LGエレクトロニクス・ジャパンから、ユニークなディスプレイ「27QP88D-B2」が2022年に発表された。その大きな特徴が、2つの液晶ディスプレイを上下/左右に組み合わせて使え、必要なパーツが一通りそろっていることだ。
ディスプレイを横に2枚並べられるのはもちろん、「横+縦」であったり、「縦+縦」であったり、上下に「横+横」という構成も選べるのが面白い。
ここでは、このユニークな製品について見ていくが、現時点では国内で発表はされているものの、いまだ発売は行われていないので注意したい。ちなみに、米国での価格は799.99ドル(約10万5000円)だ。
●27型の液晶ディスプレイにアームなど豊富な付属品
先ほど触れた通り、27QP88D-B2は最初から27型の液晶ディスプレイ2台とアームやマウント、接続に必要なケーブルがセットになっている。
利用するまでの手順は、アームにあるクランプを使って机に固定し、縦アームの先へ横アームを取り付け、そこに2つのディスプレイを装着する。横に2つのディスプレイを並べた際の本体サイズは大きく、アームを取り付けた場合は約1226(幅)×612(高さ)×590(奥行き)mm、重量も約17kg(アームなどを省くと約9.5kg)とかなり重い。ただ、クランプは大きめなので机にしっかり止めれば問題ないだろう。
使われている2台のディスプレイのスペックは共通で、画面解像度はWQHD(2560×1440ピクセル)だ。ディスプレイはノングレアでIPS方式のパネルを採用しており、視野角は上下/左右178度で、コントラスト比は最大1000:1、sRGBで99%の色域をカバーする。輝度は350ニトで、応答速度はGtoGで5ミリ秒だ。リフレッシュレートは最高75Hzだが、デイジーチェーンで接続している場合は60Hzとなる。また、HDRおよびAMD FreeSyncもサポートする。
ディスプレイとPCとの接続だが、それぞれのディスプレイを1台ずつHDMIもしくはDisplayPortでつなぐ方法もあるが、本製品はDisplayPortによるデイジーチェーンでの接続もサポートしている。ディスプレイ背面にあるDisplayPort出力端子から、もう1台のDisplayPort入力端子にケーブルを接続し、そこからUSB Type-CまたはDisplayPortでPCと接続すれば、余計なケーブルを取り回す必要もなく、かさばらなくて済む。
ディスプレイの装着は簡単で、アームのディスプレイ装着部にある出っ張りを、100mm×100mmのVESAマウントも兼ねるくぼみに装着するだけで固定できる。爪で固定されているだけなので、ディスプレイ側にあるボタンを押せば簡単に外れる。
●2台のWQGAディスプレイをどうやって並べる?
このように自由にディスプレイを配置できるとなると、いろいろな使い方が想定される。横+横ではウルトラワイドディスプレイのように使えるし、上下に連結(横+横)すれば株式のチャートなどを複数表示して参照することも可能だ。
逆に縦同士に連結(縦+縦)すれば2880×2560ピクセルと正方形に近い画面表示ができるし、横+縦では一方にWord、縦位置のディスプレイにWebブラウザを表示したり、横画面に画像/縦画面にレタッチソフトを配置したりして、画像の変化を確認しながら使える。
縦横に2つのディスプレイを配置して自由に扱える、本製品ならではの活用法が考えられる。下部を除く3辺が狭額縁なので、画面を並べた際にも気になりにくい。
なお横アームに取り付けられているディスプレイは90度回せるので、横+横、横+縦、縦+縦の組み合わせは自由自在だ。ディスプレイの位置はバーに取り付けられているスライダーを動かして調整し、六角ボルトで固定すればよい。
ただし横+横で上下に表示させる場合は、横アームを取り付け直す必要がある。ディスプレイの可動域は高さが上下150mm、手前と奥側に210mmとなっている。チルトは-30度〜35度で、左右にディスプレイを振るスイベルの角度としては-335度〜335度だ。
ディスプレイ自体は横に2つ取り付けた状態から90度倒立できるが、横アームのディスプレイ取り付け部は、ディスプレイが簡単に動かないようにかなり固くなっており、回転させるときには逆方向に回していないか注意しよう。
●見やすいOSDメニューを用意
OSDメニューは、ディスプレイ底面中央にあるスティックを押し込むことで表示される。そこから上下/左右にスティックを倒すと次のメニューが、そこからボタンを押し込むとその項目内のメニューが表示され、ボタンを押したあとに最終的な項目を選択し、決定する。
メニューはボタンを押し込むことで進んでいけるため直感的に操作可能だ。音量はスイッチを押さずに左右へ倒すショートカットでアクセスできる。ただし本製品はスピーカーを内蔵していないので、この場合は接続しているイヤフォンなどの音量調整となる。
本製品では、HDRや「鮮やか」「ブルーライト低減モード」といった画質に関わる設定は、トップメニューから手前にスティックを倒して表示される「ピクチャーモード」で決定する。同社の他モデルでは、設定メニューの中にピクチャーモードが存在するケースもあるが、これだと階層が深いので操作しづらい。本製品の場合はスティックを下に倒すことですぐにアクセスできるため操作しやすい。
広大な画面を扱えるのは魅力だが、単にディスプレイを2台使う形のため(デイジーチェーン接続できるものの)、背面はACアダプターやケーブルでかなりごちゃつくのは避けられない。
ケーブルなどの長さが足りるのか気になる人がいるかもしれないが、ACアダプターの延長ケーブルが実測で1.4mもあり、ACアダプターのケーブルが1.5m、電源ケーブルも1mあるので、ディスプレイの近くにコンセントがない場合でも問題なく使えるだろう。
なおUSB Type-C端子は最大65Wまでの電源を供給できるため、対応するノートPCをUSB Type-Cで接続した際にはノートPC用の電源アダプターは不要になる。
●オフィスへの導入や個人事業主であれば欲しい1台
これまで紹介してきたように、27QP88D-B2は2台のディスプレイを変幻自在に扱えるユニークな製品だ。クランプを取り付けられる机が必須で、それなりに広い設置場所が必要なため、家庭で自室がない場合は利用がやや厳しいかもしれないが、自宅で仕事をしているデイトレーダー、グラフなどを多用するコンサルティング業を営んでいる人であれば、見通しのよいディスプレイで気持ちよく仕事ができるだろう。
既にデュアルディスプレイを使っているという場合でも、27QP88D-B2にすればアームは1つで使えるので、机の上のスペースが空き、より広く利用できる。2画面を使って仕事をしているのなら、27QP88D-B2でディスプレイをまとめてしまうのも1つの手かもしれない。
いずれにせよ、国内での投入が待たれる製品ではある。