トップ層を巻き込み、相互作用で推進力をアップさせる

 丸井グループにおけるウェルネスのもう1つの柱は、トップ層を対象にしたレジリエンスプログラムだ。

「社員の主体的な取り組みを推進する一方、もし上司が『そんな取り組みをしている暇があったら目の前の仕事を終わらせてほしい』と言ってしまったら、台無しになります。そこで組織への影響力が大きい部長以上の役職者を対象に、2016年から1期1年間のレジリエンスプログラムを実施しています」

 これも受講は強制ではなく、公募あるいは卒業メンバーからの推薦に基づく希望制とした。あくまで主体性にこだわっている。2021年までに約130人、部長職の約9割が受講し、現在は課長職まで対象を広げている。

 全社員を対象とした全社横断プロジェクトと、トップ層を対象にしたレジリエンスプログラム、この2つの相互作用でウェルビーイング経営は推進力を増している。

 同社ではストレスチェックをもとにした調査を定期的に実施しているが、ウェルネスの取り組みに参加している人の方がストレス度は低く、ワークエンゲージメントが向上していることが分かったという。


拡大画像表示

「取り組みを始めた2016年以降の推移を見ても、続けてきたことで、熱意をもって仕事に取り組むワークエンゲージメントの指数が高まってきている状況が分かります」

 さらに、健康の基盤となるヘルスリテラシーを上げるため、2018年から日本健康マスター検定の団体受験を開始。あくまでも希望制だが、合格すれば6000円程度の受験料を無料にする仕掛けで、現在までに全社員の約3人に1人が自発的に健康マスターの資格を取得している。

「健康マスターの合格者で、かつウェルネスへの取り組み参加者のパフォーマンスを分析したところ、ストレス度も低く、エンゲージメントが高いという仮説通りの結果が出ています。ウェルネスの取り組みやヘルスリテラシーを上げることが、仕事のパフォーマンス向上に関連することはほぼ間違いないでしょう」

 2008年以来、労働時間の削減や勤務体系の多様化などの働き方改革にも取り組んできた丸井グループ。生産性向上と人件費低減につなげ、この12年間の総残業代削減効果は26億円にもなるが、サステナビリティ、ウェルビーイングの価値を生み出し、ウェルネスの取り組みを強化することで得られた効果はさらに大きい。

 これらの取り組みは、コロナ禍以降の働き方改革、ESG推進を目指す企業の参考になる。

(小島 玲子)