伊東 乾(東京大学大学院情報学環)、八塚 友紀(東京大学客員研究員・オーストラリア公認会計士補)

 いまや、フェイスブックの「リブラ(Libra)」提案はグローバル金融の台風の目になりつつある。目そのものは静かだが、周囲には大変な嵐が巻き起こっているという含意である。

 フェイスブックによるリブラの提案は6月8〜9日に開催されたG20福岡・蔵相中央銀行総裁会議と6月28〜29日のG20大阪サミットの中間にあたる6月18日に公表された。

 前稿(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56866)はその直後に準備したが、G20終了と前後して世界各地から注目すべき反響が出始めている。

 私たちはこの連載で、米ハーバード大学ケネディ校などと年来準備してきたこの問題に関する本質的な対案、「中曾=岩井の中央銀行公共性」条件をクリアした私たちの「ポスト・ブロックチェーン」システムを紹介したい。

 それに先立って各国からのいくつかの反応を確認して、本質的問題の所在を明確化しておこう。

1 G7蔵相・中央銀行総裁会議の無策

 7月17〜18日にフランスのシャンティイで開かれたG7蔵相中央銀行総裁会議では「ステーブルコイン」のリスクを確認したとの表明がなされた。だが、ここでも踏み込んだ対案が示されることがなかった。 

 フランスのブルーノ・ルメール蔵相は「フェイスブックは何十億人という人々をカバーしており、いま提案されているコインには通常の規則とコントロールを欠く形で法定通貨の属性が付与されてしまう」と危惧の念を示す。

 ただし「通常の規制」や「コントロール」が何に相当するかは必ずしも明示されない。

 また、フランス出身で欧州中央銀行のエコノミスト、ブノア・クーレが率いるG7はステーブルコインのチェック項目として

1 最高度の規制と慎重な監督
2 法源の明示と利用者の保護

3 システムの逆境耐久性(レジリエンス)
4 安全で透明な理財

 の4点を挙げる。だがこれもまた、いずれもいまだスローガンにとどまり、具体的な対案の提出が望まれる。