大組織に新しい手法を導入するときのポイント

 最後に、コープさっぽろのような大きな組織に新たなコミュニケーション手法を浸透させる際のポイントについて触れておこう。

 パート・アルバイト職員も含めると1万5000人に及ぶコープさっぽろでは、いきなり全体でSlackを導入しようとしても、混乱が生じ、普及しないのは明白だった。

「そこで、まずはデジタル推進本部など、DXの中心となる部署でSlackの運用を始めました」と長谷川氏。各部署には、特にSlackへの移行を指示したり、奨励することはしなかったが、特定部署で使っていくうちに、自然とツールの利便性に関する情報が広がり、興味を持つ職員が増えていった。

 やがて、Slackの存在を面白いと感じる人が増えてくると、説明会や勉強会を開催したり、説明動画をシェアしたりすることで取り組みはさらに広がっていった。

「正式にメールを使用しないという発信を上層部から出したのは、最後でした。役員などはデジタルツールに慣れていないケースが多いですから。現場が慣れ、評判が上々になった頃を見計らって、Slackを組織内の正式なコミュニケーションツールにしましょうと提案したのです」

 DXは、トランスフォーメーション(変革)という言葉が示すように、どこかで必ず今の慣れているやり方を「変える」必要があるということを暗示している。人間は誰でも、慣れたやり方を続けたがるものだ。
だから、DX推進のためには、トップダウン、ボトムアップ、横展開といろいろな方向から、新しい手法のベネフィットを伝える必要があるわけだ。

 しかし、伝えるといっても「押し付け」てはいけない。「生産性が上がる」など、それを使う人にとってのベネフィットを前面に出して理解してもらい、自然と広まっていく流れをつくっていくことが肝要だ。そのことをコープさっぽろの取り組みは教えてくれる。

(長谷川 秀樹)