アマゾンジャパン(Amazon)が、7型タブレット端末「Fire 7」の第12世代モデルを発売した。同社のECサイト「Amazon.co.jp」における税込み販売価格は6980円と、“新品の”タブレット端末としては最安クラスである。

 この記事では、新しいFire 7を同社の電子書籍サービス「Kindle(キンドル)」と組み合わせて使ってみた使用感をレポートしたいと思う。

●持ち歩きにも便利なコンパクトタブレット

 Amazonオリジナルの「Fireタブレット」には7型、8型、10型の3種類の画面サイズが用意されている。今回紹介するFire 7は7型モデルで、シリーズで最も小型かつ低価格な“入門モデル”という位置付けにある

 ディスプレイは約7型の液晶で、解像度は1024×600ピクセルとなる。アスペクト比(縦横比)は約16:10と動画の再生に適したものを採用しているが、縦向きで使うと多くのマンガの単行本において1ページを無駄なく表示できるようになっている。

 Fire 7の純正オプションとして、手帳型のカバーケースが用意されている。Amazon.co.jpでの税込み販売価格は2980円だ。

 閉じた状態で画面と背面の両方を保護できる設計で、横向きはもちろん縦向きでも使えるスタンド機能も有している。特に動画視聴が多い人なら、一緒に買って損はない。

●動きはサクサク……とは言いがたい

 Fire 7のOSは、Androidベースの「Fire OS」を搭載する。あくまでも“ベース”なので「Google Playストア」は利用できないが、その代わりにAmazon独自の「Amazonアプリストア」からアプリをダウンロードして利用可能だ。

 アプリストアには「Twitter」「Instagram」といったSNSアプリ、「Microsoft Office」を始めとするオフィス(ビジネス)アプリや「Netflix」など動画アプリも充実している。主な実用アプリであれば、一般的な(Google Playストアに対応する)Androidタブレットとほぼ同じ感覚で使える。

 ただし「Gmail」や「YouTube」など、GoogleのアプリはAmazonアプリストアでは配信されていない。一部を除くサービスはWebブラウザからでも利用できるので、それで代替は可能だ。

 Fire タブレットはAmazonの音声エージェント「Amazon Alexa」のボイスコマンドに対応している。そのため、Alexa対応スマートスピーカーのように話しかけることによっていろいろな操作を行える。ただし、スマートディスプレイのように利用する「Showモード」には対応していないので注意しよう。

 加えて、Alexa対応のスマート家電を1画面で制御できる「デバイスダッシュボード」機能も備えている。かなり便利なので、Alexa対応のスマート家電を持っている人なら「コントロール用タブレット」としてFire 7を用意する、ということを考えても良いかもしれない。

 ただ、Fire 7の全てが“バラ色”かというとそうでもない。特に気を付けたいのが処理パフォーマンスである。

 Fire 7は画面が小さいだけでなく、メインメモリは2GB、内蔵ストレージは16GBとスペックが本当の意味で“最小限”に抑えられている。低価格であることの裏返しだ。

 実際に使ってみると、Kindleのような電子書籍サービスや、Prime Videoのような動画配信サービスといった「一度ダウンロードしてしまえば、後は多くの操作を必要としない」タイプのアプリは十分に快適だ。必要に応じてmicroSDメモリーカード(最大1TB)も増設できるので、ストック型のデジタルコンテンツを楽しむ分には問題ない。

 一方で、ホーム画面の操作を含め、アプリを切り替えてサクサクと閲覧するというのは難しい。また、Webブラウザのように「細かな通信や表示切り替えが連続して発生するアプリ」は快適とは言いがたい状況だった。細かい通信が入るアプリを多用する場合は、メインメモリがより多い上位モデルを使った方が快適だろう。

●前世代からどこが変わった?

