指向性を持たせ、アップロード速度優先にカスタマイズ

「自営」の5Gは一般に「ローカル5G」と呼ばれている。ローカル5Gは、通信大手が展開中の5Gサービスとは別に、企業や自治体が5Gのネットワークを整備して自営するもの。通信大手のサービスエリア外でも5Gを利用できるほか、用途に応じてエリアや速度など通信環境を柔軟にカスタマイズできる利点もある。

 総務省が2019年12月に一部の周波数帯でローカル5Gを認可した。その後、2020年12月に使用できる周波数帯を大幅に拡充したため、通信距離が延びたほか、屋外での利用がしやすくなった。

 ローカル5Gは、IoTを駆使するスマート工場、トラクターの自動運転をはじめとするスマート農業、中山間地域を対象にした遠隔医療など幅広い分野で応用が見込まれ、いくつかの実証実験が2020年から行われている。ローカル5Gの構築支援サービスを行うベンダーも現れている。

 今回、陸上の建物に設けたローカル5Gの基地局のアンテナ(図2)から発する電波の伝搬範囲は半径500メートル程度。養殖場のある場所と通信ができればいいので、全方向(360度)をカバーする必要はなく、指向性を持たせ、約60度の範囲に絞っている。

「ローカル5Gならではのカスタマイズ」と東京大学の中尾彰宏教授が指摘するのが、通信速度の設定である。水中ドローンで撮影した高精細の映像はリアルタイムに陸上に送る必要がある。このため、データのアップロード速度を約200Mbpsとした。通信大手の5Gサービスはダウンロード速度を重視しているため、アップロードは「通常50Mbps程度」(東大の中尾教授)とされる。このローカル5Gではダウンロードよりアップロードの速度を優先し、4倍のアップロード速度を持たせた。

(栗原 雅)