山崎真二(時事通信社元外信部長)

【まとめ】

・マドゥロ大統領、独裁傾向を強め、グアイド国会議長は地位を失う。

・キューバ、カストロ党第一書記が完全引退する見通し。

・中南米各国にとって経済の再建が2021年の最重要課題。

■独裁強めるマドゥロ政権にどう対応するか

2021年の中南米情勢ではまず、年明け早々ベネズエラの動向に大きな関心が集まる。同国では先ごろ、反米左翼のマドゥロ大統領が主要野党のボイコット表明を無視し、国会議員選挙を強行。与党側が国会で圧倒的多数を占めことになった。

この結果、マドゥロ大統領は国会を含め全権を掌握、独裁傾向を一段と強める見通しである。これまで欧米各国から「暫定大統領」として認められていたグアイド国会議長は新国会発足の1月5日をもってその地位を失い、政治的影響力が低下するのは必至。

マドゥロ大統領は米国に対し対話を呼びかけているが、1月20日にスタートするバイデン次期米政権は早速、その手腕を問われることになる。マドゥロ政権が米国の経済制裁や国内経済の疲弊にもかかわらず持ちこたえている大きな要因の一つはキューバの支援だ。

このキューバに対しバイデン次期大統領がトランプ政権の強硬方針から転換するとの見方が有力だが、ベネズエラ情勢やキューバの人権問題などからみて、そう簡単にコトは進まないだろう。

キューバでは4月に第8回共産党大会が開催され、実質的に最高権力を握る共産党トップのラウル・カストロ党第一書記(故フィデル・カストロ氏の弟)が完全引退する見通し。後任になると予想されるディアスカネル氏(大統領)の下で政治・経済改革が進められるかどうかも、今後の米・キューバ関係の行方を占う重要なカギになろう。

▲写真 プーチン大統領と握手を交わすラウル・カストロ党第一書記(左) 出典:ロシア大統領府

■米・ブラジル関係は悪化か、南米3国の大統領選も注目

中南米の大国ブラジルと米国の関係には変化が起きそうだ。“ブラジルのトランプ”との異名をとるほど、トランプ大統領との親和性が高かったボルソナロ・ブラジル大統領だが、「バイデン次期米大統領とのケミストリーは最悪」(ブラジル有力メディア)ともいわれるほど、この二人の指導者の政治姿勢の相違が目立つ。

気候変動対策を重視するバイデン氏がブラジルのアマゾン熱帯雨林伐採の加速化を批判する発言を繰り返したのに対し、ボルソナロ大統領は猛反発しており、この問題を皮切りに両国関係の悪化を予想する声が中南米メディアの間で広がっている。

もう一つの中南米の大国メキシコと米国の関係は、「国境の壁」建設を含めトランプ政権の強硬な移民対策の撤回をバイデン氏が表明していることから、基本的には安定化する見通しだ。一方、南米の主要3カ国で予定される大統領選も注目される。2月7日にエクアドルで、モレノ大統領の任期切れに伴う大統領選がある。若手エコノミスト、保守系の有力実業家、先住民出身政治家の三つ巴の戦いになりそう。

▲写真 「国境の壁」建設現場 出典:The White House

4月11日には、政治混乱が続くペルーで大統領選が予定される。同国では新型コロナによる経済の悪化が拡大したにもかかわらず、大統領がころころと変わるという異常事態が発生。今度の大統領選には元大統領や元国会議員など20人が出馬を表明している。

現地のメディアによれば、元サッカー選手の若手政治家が支持率でトップに立っており、政治不信が深まる中、清新な政治家を求める傾向が強まっている。

チリでは11月21日に大統領選が実施されるが、まだ、どのような人物が有力候補として出馬するかは不透明。11月には中米のニカラグアとホンジュラスでも大統領選が予定される。ペルーの名門カトリカ大の政治学者は「今度の中南米の選挙ではポピュリスト(大衆迎合主義者)もしくは社会主義的傾向の強い政治家が、新型コロナで大きな打撃を受けた低中所得者層の支持を得て躍進する可能性が強い」と指摘する。

実際、新型コロナの影響で中南米経済は大きなダメージを受けており、国連のラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は2020年の同地域全体の国内総生産(GDP)成長率についてマイナス7・7%と推計、域内の貧困層が4500万人増加すると予測している。中南米各国にとって経済の再建が2021年の最重要課題になるのは間違いない。

(了)

トップ写真:マドゥロ大統領 出典:Flickr; Presidencia El Salvador