11月7日、日本のTwitterトレンドに「トレンド操作」が入った。イーロン・マスク氏が4日(現地時間)、米Twitterの人員削減に着手し、日本法人(Twitter Japan、以下TwitterJPと表記)の社員も解雇した結果、政治的な話題がサジェストされにくくなった──という声が発端とみられる。

 同じく解雇の影響か、5日から6日にかけては「ニュース」欄の更新が一時的にストップしていた。これによりTwitterJPがTwitter上の話題を操作していたとする意見が増えたこともあり、「トレンド操作」のトレンド入りにつながったようだ。

 一方で、マスク氏は長文の添付機能やなりすましアカウントの排除など、Twitterの今後に関わる方針を続々発表している。メディアを中心とした世論形成の場とも化しているTwitterは、今後どう変わるのか。ITmedia NEWS編集部でも議論したところ、さまざまな意見が出たので、考え方の一例としてまとめてみた。

 メンバーは6人。ITmedia NEWS編集部の編集長キーチ、消費者向けコーナー「くらテク」を受け持つセリザワ、幾つものテック系編集部を渡り歩いてきたヤマー、Web・雑誌双方での編集経験を持つサイトウ、AI音声合成技術を使った楽曲制作などが趣味のタニイ、ギリギリ“Z世代”の若手記者ヨシカワで話し合った。

●ユーザーへの説明不足? TwitterJPに落ち度はあるのか 

ヨシカワ 先週からTwitterが大変なことになっていますね。7日は「トレンド操作」なんてワードがトレンド入りしました。解雇されたTwitter日本法人の社員がトレンドを操作していたのではないか、という話題のようですが。

タニイ もしかするとですけど「トレンド欄」と「ニュース欄」を混同してる人が多いのでは?

ヨシカワ トレンド欄は話題になってることをアルゴリズムでピックアップする枠ですよね。一方でニュース欄はTwitter日本法人の人がメディアの記事を選んで載せる枠、だったかな。

 このニュース欄に出てくる記事が変わったことを、トレンド欄での出来事だと混同している人が多いのかもしれない、と。

キーチ これ、混同しやすい見せ方にしていたTwitterに非があると思うんですよね。本来、トレンド欄に入ってくるのはアルゴリズムでやったものだけ、ニュース欄はキュレーションだけという見せ方をしていればよかったはずで。

 ニュース欄は中立的なアルゴリズムによる選出ではないと見せ方にできなかったのが、ボタンの掛け違いの原因だと感じています。

タニイ Twitterのニュース欄にTwitterの編集部的な組織が選んだ記事が載っているのは不自然な話じゃないですよね。例えばYahoo!ニュースだって同じことをしていますし。問題は、それがあたかも世論に見える可能性がある見せ方をしていた、というところだと思います。

ヤマー ニュース欄に結構人の手が入っていると認識していなかった人も多いんじゃないかと。だから衝撃が大きかった。みんな「SNSだからアルゴリズムなのだろう」「AIなのだろう」と思っていて、Twitter側からもあまり情報が出ていなかった。

 でも実は、ニュース欄については人の手でやっていたので、“意外感”が大きかったのではないかと思います。キュレーションの取り組み自体はYahoo!ニュースやLINE NEWSといったプラットフォームでもやっているんですけど、SNSでも一緒だと思っていなかったのかも。

 あとは、「トレンド」欄とは別に、ユーザーの傾向からパーソナライズされる「おすすめ」欄や「今何してる?」欄があるのも紛らわしいですよね。トレンドはランキング形式ですけど、後者の2つはユーザーによって表示される内容が異なる。

ヨシカワ トレンド欄自体はランキングですが、それぞれの話題にひもづいた記事は手動で選定していたのも混乱の要因ですね。これは開示された情報ですが。

タニイ UI・UXの話題ですね。

セリザワ ニュース欄についてはちょっと事情が違うかもしれません。ニュースは2015年に日本発で実装されたんですが、当時はYahoo!ニュースとの差別化を図るためか、ニュースの選択は「ユーザーのアクション(ツイート、リツート、お気に入り)によってニュースの一覧が作成されることにある」としていました。つまり人の意思が介在しないことをある意味で売りにしていたんですよね。

