撮影できるモード。

 まずは従来の撮影モード(Camera shutter linked mode)から。

 これの仕組みはシンプルだ。

 iPhoneのカメラ側は4Kの動画モードで常時動いており、カメラ側のシャッターを切った瞬間、光がiPhoneのカメラに当たるのでそれを検知してその瞬間をキャプチャーするのである。だから16:9の画像として記録される。

 このアナログな操作でiPhoneに写真が撮れるってのがマニアックで面白いわけである。

 ただ、投射スクリーン越しだから原理的に少し暗くなり、ディテールの描写やコントラストも弱くなるし、動画モードでスタンバイ中に一瞬入ってきた光をぱっと捉える形になるのでクオリティが安定しない。

 それが味といえば味だけど、レトロなトイカメラに安いフィルムを入れて撮ったような雰囲気になるのを良しとしない人もあろう。

 そこで画質向上のために新しい撮影モードが追加された。

 撮影は全部iPhoneでやっちゃおうという「iPhone Shutter mode」だ。

 このモードでは、カメラ側は「iPhone用レンズアダプター」の仕事に徹する……と思うと分かりやすい。

 カメラ側のシャッタースピードはバルブにしてシャッターを開きっぱなしにし(シャッターをロックできるケーブルレリーズがあると便利)、iPhoneの画面を見ながらフォーカスを合わせ、必要な絞りを調節して撮影する。

 これだとiPhoneの画面でフォーカスを追い込めるし、露出や画作りは全部iPhoneのカメラ機能任せで、iPhoneならではのコンピュテーショナルフォトグラフィーが働いてくれるし、1200万画素で撮れるし。

 撮った写真で見比べてもらえると一番分かりやすい。かなり違うでしょ。

 なかなかいい具合なのでこのモードで何枚か撮ってみたい。

 レンズはAF Nikkor 50mm F1.4だ。

 まずは招き猫群。

 フィルムで撮ってスキャンしたみたいな感じだ。

 さらに踏切で撮影。

 リアルに50mm F1.4のボケを味わえるのが楽しい。これは絶対にiPhoneだけじゃ撮れない絵だ(デジタルズームやポートレートモードを駆使してもこの味わいはなかなか出せない)。

 ついでに、投射スクリーンについた細かな埃も写っちゃうところがフィルムをスキャンしたっぽい味わいになってる(いやそこはちゃんと装着前に埃を吹き飛ばしておけよと思うけど、サボってしまったのだった)。

 とかいってたら招き猫電車がやってきたのであわてて撮影。フォーカスが甘かったけど、昔の写真っぽい雰囲気がちょっと出てて、面白い。

 モノクロモードもあるので、それを使うとさらに雰囲気が出る。

 さらに、Nikkor 24mm F2.8というマニュアルフォーカスの古い広角レンズでも撮ってみた

 さらに、別のカメラにも付けてみようということで、オリンパスの「M-1」を取り出す。

 これは1971年に発売された初代OM。もともとM-1という名前だったが、ライカ社から製品名変更の申し入れがあり、途中からOM-1に名前が変わったのである。

 つまり、M-1こそが最初の最初なのだ。

 フィルム巻き上げレバーのプラスティック部が劣化して撮れちゃってたりするけれども、ちゃんと動作はするので、デジスワップをこちらに付け替えてみた。

 サイズがちょっと違うのでそれに合わせて少しだけ調整。

 M-1にZUIKO 50mm F1.8を装着して撮ったのがこちらだ。

 というわけで、手元に古いMF時代の一眼レフ(ニコンのFMとかオリンパスのOM-1とかキヤノンのAE-1とか)が転がってて遊んでみたいという人に。

 ライカ用のアダプターもあるので(三脚穴がボディの端にあるので、そのままではつかないのだ)、そういうレンジファインダーカメラでもいけそうである。

 おすすめは標準から中望遠くらいのレンズを付けて、開放あるいはそれに近い絞り比較的近距離のものを撮ること。iPhone単体では撮れない写真を撮れるのだ。

 そこまでするなら、ミラーレス一眼にマウントアダプターを介してオールドレンズを付けて古いレンズの写りを楽しむ方が安く済んで写りもしっかりしてていいんじゃない? となるし、まあその通りではあるのだけど、デジスワップで撮った方がより古さを感じる(スクリーンを介してるせいだろう)、デジスワップで撮るとそのままiPhoneのフォトライブラリに記録されるのでその場でさっとシェアできる、さらにわざわざカメラの裏蓋外してメカをくっつけてまでiPhoneで撮るという無駄感が良い、などなどデジスワップならではのじわじわくる面白さがあるのだ。

 そういう趣味性が強い、というか趣味性100%なガジェットなので、かけた手間暇に見合ったクオリティが得られるかとか、そういう損得を考えちゃいけないのである。ムリにレンズとカメラのボディを流用してiPhone単体では撮れない写真を撮ろう、あるいはムリに古いカメラとレンズを使ってやろうというのを楽しみつつ、うまくいくと印象的な21世紀のスマホとは思えない写真を撮れるってのが面白さだ。