一方、近年の日本市場を見ると、他に類のないミニバン大国であり、また日本独自規格である軽自動車が市場の約4割を占めるという特異な状況となっている。そんな中、ユーザーからは、「そろそろミニバンや軽以外のクルマが欲しい」という市場変化を求める声が出始めてきた。そこに米中市場のSUVシフトが重なり、日本でもSUVシフトが起こり始めたと見るべきだろう。

 日本では、SUVが認知されてからまだ日が浅い。1990年代に三菱「パジェロ」などによって、いわゆるRV(リクリエーショナル・ヴィークル)ブームに沸いたことがあったが、SUVという言葉が一般化したのは2000年代半ば以降だ。その頃、筆者は富士重工業(当時)のスバル「フォレスター」の全国販売店社員向け資料動画に出演し、「アメリカで主流なSUVとはどんなクルマか?」を解説したことがある。あれから10年強が経ち、日本でようやく大きなSUVシフトが始まったというわけだ。

SUVブームは続くのか?

 日本でSUV市場の競争がにわかに激化しているが、そうした中でとくに目立つのが本格的4駆オフローダーSUVという分野だ。

 例えば、前述のランドローバー「ディフェンダー」やトヨタ「RAV4」、軽ではスズキ「ジムニー」。また、日本から撤退したフォードが24年ぶりにアメリカで復活させた「ブロンコ」への関心が、ネット情報などを通じて日本でも高まっている。

 ただし、こうした本格的4駆オフローダーSUVで過酷なオフロードを実際に走行するユーザーは日本では稀である。本格的なオフロード走行性能はもちろん大きな魅力だが、あくまでもファッションアイテムとして日常での街乗りに使うユーザーがほとんどだ。

 さらに、2000万〜3000万円クラスの富裕層向け超プレミアムSUVも人気が高い。ベントレー「ベンティガ」、ロールスロイス「カリナン」、ランボルギーニ「ウルス」に次いで、アストンマーティンやフェラーリもSUVに参入する。

 日本では、新型コロナウイルス感染の第1波による緊急事態宣言によって自動車市場は一気に冷え込んだが、緊急事態宣言解除後は市場の予想を上回るペースで自動車販売は回復している。とはいえ、新型コロナの終息はまだまだ見えず、長引くコロナ禍がボディブローのように消費者の懐を締め付ける可能性は否めない。現在、自動車業界はSUVブームに沸いているが、バブルのように短期に終わる危険性も否定できないだろう。

(桃田 健史)