アメリカは気候変動対策の「不登校の生徒」

 サミットでの動向が注目された中国は、既存の目標を据え置きとした。アメリカは、中国にも目標の引き上げを求めたかったが、肩透かしをくらった形だ。据え置きされた目標自体にも、中国の地政学的な思惑がある。

 習近平国家主席は昨年9月の国連総会で、「二酸化炭素の排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までに実質ゼロにする」と表明し、世界を驚かせた。世界のCO2排出量28%を占める最大の排出国である中国の突然の脱炭素化表明には、したたかさが見えた。国連での発表の前後には、EUとの対話や米大統領選が予定されていたのである。

 気候変動対策で先行する欧州に秋波を送り、トランプ政権下でのアメリカの出遅れを際立たせ、気候変動を地政学的な手段とする周到さだ。また、サミット直前の4月16日、習近平国家主席はドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領と気候変動に関する協議も行っている。ここでも、中国は欧州との緊密な連携を強調した。

 では、気候変動サミットでは中国はどのようなメッセージを発したのか。

 習近平国家主席は「中国は、アメリカが気候変動に対する多国間での協調の枠組みに戻ってきたことを歓迎する」とスピーチをした。また、脱炭素化の具体策として、石炭に依存したエネルギーシステムの改善と「グリーン開発」に取り組み、2026年から2030年の石炭消費量を、2021年から2025年の水準から段階的に削減する方針を明らかにした。

 一見するとアメリカに対する歩み寄りの姿勢に見える。しかし、実のところは「パリ協定から脱退したアメリカの出戻りを中国は歓迎する。ただし、気候変動対策の主導権はあくまでも中国にある」というメッセージとされる。

 その証拠に、4月16日の会見で、趙立堅報道官は「中国はパリ協定の妥結に多大な貢献をした。中国の新たな目標は気温上昇を0.2℃から0.3℃抑えるもので、気候変動に対する中国の努力と野心の現れだ」と自信をにじませた。加えて、「アメリカが気候変動対策の場に戻ってきたのは栄光の復帰ではない。不登校の生徒が学校に戻ってきたようなものだ」と辛らつな発言もしている。