ヨシカワ あれ、話が違う……。

キーチ ただ、当時のニュース欄と今のニュース欄は明らかに別の機能なんですよね。当時はアルゴリズムによる選出で、ITmedia NEWSもよくピックアップされていました。ただそれはいったんなくなって、後に今の形で復活したんですよね。メディアがTwitterに送ったモーメント(ツイートのまとめ)の中から記事をキュレーションする形になりました。

ヨシカワ いちユーザーとして変わったことに気付いていなかった。どっちにしろ説明不足な気がします……。

 モーメントについては、Twitterとメディアの内情を明かしたジャーナリストのツイートも話題になっていましたね。「メディアがTwitterJPに『うちの記事を載せてよ』と連絡している」ことを打ち明けた内容でしたが。

セリザワ 驚いた人も多かったと思います。

ヨシカワ 確かにTwitterJPは、さまざまなメディアから送られたモーメント(ツイートのまとめ)をピックアップして、「おすすめ」(Twitterからのサジェスト)欄などに載せていましたね。ただ、特定のメディアだけではなくて、ITmedia NEWSを含むさまざまなメディアからのモーメントを受け付けていて、その中から選んでいたと聞いています。何を載せるかはTwitter側に一任する形ですね。

 だからモーメントを送ったからといって必ずおすすめ欄に載せてもらえるわけではないし、同じ話題を記事にしても、別の媒体に先を越されることもありました。少なくともITmedia NEWSではそうでした。

 もしかするとここも、TwitterJPが一部Webメディアとのみモーメントのやりとりをしていた、と勘違いしている人もいるのかもしれません。TwitterJPがどういった基準でモーメントを選んでいたかまでは聞いていませんが……。

●SNSの光と闇? 広告プラットフォームとしての説明責任を考える

ヤマー 話を戻しますが、「人の手が入っているのかいないのか」については、本来はちゃんと専門部署を設けたり、ガイドラインを決めたりすべきだったと思います。ただこの辺はTwitterに限らず、他のSNSでもあんまりちゃんとしていない。Yahoo!ニュースとかはガイドラインを設けてきっちりやっている印象ですが。

 Googleは徹底してアルゴリズムで管理していますが、その内情は公開していません。それぞれ事情もあると思いますが、基本的にはその辺りの透明性は高くないですよね。

サイトウ メディアの中にいると当たり前ですけど、どのプラットフォームがどうやってニュースを表に出しているか、全然情報が出てないですよね。Yahoo!ニュースに厳しいガイドラインがあるのも、Googleがアルゴリズムで管理しているのも、意外と知らない人が多いと思います。

 そういった基準を最初に明確化した上で「どう思う?」とユーザーに提示しないと、読み手は分かりようがないんじゃないでしょうか。

ヨシカワ そうかもしれない。ただ、Twitterにしろ他のSNSにしろ、全部広告プラットフォームの側面があるわけじゃないですか。これは完全に邪推でしかありませんが、こういった広告プラットフォームは本当に話題になっていることと、話題にしたいことが混じっている方が都合が良いわけじゃないですか。

 つまり、あえて分かりにくくしているのではと……個人的には考えてしまう次第です。

キーチ その意味でも、やっぱりTwitterは説明が足りない。

タニイ 今、公正取引委員会でステルスマーケティングの検討会をすごいスピードでやっているんですけど、そういう場所で議論になってもおかしくないですね。

 参考記事:「なぜ広告と書く必要があるのか」 消費者庁が「第1回ステマ検討会」開催 広告主の意識を調査

キーチ 透明性についてはTwitterJPにも同じことがいえるかなと。われわれは取材の窓口としてTwitterJPに対応してもらっていたけど、いちユーザーに対して「Twitterの広報って何しているの?」「他の社員は何をしていたの?」という情報はあまり発信されていなかったと思います。

