「ROG Zephyrus Duo 16」(2023)は、ASUS JAPANのゲーミングブランド「ROG」シリーズに属するプレミアムな2画面ゲーミングノートPCだ。
2023年の最新モデルとなる「ROG Zephyrus Duo 16 GX650PY」は、CPUにAMD Ryzen 9 7945HX、GPUにNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptopを搭載することで、ゲーミングノートPCとして最高峰のパフォーマンスと、2画面という付加価値を備えた唯一無二のプレミアムモデルとなっている。実機を入手したので、早速レビューしていこう。
●インパクト抜群のプレミアムなビジュアル
ボディーはずっしりとした重厚感があり、まるで石のように固く、密度が詰まった感触だ。液晶ディスプレイは比較的シンプルなデザインながら、ディテールに凝っていて実に高級感がある。
液晶ディスプレイを開くと、16型の大きな画面とともにキーボードの奥がスライドして14型のサブ画面がせり上がり、「シースルーウインドウ」と呼ばれる飾り窓が現れる。キートップ単位で発光が制御可能なRGBイルミネートキーボードもひときわ鮮やかで、ビジュアルのインパクトは抜群だ。
サブ画面を支えるフレームも非常に剛性が高く、強度的な不安は全く感じない。
●派手なイルミネーションを楽しめるキーボードはタイプ感も良好
キーボードは英字配列で、右側にタッチパッドを備えている。キーピッチは実測で19mm、キーストロークは1.7mmだ。
キートップはしっかりとした素材でスイッチの感触も良く、タイプ感は良好で静音性も高い。
パームレストは省かれているが、それを補うためにラバー製のアームレストが付属している。しっかりとした重みとグリップ力があり、安定感は十分だ。これを使えばより快適なタイピングが可能である。
タッチパッドにはLEDで浮かび上がるテンキー「NumberPad」を搭載し、数値入力もスマートに行える。
続いて、インタフェース回りを見ていこう。
●プレミアムモデルとしてスキのない装備
ボディーのサイズは、約355(幅)×265.9(奥行き)×30(高さ)mm、重量は約2.69kgだ。
バッテリー容量は90Whで、公称の駆動時間は約4.5時間(JEITAバッテリ動作時間測定法Ver.2.0)となる。合計で30型の2画面に加えて、モンスタークラスの基本スペックを搭載するだけに駆動時間が短いのは仕方がないところだろう。
標準で付属するACアダプターも330Wと大出力で、かなり大型なため重量も1kg以上ある。これを持ち運ぶのは厳しいが、本製品は別途USB PD(Power Delivery)に対応するType-C(USB 3.2 Gen 2)ポートを備えているため、USB PD対応のACアダプターやモバイルバッテリーなどを利用できる。
通信機能も、2.5GBASE-T対応の有線LANとWi-Fi 6E対応の無線LAN、そしてBluetooth 5.1を標準で装備する。画面上部には約207万画素のWebカメラと、Windows Hello対応顔認証カメラ、アレイマイクを内蔵しており、プレミアムモデルとしてスキのない内容だ。
●AMDのノートPC向け最高峰のRyzen 9 7945HXを搭載
CPUはAMD最新のRyzen 9 7945HXを搭載する。中途半端なモデルナンバーではあるが、CES 2023で発表されたばかりの最新CPUで、ノートPC向けのAMD Ryzenとしては最高峰に位置するモデルだ。
IntelのCore i9-13980HXに対抗する存在で、16コア32スレッドで最大周波数は5.4GHz、L3キャッシュ64MB(L2キャッシュとの合計80MB)という、並みのデスクトップPC向けハイエンドCPUをしのぐモンスタークラスの仕様を持つ。
メモリはDDR5-4800を32GB(16GB×2)で、ストレージはPCI Express 4.0 x4インタフェースのSSDを2TB内蔵する。ゲーミング向けとして文句のない内容だ。
次に、GPUや特徴的な2画面回りを確かめる。
●現行最強のNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop GPUを搭載
GPUはNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop(グラフィックスメモリは16GB)だ。こちらもNVIDIAのゲーミングノートPC向けとしては最高峰に位置するGPUで、リアルタイムレイトレーシングなど先進の技術を活用した高度なゲーム体験を楽しめる。
CPUとGPUを直結できる「MUXスイッチ」を搭載しているのも見逃せない。通常では「NVIDIA Advanced Optimus」が有効になっており、CPUの内蔵GPU(AMD Radeon 610M Graphics)経由で接続し、利用するアプリケーションごとに省電力な内蔵GPUとRTX 4090 Laptopを切り替えて使うようになっている。
Armoury CrateユーティリティーでGPUモードを「Ultimate」にした場合は、CPUとRTX 4090 Laptopが直結され、常にRTX 4090 Laptopのみが利用される。消費電力は上昇するが、GPUをスイッチするロスがなくなるため、ゲームや設定によってはさらなる性能の向上が見込める。
●メイン画面は16型のミニLED液晶ディスプレイ
メイン画面は「ROG NEBULA HDR」と呼ばれるハイスペックな16型ミニLED液晶ディスプレイを搭載している。アスペクト比は16:10で、画面解像度は2560×1600ピクセルだ。
ミニLED液晶ディスプレイは、極小サイズのLEDを細かいゾーン単位でバックライトに利用し、ゾーンごとに輝度制御(ローカルディミング)を行うことで、一般の液晶ディスプレイが苦手とする高度なコントラスト表現を行える。
本製品では、1024ゾーンのローカルディミング制御に対応し、コントラスト比10万:1、最大輝度は1100ニト、DCI-P3 100%の広色域をカバーする。VESAが定めるHDR向けディスプレイの基準の中でも、上位の「DisplayHDR 1000」に準拠するなどハイスペックな内容だ。カラーサイエンス大手のPANTONEによる色再現性の認証も取得している。
リフレッシュレートも通常の4倍の240Hz、応答速度も3msと高速で、残像感のない滑らかな表示が可能だ。FPSや格闘タイトルなど、一瞬の動きや反応の見極めが勝負を分けるゲームも有利な条件でプレイできる。
●14型で3840×1100ピクセル表示のサブ画面を用意
サブ画面は14型の液晶ディスプレイで、画面解像度は最大3840×1100ピクセル表示に対応する。リフレッシュレートは60Hz、表面は光沢仕上げでタッチ操作も可能だ。輝度は公開されていないが、目視の印象では、メイン画面にも劣らない明るさと鮮やかさがある。
OS上では通常のデュアルディスプレイとして認識されており、一般的なデュアルディスプレイ環境と同じように活用可能だ。Windows 11ではウインドウを簡単に整列できるため、2画面を持て余すことなく利用しやすくなっている。
変則的なアスペクト比ながら縦のサイズは実測で約10cmある。3分の1サイズのウインドウにChromeを配置してYouTubeで再生した16:9の動画コンテンツは、横方向が約8cm、縦方向が約7cmあるので、あまり視力が良くない筆者でも無理なくテロップを視認できた。
チュートリアル動画を表示させながらの学習、ゲームをしながら配信ツールでの配信、ビデオ会議をしながらの事務作業、スポーツ中継を見ながらチャット、仕事をしながらのエンタメ動画のながら視聴といったことも快適にできる。
また、従来の2画面機同様、独自の機能も導入されており、画面間のウインドウ移動や整列をスムースに行うためのガイド機能や、サブ画面専用のミニアプリ(ランチャー/ショートカット/電卓/手書き入力パッド)などが用意されている。
なお、メイン画面よりも横の解像度が高く、ネイティブ解像度ではウインドウが両方の画面をまたぐと表示サイズが変わる。ちょうど同じ大きさになる拡大率設定も用意されておらず、画面をまたがるウインドウを同じ大きさでシームレスに表示するには、サブ画面の解像度を2560×734ピクセルに変更することが必要だ(操作した時にWindowsの設定画面への誘導したり、ユーティリティー内で変更したりする機能は用意されている)。
