コーポレートガバナンスの権威として知られる久保利弁護士は、「株式の過半を握っていれば何でもできる、というわけではない。世界でも稀な日本の親子上場(親会社と子会社がともに上場企業であるケース)は非常に大きな問題を抱えている」と語った。

「ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた」

 記者会見での質疑応答は以下の通り。

——今回のアスクルとヤフーの一件で一番の問題は何か。

戸田氏 「自分は一体、何をやってきたのか」ということだ。アスクルの独立取締役、指名委員会の委員長として一生懸命ガバナンスをやってきたのに、土壇場でゴロッと変わってしまう。

久保利氏 ガバナンスは日本の資本市場を機能させる上で大変重要だが、世界でも稀な日本の親子上場、多層上場は果たして合理的なのか。1つの会社の資産を二重三重に勘定する仕組みでもあり、非常に多くの問題を抱えたスタイルだと思う。私はJPX(日本証券取引所)の社外取締役でもあるので、この問題を座視する訳にはいかない。

松山氏 支配株主の義務とは何かという問題だ。(業績不振などの場合)株主には取締役を交代させる権利がある。だが今回のように、事前には一声も上げず、株主総会の招集通知案内が印刷の校了を迎える1週間前になって、突然「トップには辞めてもらう。後任は好きに選べ」という姿勢には問題がある。

——今回、ヤフーから社長の退任要求があったことで親子上場が問題視されたが、その前に「親子上場には問題がある」とは考えなかったのか。

戸田氏 正直に言うと(支配株主としての権利を乱用しない)最低限のモラルが(ヤフーには)あるものだと過信していた。(取締役会や独立委員会などで)親子上場の問題点については何度か議論をしたこともあるが、性善説にぶら下がりすぎたと反省している。

——株主総会でヤフーから派遣されているアスクル取締役2名を候補者から外す考えはないか。

戸田氏 一昨年まで、ヤフーとアスクルは非常にうまくいっていた。イコール・パートナーシップの一番いい例ではないかと思えたほどだ。ヤフーから派遣されている二人の取締役も非常によくやってくれていて、感謝の気持ちがあった。それがこんなことになるとは、という思いだ。

安本氏 アスクルの生みの親であるプラスの今泉公二社長が、岩田氏の取締役選任を否決すると聞いた時には、非常にがっかりした。もう少し長い目で見て欲しかった。

(大西 康之)