 新しいFire 7(第12世代)の前世代に相当するのは、2019年発売の「Fire 7(第9世代)」だ。タブレットとしての想定用途には大きな変化はないが、プロセッサやOSの刷新によって着実にパフォーマンスは良くなっている。

 新モデルのプロセッサはMediaTekの「MT8168V/B」(CPU部は4コアで最大2.0GHz駆動)を搭載し、メインメモリは2GBと従来モデルから“倍増”している。Amazonによると、これによって処理速度は最大30%高速化しているという。ただし、用途によっては力不足を感じる場合があるのは先述の通りだ。

 バッテリー駆動時間は最大10時間で、先代の約4割増しである。この他にも、無線LANにおいて新たに「Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)」をサポートした。OSはAndroid 11ベースの「Fire OS 8」となった。

 使い勝手で大きな影響がありそうなのは、USB Type-C端子の搭載だろう。最近のスマートフォンやKindleの上位モデルと共通の端子形状となったことで、充電器(ACアダプター)の使い回しがしやすくなっている。

 地味だが、インカメラも横向きで持った際に上部の中央に来るよう位置に移設された。ビデオ通話が使いやすくなる変更といえるだろう。

●電子書籍リーダとしての実力は? Kindle Paperwhiteと比べてみる

 新しいFire 7は、電子書籍リーダーとして便利に使えるのだろうか。Amazonは電子書籍リーダー「Kindleシリーズ」も販売している。今回はミドルレンジモデルの「Kindle Paperwhite」と比較しつつ検証してみようと思う。

 Kindle Paperwhiteと比べると、Fire 7には「カラー表示」と「microSDメモリーカード対応」の2点で大きなメリットがある。

 Paperwhiteを含めて、Kindleシリーズは電子書籍が白黒で表示されてしまう。Fire 7なら、マンガのフルカラーページを単行本に近いサイズ感で楽しめる。加えて、microSDメモリーカードで保存領域を拡張できるので、より多くの電子書籍をストック可能だ。計算上は、1TBのmicroSDXCを搭載すると約2万冊保存できる。

 Fire 7の“サイズ感”も絶妙だ。ボディーサイズは約181(幅)×118(高さ)×9.7(厚さ)mmと、新書やコミックの単行本の寸法に近い。片手で持って操作する際も取り回しやすい。

 画面の額縁(ベゼル)は実寸で約11〜13mmと太い。そのため、電子書籍の表示領域は小さめになってしまう。だが、この額縁が電子書籍を読む時には便利なこともある。片手持ちで本を読む時にはベゼルが「余白」として機能するため、親指を休ませておけるのだ。

 ただし、重量には注意を要する。Fire 7は約282gと、画面サイズの割に重めである。純正カバーを装着すると、合計で約417gという重さになる。

 また、Kindle Paperwhiteのような電子ペーパー(E Ink)を備える電子書籍リーダーと比べると、画面の粗さはどうしても目立つ。

 Fire 7のIPS液晶ディスプレイの画素密度は171ppiで、iPadで例えるなら2013年発売の初代「iPad mini」の163ppiに近い。マンガを1ページ表示して吹き出しを読む分には十分な解像感を備えているが、雑誌や新聞(紙面表示)で本文を読みたいなら1ページずつ、しかも拡大しながらでないと厳しい面があるかもしれない。

 E Ink搭載のKindleシリーズは、日中の日差しが強い場所での読みやすさが強みである。その点、IPSパネルとはいえ液晶ディスプレイを採用するFire 7は、屋外での視認性にどうしても弱みがある。表示方式の違いもあるせいか、目にかかる負担もFire 7の方が大きいように感じる。

 電子書籍リーダーとしてFire 7を見てみると、カラー表示できることは明確な強みではある一方で、画面の見やすさでは劣る面がある。本来はE Ink搭載端末よりも優れているはずのタッチ操作の反応速度も、プロセッサのパワー不足により“ヌルヌルさ”を体感できるとは言いがたい状況にある。

 ただし、Fire 7は税込み価格が6980円と、数あるタブレット端末の中でも最安クラスの価格の製品となっている。マンガを読むために“ついで買い”しても、十分に元を取れるだろう。

 Fire 7のほど良いサイズ感は、マンガを読むのにぴったりだ。単体でも電子書籍端末として使えるが、電子ペーパー搭載のKindle デバイスと組み合わせも良さそうだ。例えば、マンガを読み進める中でカラーページをブックマークしておいて、カラーページだけ後でFire 7で確認するという使い方が考えられる。

 電子書籍端末として十分に生かせなかったとしても、Fire 7ならベッドサイドの動画専用機にしたり、Alexa対応のスマートディスプレイにするなど「第2の用途」が考えられる。使い勝手の選択肢の広さもまた魅力といえる。