また、Windows 11ではタスクバーの位置を「下」以外に変更するためにはレジストリを編集する必要がある。OSの仕様なので仕方がないところだが、注意しておきたい。
それでは、ベンチマークテストで本機の実力を確認しよう。
●ベンチマークテストでハイレベルのゲーミング体験を実証
ベンチマークテストの結果を見よう。特に言及がない限り、Armoury Crateで選択できる動作モードは「Turbo」、GPUモードは「Ultimate」、Windows 11の電源設定は「最適なパフォーマンス」を選択している。
参考として、ハイエンドゲーミングノートPCの「ROG Strix SCAR 18 G834JY」と「ROG Zephyrus M16 GU604」のスコアも掲載した。いずれも2023年の最新モデルでNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop(グラフィックスメモリは16GB)を搭載している。
CPUの馬力がストレートに現れるCINEBENCH R23のCPUスコアは、29498ptsだった。Core i9-13980HX(Pコア8基16スレッド/Eコア16基16スレッド)を搭載するROG Strix SCAR 18のスコアに迫っており、本製品もまた、並のハイエンドデスクトップPCを軽く上回るモンスターモデルであることが分かる。
CPU、GPUの馬力を見るテストとして、Blender Benchmarkも見てみよう。CPUレンダリングでは3項目ともROG Strix SCAR 18を上回った一方、GPUレンダリングでは3項目ともわずかながらROG Strix SCAR 18にリードを許した。いずれにしても、実力が拮抗していることが分かる。
Fire Strike以外の3DMark、FINAL FANTASY XIV:暁月のフィナーレベンチマークでは、ROG Strix SCAR 18とは少し差があり、ROG Zephyrus M16 GU604に近いスコアとなっている。セカンド画面の影響かと思ったが、セカンド画面をオフにして計測してもほとんど差はなかった。
それでも超一流の性能であることには違いない。Far Cry 6では、2560×1600ピクセルの最高品質設定で、高解像度テクスチャ、DXR反射を含めた拡張設定を全て有効にしても最低フレームレートが80fps、さらにHDRを有効にしても最低フレームレート64fpsと、エクストリームな画質でのプレイを体験できるのは間違いないところだ。
最後に、動作音や発熱面をチェックしよう。
●発熱は気にならず動作モードを上手に活用したい
動作音については、Turboモードでは少々負荷に敏感な印象で、軽い負荷でもファンの音がすることがあり、高負荷時はかなり大きな音がする。パフォーマンスモードならばだいぶ緩和される。スコアは大きく下がらないため、常用するならば、パフォーマンスモードの方が良さそうだ。サイレントではゲームのパフォーマンスはかなり落ちるが、高負荷時も静音で利用できる。
発熱については、サブ画面の下あたりが一番熱があるが、キーボードのホームポジションは体温以下だ。本機はパームレスト部分がないので、パームレストの発熱が気になることもない。
●唯一無二の付加価値を備えたプレミアムノートPC
ASUS JAPANの直販サイト「ASUS Store」での本機の販売価格は税込み65万9000円だ。非常に高価ではあるが、内容からは想定の範囲内といえる。
AMD Ryzen 9 7945HXと、NVIDIA GeForce RTX 4090 Laptopによるハイパフォーマンスに加えて、プレミアムなビジュアル演出、そしてミニLEDバックライトのハイスペックディスプレイを含めた合計30型の2画面をケーブルレスで利用きる付加価値を考えれば、この価格も仕方がないところだろう。
派手なビジュアルだが、2画面の使い勝手の良さは年々アップしており、実用性は十分だ。本製品の開発で培われたノウハウは、普及モデルにもフィードバックされていくことだろう。
こうしたフラッグシップクラスの製品はテクノロジーのデモンストレーションとしての役割も強い。本製品はキーボードを英字配列のままリリースしていることもあり、おそらく国内での販売数は少ないと思われる。この価格を出せるのであれば、他人とは違う希少なプレミアムPCをゲットできるチャンスといえる。