PayPayカードが2022年末に投入した「PayPayカード ゴールド」。ソフトバンクや「SoftBank 光」通信料の決済で10%、ワイモバイルの通信料の決済で3%を還元。さらに通常の利用でも1.5%をPayPayポイントで還元するなど、還元強化とソフトバンクグループ内での連携が特徴だ。
一方で、年会費は1万1000円と高額になっており、競合の「dカード ゴールド」「au PAYゴールドカード」と合わせてきた。また、通信料の10%前後を実質的に割り引くところも同じだ。
PayPayカード ゴールド投入の狙いはどこにあるのか。PayPayカードの谷田智昭社長に聞いた。
「PayPayカード ゴールド」投入の狙いは?
谷田氏 これまでYahoo!のECにおける最も便利なカードとして「ヤフーカード」を提供してきた。しかしインターネットでお買い物をしているお客さまは10数%にすぎない。残りの90%近くのお客さまはリアルでお買い物をしている。
決済アプリ「PayPay」が5300万人以上に使われるようになり、満を持して社名もサービス名称もヤフーカードからPayPayカードに変えた。さらに、PayPayカードというプラスチックカードだけでなく、PayPayと連携してQRコードで後払いが使える「PayPayあと払い」も提供を開始した。
そうした中、「PayPayカード ゴールド」を投入するのは、お客さまのエンゲージメントを高めたいという気持ちがあるからだ。年会費を支払ってもPayPayカードを利用してもらえるエンゲージメントが高いお客さまは、利用金額も多くなる。そしてPayPay、ヤフー、ソフトバンクという、3つのチャネルでポイント付与することもできるようになる。
「エンゲージメントを高め、利用が高まる。高まるほどポイントの還元原資が生まれる」という循環だ。
競合である「dカード ゴールド」「au PAYゴールドカード」と横並びにも見える。
谷田氏 横並びで揃えているように見えますよね、表に並べると。PayPayカード ゴールドの特典を設計するとき、いろいろなカードの特典を比較して決めた。大事にしたのは、我々はどのお客さまに届けるのかということ。
PayPay、ヤフー、ソフトバンク──さらにはLINEもあるが、そのお客さまが喜ぶ、便利だと思ってもらえるようにしたい。それを見定めた上で、特典を設計し、重ね合わせた。
●ソフトバンクグループ内でのPayPayカードの立ち位置
今回、ソフトバンクグループ内での連携を強化した。グループからPayPayカードが期待されているのはどんな点か。
谷田氏 Yahoo!ショッピングで年間100万円使っている人でも、必ずしもエンゲージメントが高いとは限らないが、PayPayカード ゴールドの年会費として1万1000円払ってくれるお客さまのエンゲージメントが高いのは明白だ。グループのサービスに対する、エンゲージメントを測るツールとして期待している。
また、エンゲージメントが高いことで、滞在時間が長くなるとかPayPayの利用額が高い、携帯の解約率が低いことなどが想定される。
カードの決済データをグループ各社のマーケティングに生かすことも想定しているのか?
谷田氏 決済データを利用して、エンゲージメントの高いユーザーに対して、特定のサービスをより厚くすることも考えられる。
またお客さまの消費行動に関する解像度が上がってくる。ヤフーには検索があるので、購買の前に何を検索しているのか、どんなニュースを見ているのかまで分かってくると、さらなるマーケティングを提供できるのではないか。
ソフトバンクは経済圏で出遅れた?
谷田氏 2001年当時、Yahoo!BBをスタートして、ユーザーがものすごく増えた。これはインターネットだったので経済圏とは呼ばないだろうが、当時、ユーザーのPCのトップ(ブラウザで最初に開くページ)はほぼ全員ヤフーだった。ECが活性化していくと、なんとなく経済圏という言葉を使いたくなるが、そうでなくてもヤフー、ワイモバイル含めた渦というのが昔からあった。
そこにPayPayとかECとか、決済サービスが盛り上がってきた。ある定義における経済圏という意味では、出遅れて見えるかもしれないが、顧客を取り巻く渦としての「ソフトバンク経済圏」は2000年代からあって、どんどん大きくなってきている。
●PayPayとやる以上、オンリーワンを目指したい
PayPayカード ゴールド投入の反応は?
谷田氏 お客さまの声(反応)はいい。プレスリリースを打つとヤフーのリアルタイム検索でTwitterを眺める。ほとんどの場合、緑のポジティブな反応が50を上回ることはないが、今回は緑が本当に多い。
PayPayとどれだけ密接な関係を築けるか、PayPayのネイティブアプリを使っているかのように、金融サービスを簡単に使えるところにこだわっている。PayPayあと払いが驚くほど簡単に申し込めるように、例えば「ソフトバンクショップでPayPayカード ゴールドを申し込んだら隣のコンビニですぐ使える、そんな環境をつくりたいと思っている。
PayPayカードのゴールは?
谷田氏 メインカード化だ。メインの支払い手段としてお客さまに密着するのが重要。そのために重要なのは多くの場所で使ってもらうこと。PayPay、ヤフー、ソフトバンクの3つの経済圏と、その外の経済圏。そのそれぞれの場所で使ってもらうことが重要だ。
どんな立ち位置を目指したいのか。
谷田氏 PayPayとやる以上、オンリーワンを目指したい。「オンリーワンになるには、圧倒的ナンバーワンにならなければいけない」。これは天国の井上雅博(故・ヤフー元社長)の言葉だが、そこを目指してやっていきたい。