日本展開とサザビーリーグの「両利きの経営」

 1990年代前半に「世界に1万店舗つくる」という目標を掲げたスターバックスは、ビジョナリーな方法論を実践し、現在は全世界で3万1000店を展開している。日本では1996年に銀座に1号店を出し、現在は1650店舗、47都道府県全てに出店した。
 しかし、重要なのは店舗数の多さではなく、働く仲間がやりがいを持って仕事ができる環境だ。


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「上の写真に写っているのは、聴覚障害者だけで運営する店舗のスタッフです。働く人が、自分らしさを表現しながら生き生きと働ける。スターバックスのカルチャーが表れていると言えます」

 日本独自の新しいカルチャーとしては、アメリカでトレーニングを受けた日本人トレーナーが始めた、対話型のトレーニングがある。従業員一人一人の個性を引き出し、自主的にチームプレーを実践する素地になっていると、ビーハーにも認められたという。

 さらに梅本氏は、先述の内容に人的資源と組織・機構の整合性をとる「両利きの経営」を合致させながら、サザビーリーグの「第二創業の物語」を簡単に解説する。

 対等合弁事業スターバックス コーヒー ジャパン株式会社の日本側のパートナー企業であったサザビーリーグは、ブランド「Afternoon tea」をはじめ、ライフスタイルを提案するビジネスを展開してきた。90年代前半から中盤にかけて同社は成熟し、ピークアウトしつつあったと言う。ブレイクスルーを求めた先に、スターバック コーヒーという新規事業があった。


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「上の図で、左下から人的資源の1と2、組織文化、公式組織という4つの箱を挙げました。これらは全て、古いやり方、オールドパラダイムです。スターバックス コーヒー事業のためには、新しいやり方が必要でした。そこで3人のキーパーソンがリーダーシップを発揮しました。スターバックスにほれ込み『一緒にやろう』と語る角田雄二、その弟でサザビーリーグの創業者の鈴木陸三がビジョン、戦略を立て、グループ全体をつくり、私(梅本)が公式の組織、機構に落とし込み、パラダイムシフトしていったのです」

 くしくもスターバックスコーヒー第二創業と同じ形になった日本のスターバックス コーヒー事業の創成については、梅本氏の著書『日本スターバックス物語 ─はじめて明かされる個性派集団の挑戦』(早川書房)に詳しく載っている。

「両利きの経営」のような優れた経営理論は、実証的・合理的な知恵を授けてくれる。しかし、理論を学んでも、自動的に自社で実践できるわけではない。理論を自分たちの物語に転換することで、はじめて具体的なイノベーションの動きが社内に生まれ、新しい価値創造が実現するのだ。
「理論は物語によって動き出す」。これが物語経営の神髄といえるのではないだろうか。

(梅本 龍夫)