JDIの菊岡稔社長は、いちごアセットマネジメントについて次の様に述べている。

「JDIの技術力を非常に評価してくれた。彼らは日本の会社が日本の技術を保持した上で立ち直って欲しいと考えており、投資する価値があると考えてくれたのではないか」(日本経済新聞2019年12月13日)

 いちごアセットマネジメントは、企業連合Suwaよりも信頼できるようであり、アップルともコミュニケーションを取っている。しかし、12月12日の記者会見には参加していないところを見ると、まだ流動的な面もありそうだ。

逃げられないINCJ

 そもそもJDIを立ち上げたのは、官民ファンドの(株)INCJ(前産業革新機構)である。第三者割当増資で2000億円を出資し、ソニー、東芝、日立の3社の中小型ディスプレイ事業を統合して設立した。

 JDIは、2014年3月19日に公募・売り出し価格は900円で東証一部に上場し、INCJは1674億円を回収した。しかし、その後に連帯保証等で、2018年にはJDI関連の支出残高は2146億円となった。更に、Suwaからの資金調達までのつなぎ資金として、2019年4月以降に200億円を3回追加支援し、支出残高は2746億円まで膨らんでいる。

 JDIが万が一にも倒産した場合、税金から支出したこの2746億円が吹っ飛んでしまう。INCJは、なんとしても倒産を避けなければならず、逃げられない立場にある。

JDIに起こった不祥事

 JDIは、2019年11月21日、経理担当の男性幹部が、2014年7月から2018年10月にかけて、会社の資金約5億7800万円を着服していたと発表した。2018年12月に幹部を懲戒解雇し、刑事告訴した。

 この幹部は、着服とは別に過去の決算について「不適切な会計処理をおこなっていた」と告げ、その理由は「経営陣から指示があった」と主張した。その後、この幹部は死亡している。死因は自殺とみられている。

 JDIは、2019年12月24日、特別調査委員会の調べで、過去の決算で在庫を累計で約100億円過大に資産計上し、その後に全額を取り崩した疑いがあると発表した。その調査の透明性を確保するために第三者委員会を立ち上げる。

 在庫の過大計上が疑われている時期などの詳しい内容を明らかにしていない。ただ、在庫の過大計上と取り崩しをセットで行うことから考えると、ある特定の時期のみ決算をよく見せたい、との理由と考えられる。

 東芝の会計不正においても、ある特定の時期のみ決算をよく見せる手口があった。

 東芝の歴代の3社長ら経営トップは、「チャレンジ」と呼ばれるプレッシャーを各事業部門にかけた。これを忖度して、部品の押し込みを実施し、見かけ上の利益をかさ上げした。その手口は、台湾のODM(委託先のブランドの製品を設計・開発・製造すること)において、ODM先への供給部品の価格と、完成品価格の支払時期の違いを利用した、見かけ上の一時的な利益のかさ上げの会計処理で、「Buy-Sell取引」と呼ばれるものだ。この結果、2008年6月頃から2015年3月期まで、四半期決算の発表月のみ営業利益が上がるが他時期は赤字と、一見して異常とわかる状態が続いていた。

 JDIでは、株式上場後に、公募時に公表した利益を短期間のうちに何度も下方修正したことによって株価が一方的に下落したことがあったが、これと関連しないことを祈りたい。