※本コンテンツは、2021年9月17日配信のJBpress主催「第5回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅱ「小売業DX(データ活用)事例 〜『メーカー×小売業のコラボレーション』で目指すDX〜」の内容を採録したものです。

 トライアルホールディングス傘下のトライアルカンパニーは、IT技術を駆使した小売企業として業界をけん引している。スーパーセンター「TRIAL」を中心に260店舗超を展開し、年商は約5000億円。祖業の一つがソフトウエアの開発会社であったこともあり、1980年代の創業期から「ITの力で流通を変える」ことをグループのミッションとし、近年はリテールAIの分野に注力、小売業界のDX化を進めている。「TRIAL×Retail AI」が提示する「小売業の未来」とは。エグゼクティブ・アドバイザーの西川晋二氏が語る。

小売業の課題は「労働生産性」「老朽システム」「コロナ対応」

 西川氏は小売業界が抱える問題点を指摘する。

 トライアルカンパニーの推計によれば、「流通140兆円の取り扱い市場に対し、約3割に当たる44兆円は全体最適化がされておらず、ムダ・ムラ・ムリがいまだ存在している」という。

 そして、「全産業の労働生産性と従業者数構成比を面積図(縦軸:労働生産性、横軸:従業者数)に表してみても、製造業や卸売業の労働生産性は全産業平均を上回りますが、小売業の場合は『従業者数は決して少なくない』にもかかわらず『労働生産性が低い』。

 欧米との比較でも、日本の卸売・小売業の労働生産性を100とした場合、イタリアは112.3、イギリスは165.3、フランスは252.3、アメリカは310.0、ドイツは312.7とそこには顕著な差があります」と西川氏は語る。

 こうした労働生産性の課題に加え、小売業界が抱える新たな問題が、経済産業省『DXレポート』に記された“2025年の崖”。「2025年以降、日本では最大で“年間12兆円”の経済損失が生じる可能性がある」との予測で、その原因は「既存の老朽システムが事業部門ごとに分断化・複雑化・ブラックボックス化され、全社横断的なデータ活用が行えない」ことにあるが、これは小売業でも深刻な問題。「全産業の中でも特に商社・流通は、約8割の企業が老朽システムを抱えている」といわれている。


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 そうした中で起こった新型コロナウイルスの感染拡大。「これも、小売業に大きな影響を及ぼしています。2020年以降、マスクパニック、災害備蓄、巣ごもり、自粛長期化&自粛連休・・・など、消費行動の変遷があり、今後も緊急事態宣言解除後のリベンジ消費やニューノーマルへの対応などは継続していくでしょう」と西川氏。

 そして、コロナ禍の購買行動の変化を「安全価値(非接触・レジレス・キャッシュレス・まとめ買い)、時間価値(オンライン・信頼・つながり)、社会価値(来店頻度減・短時間化)の3つに大別できると思いますが、これらがニューノーマルでは“当たり前”の価値観になっていくと思います」と話す。