 TwitterJPの人が解雇された、というニュースが出回って「その人たちは何をしていたの? 何もしていないのなら首を切られて当然じゃない?」という声も出ていますが、これも透明性がなかったゆえというか。

 ただ、外資系の日本法人はどうしても意思決定が本国の判断ベースになってしまうので、透明性を上げようにもハードルが高かったのかもしれません。

ヨシカワ トラブルがあったときの責任主体が本国なのか、TwitterJPなのか分かりませんでしたからね……。

キーチ Twitterに限らず、外資系のサービスあるあるではありますね。

ヤマー 先ほど話したガイドラインの話ではありますが、ヤフーとかも国内企業だからできるんですよね。やっぱり外資ベースだとどうしても限界がある……。

●「メディア」ではなく「SNS」になる? 今後のTwitterを考える

ヨシカワ とはいえ、今生じている変化はおそらく不可逆なわけですが。今後、Twitterはプラットフォームとしてどうなっていくと思います?

サイトウ 海外メディアのコラムとかだと、「TwitterはメディアではなくSNSになろうとしている」という言説を見かけます。これまでは広報や情報を届ける場だったけど、イーロン・マスクは昔ながらの狭いSNSというか、交流の場にしようとしている、という趣旨ですね。

ヨシカワ Twitterでは「2ちゃんねる再来」なんて声も見ますね。

キーチ インターネット老人会的な視点で話すと、Twitterはハンドルネームのついた2ちゃんねるであって、メディアと思っている人は誰もいないと思いますがw

ヨシカワ 今までもユーザーと提供側でのすれ違いが見られましたね。特に日本のユーザーは昔のSNS的にTwitterを使っていると思うんですけど、一方でTwitterは広告プラットフォームとしてサービスを開発・提供していた。それがSNSとしてのサービスの使い勝手に影響したとき、トレンド欄が燃えていた気がします。

サイトウ ここはすごく大事ですね。2ちゃんねるは広告ビジネスにはなり得ないじゃないですか。一方で、メディア事業で広告を載せようとすると、サービス内に出るコンテンツ、つまりユーザーのつぶやきなどをどう調整するか大事になる。そこのせめぎ合いが、ユーザーとTwitterのすれ違いの正体だと思います。

ヤマー 広告ビジネスが根幹だからだと思うんですけど、より広告を露出するために、よりユーザーの滞在時間を伸ばすようにTwitterが改変されてきた気がしています。先ほど話したトレンドとかもそうだと思うんですけど、Twitterの中で新しい話題を見つけて、Twitterの中でそれについて語ってもらって滞在時間を伸ばしていく。そのサイクルで広告クライアントにとって魅力的な媒体を目指す、ですね。

 イーロン・マスクはまずそこを変えたいのでは、と思っています。売り上げにおける広告依存の比率を9割から5割に下げたいという方針もそこにつながるのかもしれません。広告を露出するための仕組みを根本から変えないと、TwitterはSNSに戻れないと考えているのではないかなと。

キーチ 残りの5割はサブスクだよね。

ヤマー ですね。さすがにサブスクだけでサービスを維持するのは無理なので、広告の維持は必須だと思います。ただ、ユーザー体験を無料版と差別化することで、課金ユーザーを増やすことはできるはず。YouTube Premiumと一緒じゃないかな。

キーチ そういう意味では、現在のニュース欄については、今後も残るのであればいずれアルゴリズムで管理するようになるのかもしれない。イーロン・マスクはすごく合理的な人だと勝手に思っているので、人海戦術とかメディアとTwitterのウェットな関係構築はやらない気がします。

ヤマー イーロン・マスクはTwitterのアルゴリズムをオープンソース化すると提唱していましたね。

 参考記事:イーロン・マスクが唱える「自由なTwitter」の功罪 買収がもたらす“変化”とは

キーチ そうすると、機械的に選別するけど、その内情を秘密にするのではなく、アルゴリズムの方向性を公開する、みたいなやり方になるのかな。

ヤマー そうやって検証可能な状態にしていくと、提供側とユーザーの「情報の非対称性」もなくなっていくかもしれませんね。