このところ、希望退職を募る大手企業が急増しており、東京商工リサーチの調べによると、2019年11月までに上場企業のうち36社が大規模な希望退職を実施している。具体的にはルネサスエレクトロニクス(1500人)、東芝(1410人)、ジャパンディスプレイ(1200人)など業績不振の企業が多いが、アステラス製薬やカシオ計算機、キリンホールディングスなど業績が好調な業界でも、賃金が高い中高年層を対象に人員整理に踏み込むところが増えている。高い年収だった人が会社を辞め、別の会社に転職することで賃金が下がった可能性がある。

 退職とまではいかなくても、基準年齢に達した段階で、一定以上の役職に就いていない人を管理職から外す、いわゆる役職定年を強化している企業は多い。この措置の対象となった社員は確実に年収が低下するので、これも賃金の引き下げ要因となる。

「米中の部分合意」はとりあえず朗報

 賃金が下がる要因はこれだけではない。2019年から働き方改革関連法が施行されており、一部の大企業では残業代が大幅にカットされた。残業代が生活費の一部になっていた労働者は、生活が苦しくなった可能性が高い。

 賃金の低下はすぐには経済には影響しないものだが、半年から1年程度の時間が経過すると消費に跳ね返ってくる。2019年に名目賃金が低下したという現実を考えると、2020年の消費には逆風が吹くと考えた方がよいだろう。ちなみに先ほどの残業規制は2020年からは中小企業に対しても適用開始となるため、さらに賃金が下がる可能性もある。

 困ったことに経団連が終身雇用の見直しに言及し始めており、2020年の春闘では、雇用の見直しが議論の対象となる可能性も出てきた。労働側としては、賃金よりも雇用維持の方が優先順位が高いので、春闘では大幅に妥協せざるを得ないかもしれない。

 もし2020年3月期の企業業績が予想以上に悪かった場合、賃金の伸び悩みが顕著となり、消費がさらに低迷する可能性について覚悟しておいた方がよいだろう。