Samsung Electronics(サムスン電子)が、同社としてコンシューマー市場向けでは初となるPCI Express(PCIe) 4.0接続に対応するM.2 SSD「Samsung SSD 980 PRO」を発売した。公称のシーケンシャル(連続)読み出し速度は最大毎秒7000MBと、これまでのコンシューマー向け単体SSDとしては最速クラスの製品だ。

 今回、980 PROの評価用サンプルを入手したので、その実力をレビューしていく。

●事実上の「970 EVO Plus」後継モデル NANDは3D TLCに

 980 PROは、Samsungのコンシューマー向けSSDの最上位に位置付けられる、ハイパフォーマンス製品だ。従来の最上位であった「970 PRO」は3D MLC NANDフラッシュメモリを搭載していたが、本製品はTLC NANDフラッシュメモリを搭載する。

 この製品の投入に伴い、Samusungはコンシューマー向けSSDのラインアップを再編することを明らかにしている。「PRO」はハイパフォーマンス(性能重視)、「EVO」はメインストリーム(普及帯)、「QVO」または無印がバリュー(価格重視)と、シンプルな区分けとなる。

 新しいPROシリーズのメインターゲットは「プロフェッショナルユーザー(筆者注:クリエイターなどを指すと思われる)」「ゲーマー」「プロシューマー」とされている。つまり、980 PROは970 PROの後継モデルというよりは、実質的に「970 EVO Plus」の後継モデルを“格上げ”したものとなる。

●主要メーカー初のPCI Express 4.0対応

 PCIe 4.0に対応するSSD自体は、CFD販売の「PG3VNFシリーズ」やSeagateの「FireCuda 520」など、2019年半ばから流通している。しかし従来は、Samsung、Intel、Western Digitalといったメジャーブランドの製品は存在しなかった。

 980 PROはメジャーブランドのコンシューマー向けSSDとしては初めてのPCIe 4.0対応製品ということになる。

 PCIe 4.0の1レーン当たりのデータ転送速度は、「PCI Express 3.0」比で2倍となる。M.2 SSDで使われる4レーン伝送なら、最大転送速度が毎秒約3.97GBから毎秒約7.87GBに引き上げられる。インタフェースだけでも、増速効果はてきめんだ。

●シーケンシャルリードは“毎秒7000MB”に

 980 PROには「250GB」「500GB」「1TB」の3種類の容量が用意されている。2020年内に2TBモデルも登場する予定だ。現時点で存在する3モデルにおけるシーケンシャル(連続)読み書きの性能は以下の通りだ。

・250GBモデル:リード毎秒6400MB/ライト毎秒2700MB

・500GBモデル:リード毎秒6900MB/ライト毎秒5000MB

・1TBモデル:リード毎秒7000MB/ライト毎秒5000MB

 最速の1TBモデルは、今までは考えられない高速さを発揮する。既存のコンシューマー向けPCIe 4.0 SSDではシーケンシャルリードが毎秒5000MB程度だったことを考えると、突出ぶりは目立つ。

 ランダム4Kアクセス時のIOPS(1秒当たりの入出力回数)もリード時で2万2000、ライト時で6万と、こちらもコンシューマー向け製品としてはトップ水準となっている。

●NANDは3D TLCに 第6世代となったV-NANDは高速かつ省電力

 Samsungでは、自社製の3D NANDフラッシュメモリに「V-NAND」というブランドネームを付けている。980 PROでは、第6世代のV-NANDを採用している。先代の第5世代から記録層を増やすことで記録密度を40%増やした他、リード/ライトのレイテンシ(遅延)を10%抑制している。さらに、消費電力も15%削減された。

 980 PROでは、メモリコントローラーも新しくなった。新コントローラー「Elpis(エルピス)」では、PCIe 4.0に対応したことに加えてコマンド処理能力も大幅に増強され、従来の4倍にあたる最大128キュー、800万コマンドを同時に扱えるようになった。製造プロセスルールも「14nm」から「8nm」となったことから、電力効率も向上しているという。

 コントローラーは、従来と同様にニッケルでコーティングされている。このコーティングには、表面温度を7度引き下げる効果があるとのことだ。

●SLCバッファ「Intelligent Turbo Write 2.0」が大幅増量

 980 PROは、TLC(薄層クロマトグラフィー)3D NANDフラッシュメモリを採用している。そのため、従来のTLC/QLC NANDメモリを採用するSSDと同様に、「Intelligent TurboWrite 2.0」というSLCバッファ技術を導入している。

 TLC/QLCメモリには価格が手頃というメリットがある反面、読み書き速度が遅く、耐久性が低い(≒寿命が短い)というデメリットがある。SLCバッファはその欠点をカバーするために考案された技術で、TLC/QLC NANDメモリの一部にSLC(シングルレベルセル)NANDメモリと同じように動作する領域を確保し、その部分をバッファ(キャッシュ)メモリとして活用することで読み書きの速度を向上し、寿命も延ばしている。

 SamsungのIntelligent TurboWrite 2.0は、小容量の固定バッファ領域を確保すると共に、必要に応じて可変のバッファ領域を設けられる仕組みとなっている。980 PROのSLCバッファ領域は先代のTLCモデルである970 EVO Plusから大幅に増え、以下の通りとなっている。

・250GBモデル:固定領域4GB/動的領域45GB(合計最大49GB)

・500GBモデル:固定領域4GB/動的領域90GB(合計最大94GB)

・1TBモデル:固定領域6GB/動的領域108GB(合計最大114GB)

