(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 菅義偉首相が昨年(2020年)10月の所信表明演説で「2050年温室ガス排出実質ゼロ」を打ち出し、それを受けて政府は年末にカーボンニュートラル(炭素中立)を目標とする「グリーン成長戦略」を発表した。日本経済新聞は正月から「カーボンゼロ」のキャンペーンを開始し、世の中はすっかり「脱炭素」モードだが、ちょっと待ってほしい。

 テレビに出てくる洪水が起こったとか山火事が起こったとかいう映像は、温暖化の証拠にはならない。そういう災害は、つねに一定の確率で起こっている。問題はそれが統計的に有意に増えたのかということだが、今のところそういう統計はない。さらに大きな問題は、それを人間が止めることができるのかということだ。

地球温暖化は人類滅亡の危機ではない

 温暖化は、日本では大した問題ではない。たとえば東京では、20世紀に平均気温は約3℃上がったが、そのうち地球温暖化の影響は0.74℃である。残りは都市化によるヒートアイランド現象だが、実害は何もなかった。

 だからといって、今後も何も起こらないとは限らない。問題は今後、地球の平均気温がどれだけ上がるかである。これについては国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、2013年の第5次評価報告書で「何もしないと2100年に地球の平均気温は現状から中央値で4.8℃上昇する」と予測した(図1)。

 これは2010年ごろのデータにもとづくシミュレーションだが、IEA(国際エネルギー機関)が昨年10月に発表した世界エネルギー見通しでは、世界のCO2排出量は2019年にピークアウトし、今後も減り続けると予想している(図2)。

 これは図1のIPCCのシナリオでいうと、RCP4.5ぐらいである。このペースでゆるやかにCO2排出量が減り続けると、2100年の気温上昇は2℃程度だろう。これは東京都と宮崎県ぐらいの気温差であり、80年かかってこれぐらいの気温上昇は、体感上ほとんど気がつかない。