「米FTX破綻はリーマン型ではなくエンロン型ではないか。内部統制、ガバナンスの問題だ」。傘下に仮想通貨取引所Coincheckを持つマネックスグループの松本大CEOは、ITmediaの問いに対し、このようにコメントした。

 エンロン(Enron)は2001年に破綻したエネルギー企業。損失を隠して粉飾決算を行い、破綻時の負債総額は400億ドル(約6兆円)を超えていたと見られる。

 FTXは、ベンチャーキャピタルなどから多くの出資を受けていたが、一切社外役員を入れず、CEOのサム・バンクマン・フリード氏への牽制が効いていなかったのではないかと指摘。出資者側のフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の課題についても触れた。

 FTXが自社トークン「FTT」を発行して資金を調達していた点についても、「トークンの問題も本質的ではない」とした。粉飾決算をしていたエンロンが社債を大量に発行していたのと同様だという。「トークンの承認プロセスが厳しくなるのは当たり前だ。ただしFTTはエンロン債のような問題はあるが、コインの仕組み自体に問題があるわけではない」

 「金額でいえば(破綻したステーブルコインである)テラのほうが大きかった。今回はサムが目立っていたので騒ぎになっているが、規模でいえばテラ。これまでも銀行破綻やリーマンショックなどいろいろな事件があった。この業界(仮想通貨業界)だけがおかしいわけではない」

●支える存在がない、破綻スピードが早い仮想通貨

 ただし、仮想通貨特有の問題もあるという。中央銀行にあたる存在がないため、支えるところがどこにもなく、破綻するときのスピードは早い。また既存金融機関では、資金を引き出そうとしても銀行経由となるので、そこで止めることもできるが、仮想通貨は世界中どこからでも迅速にお金を動かせるため、何か起こったときのスピードが極めて早いと松本CEOは指摘した。

 2021年頃から、海外の機関投資家による仮想通貨への投資が盛んになってきたが、FTXのガバナンス問題に端を発し、ムードは後退する可能性があるとした。「機関投資家の中には、ガバナンスの議論が整備されるまでは、トークンには投資しないという人も出てくると思う。ただし、これは長い目でみるといいことだ」

 マネックス傘下のコインチェックは、オランダに持株会社を作り、それを米ナスダックにDe-SPAC上場するプランを進めている。De−SPACは上場済みの特別買収目的会社(SPAC)と合併する方法で上場する仕組み。

 「コインチェックは米国には顧客を持たず、事業もやっていない。同盟国である日本の規制当局の厳しい監督下にある。上場承認を行うSEC(米証券取引委員会)は、形式審査だけを行う。それを考えると、コインチェック上場に影響を与えないはずだが、分からない。現時点ではプロセスが止まるという話はない」