ONYX Internatinalから、E Ink搭載のAndroidタブレット「BOOX Tab Ultra」が登場した。一般的なAndroidタブレットと違ってE Ink電子ペーパーを採用することから目に優しく、Google Play ストア対応でさまざまなAndroidアプリを利用できる優れモノだ。

→・ONYX、高速レスポンスを実現した10.3型Android電子書籍リーダー

 BOOXシリーズのフラッグシップモデルに相当する今回のBOOX Tab Ultraは、本体のポゴピンを用いて専用キーボード付きケース「BOOX Tab Ultra キーボード付ケース」と接続できる。iPadによく似たこの仕組みを使えば、テキスト入力専用機として活用できるというわけだ。国内代理店のSKTから機材を借用したので、試用レポートをお届けする。

●E Inkタブレットのフラッグシップモデル 快適に使うコツは?

 「BOOX」は、E Ink電子ペーパーを採用したONYX社製タブレットもしくはモバイルディスプレイの総称で、今回のBOOX Tab Ultraはタブレットのフラッグシップモデルに相当する。画面サイズは10.3型で、厚みや重量はiPadとよく似ている。ベゼルは一辺だけが幅があり、握りやすいよう工夫されている。

 そんな本製品の最大の売りは、Google Playストアに対応し、任意のAndroidアプリを利用できることだ。E Ink電子ペーパーを採用したタブレットは、ベースがAndroidであってもGoogle Playストアには非対応であることが多いので、本製品の大きな利点ということになる。

 もっとも、カラー画面向けに設計されたAndroidアプリをモノクロで表示しようとすると、色分けされている部分の区別がつかなくなったり、濃淡の加減によって文字が見えなくなったりといった問題が起こる。

 そのためこのBOOXでは、アプリ単位で表示を最適化できる機能が用意されている。この機能を使えば、濃度を調整するなどの細かなチューニングを行える。これによって、本来カラー向けに設計されたアプリであっても、モノクロのE Ink電子ペーパー上で快適に利用可能だ。

 さらにE Inkにつきものの画面のリフレッシュも、複数のモードを用意する。例えば電子書籍のようにページ単位で画面を書き替えるアプリは、クオリティーを優先したHDモードが適切だし、ブラウザのように表示を保ったままページを上下にスクロールさせるアプリは、高速モードに切り替えるといった具合だ。

 つまりアプリや内容に応じて、画質を優先するか、動きを優先するか、あるいはその中間を取るかといった、挙動を細かく設定できるわけだ。逆に言うと、これらを適切に設定しなければ、本来快適に動くはずのアプリを、イマイチな状態のまま使い続けることになる可能性も十分にある。一般的な液晶タブレットと違ってやや手間はかかるが、自分好みに調整できるのはよい。

 続いて、オプションのBOOX Tab Ultra キーボード付ケースを見ていこう。

●保護ケースと一体になったキーボード 配列はUSタイプ

 ざっと基本的な使い方を把握した上で、本題の専用キーボード付きケースについて見ていこう。

 専用キーボード付きケースは本体とマグネットで吸着する仕組みで、ポゴピンを経由して信号のやりとりおよび給電を行う。これらの仕組みは、iPadや日本マイクロソフトの「Surface」シリーズとよく似ている。キックスタンドを搭載したSurfaceのように角度の調節はできないが、そのぶん安定性は高く、機動性もある。

 キーボードはUS配列で、キーピッチは実測17.5mmだった。標準的な19mmには及ばないが、キー幅が狭いのは端のキーのみということもあり、押しづらさは感じない。アイソレーションキーはきちんと沈み込みがあり、キータッチも良好だ。iPad向けの純正キーボードでいうと「Smart Keyboard Folio」よりも「Magic Keyboard」に近い。

 本製品には、ペンで手書きメモを取るためのノートアプリなど複数のアプリがプリインストールされているが、テキストエディタは含まれていない。そのためGoogle ドキュメントやGoogle Keepなど、好みのテキストエディタを導入して利用することになる。

 また本製品は、Onyxキーボードという独自IMEがインストールされており、最近のバージョンアップで日本語入力にも対応したのだが、漢字の変換方法などに非常にクセがあり、ハードウェアキーボードと組み合わせた入力にはあまり適していない。

 そのためIMEについても、GboardなどAndroid向けの一般的なIMEをインストールして使用することになる。E Inkとの相性から、あらゆるIMEが問題なく使えるとは限らないが、好みのテキストエディタやIMEを導入できるのは、Google Playストアを使える本製品ならではだ。

 それでは、BOOX Tab Ultra キーボード付ケースを取り付けて、テキスト入力専用マシンとして使って見よう。

●快適な入力は最適化設定がカギ

 テキストエディタおよびIMEの準備が整ったら、早速入力してみよう。E Ink電子ペーパーだからといって特に使い方が異なるわけではなく、一般的なノートPCやタブレットと同じように使えばよい。カーソルを移動するには画面をタップすればよいが、Bluetoothマウスを使うことも可能だ。ちなみに、英語と日本語の切り替えは「Ctrl」+「Shift」キーで行う。

 ここでポイントになるのは、前述のリフレッシュモードの設定だ。テキストエディタを使って文字入力を行う際、モードが画質優先の「HD」になっていると、文字を入力するたびに画面にリフレッシュされてしまい、使い物にならない。

 こうした場合は、リフレッシュモードを「HD」から、スピード重視の「高速」に変更する。こちらであれば多少の残像は残るものの、不要なところで画面がリフレッシュされて注意力を削がれることもなくなる。

 この他、文字がかすれて見えたり、背景色が薄くて見づらく感じたりする場合も、やはりこのE Ink設定で調整を行う。正解は1つではなく試行錯誤することになるが、ほとんどの項目はこのE Ink設定の中にまとめられているので、根気よく調整するとよいだろう。

 ちなみに、本製品は独自の高速化技術を搭載しているためか、タイピングにきちんと画面の書き替えが(高速モードであれば)追従し、漢字変換でもモタつきがほとんどない。E Ink電子ペーパーとは思えないレスポンスの速さだ。

 もちろん、一般的なPCなどでのテキスト入力に比べると遅延はゼロではないが、タイピングの速度がそこそこ高速なユーザーでも、不満は感じないはずだ。JIS配列に慣れたユーザーがUS配列を利用する戸惑いの方が、むしろ大きいかもしれない。

●外出時に持ち出すテキスト入力マシンに最適

 以上のように本製品は、E Ink採用のタブレットでありながら、キーボードを組み合わせることによって、快適なテキスト入力が行える。外出時に持ち出すテキスト入力マシンとしての利用も現実的だ。直射日光下でも見やすいE Inkゆえ、日当たりのよいカフェなどでの利用にも向くだろう。

 逆にマイナスポイントはないだろうか。キーボードがUS配列であることや、最適化の設定に少なからず手間がかかるのは先に述べた通りだが、後はキーボードと合わせた重量(実測で914g)と、税込み価格(本体9万9800円+専用キーボード付きケース1万7800円)が挙げられる。このあたりの折り合いがつくかどうかだろう。

 今回紹介したキーボード機能以外にも、電子書籍を読むためのデバイスとして、また手書きに対応した電子ノートとしての使い勝手も良好だ。テキストエディタとして本製品を購入するのはややオーバーでも、電子書籍や電子ノートといった機能に魅力を感じて購入するのであれば、この専用キーボード付きケースもぜひ試してみてほしい。