●第3世代Ryzen搭載システムでベンチマークテスト

 ここからは、980 PROの実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。

 今回は500GBモデル(MZ-V8P500B/IT)を、PCIe 4.0インタフェースを備える「第3世代Ryzenプロセッサ」のシステムでテストした。詳しい内容は別表にまとめている。

 また、比較対象として、同システムで970 EVO Plusの500GBモデル(MZ-V7S500B/IT)とCFD販売のPCIe 4.0対応SSD「CSSD-M2B1TPG3VNF」のベンチマークテストも行った。

CrystalDiskMark 7.0.0

 まず、ひよひよ氏制作の定番ベンチマークテスト「CrystalDiskMark 7.0.0」で基本性能を確認しよう。テストデータのサイズは「1GiB」で実行した。データタイプは標準の「Random」を利用している。

 シーケンシャルでは、リードとライト共に公称値に若干及ばないものの、公称値に近い数値を記録した。特にリードでは、PCIe 4.0 x4に対応しているCSSD-M2B1TPG3VNFも“ぶっちぎって”いる。

 特筆すべきは、ランダム4Kリードの値だ。毎秒86MBという値は、IOPSに変換すると2万2000となり、公称値と合致する。ライトとは異なり、リードの速度はバッファなどによるごまかしが効きにくい。それだけに、ランダムアクセスではこのアドバンテージは貴重といえる。

ATTO Disk Benchmark 4.01

 続いて、「ATTO Disk Benchmark 4.01」を使ってブロックサイズ別のシーケンシャルリード性能を見てみよう。

 980 PROはリード時に256K〜512KBでほぼピーク性能に達し、スコアは毎秒6.41GBが最高となる。公称の毎秒6.9GBよりも若干低いが、それでもCSSD-M2B1TPG3VNFの毎秒5.24GBよりは大幅に良い値だ。

 一方、ライト時は64KBが性能的なピークで、スコアはほぼ公称値の毎秒4.94GBとなった。しかし、より大きなサイズではスコアが少し落ち込み、毎秒4.55GBで安定する。これもCSSD-M2B1TPG3VNFのピークスコア(毎秒3.97GB)確実に上回る優秀なスコアとなる。

 980 PROとCSSD-M2B1TPG3VNFを比べると、980 PROはリード、ライト共に極小ブロックサイズから大きなブロックサイズまで全域に渡って良いスコアをマークしている点も特筆できる。第6世代V-NANDの素の性能はもちろん、メモリコントローラーも優秀であることが伺いしれる。

HD Tune Pro 5.75

 次は、「HD Tune Pro 5.75」のTransfer Benchmarkにおいてテストサイズを「200GB」に設定し、980 PROのデータ転送速度の推移を確認してみよう。

 シーケンシャルライトに注目すると、開始直後から毎秒4000MB前後で推移している。しかし、転送容量がIntelligent Turbo Write 2.0の最大SLCバッファ容量(94GB)を超えた辺りで転送速度が急落。その後は毎秒800M〜900MBで推移する。これはレビュワーズガイドで公開されているIntelligent Turbo Writeの仕様とほぼ合致する挙動だ。

 一方、リードのスコアが“暴れている”ことは気になる。リードテストはライトテストの後で実行されるため、当初はサーマルスロットリング(過剰発熱による性能抑制)を疑ったが、至近距離に追加ファンを設置するなど冷却を強化しても傾向に違いが見られなかった。恐らく、テストとの「相性」に起因する現象だろう。

PCMark 10(Storage)

 PCの総合性能を計測する「PCMark 10」では、システムドライブのアクセスパターンをトレースする「Full System Drive Benchmark」を実行した。

 このテストでは、OSの起動、Adobeのクリエイティブアプリの起動、「BattleField V」を始めとするゲームの起動、「Microsoft Office」の起動……といった、さまざまな「起動」にまつわるドライブアクセスはもちろん、JPEGイメージやISOファイルのコピーなど、日常利用で考えられるさまざまなドライブアクセスのパターンをテストできる。

 結果は、980 PROの圧勝。970 EVO Plusには53%の大差を付け、CSSD-M2B1TPG3VNFにも16%の差を付けている。

●発熱は970 EVO Plusより控え目

 最後に、SSDの発熱をチェックしてみよう。

 HD Tune Pro 5.75のTransfer Benchmarkの実行中の温度を「HWiNFO 64」で計測した。ここでは、マザーボードに付属のヒートシンクを取り付けた状態と取り外した状態の両方をチェックしている。

 コントローラーのプロセスルールが進化し、NANDフラッシュメモリも新世代になった効果か、980PROは970 EVO Plusよりも全体に温度は低く推移している。

 デスクトップPCではマザーボードに付属しているヒートシンクや単体で市販されているヒートシンクを使えばすむことなので多少発熱があってもたいした問題にはならないが、発熱は低いに越したことはない。ノートPCなど、排熱上の制約が多いPCにも実装しやすくなったといえるだろう。

●最有力のハイパフォーマンスSSD

 980 PROの性能は、公称値が示すように極めて優秀だった。

 単にシーケンシャルリード/ライトが速いだけでなく、ランダム性能も高速である。PCIe 4.0対応SSDの中でも、ひときわ光る性能を示している。

 店頭予想価格(税別)は、250GBモデルが9980円前後、500GBモデルが1万5980円前後、1TBモデルが2万4980円前後とされている。価格的にも競争力は十分だ。

 これまでの製品で積み上げてきたブランドの信頼感と合わせて、これからのSSDとして“最有力”の製品といえる。