言うまでもないが、1978年の「改革・開放」以降の経済成長に伴い、中国人の生活水準は大幅に向上した。鉄道インフラの整備による移動圏・生活圏の拡大をはじめ、衛生環境の改善や寿命の延長、娯楽の充実などGDPでは捉えきれない豊かさも実現されている。

 近年、中国はデジタルエコノミーの勃興を経済成長の新たなエンジンと位置付け、デジタル技術の開発と社会実装により「質の成長」を目指そうとしている。さまざまなデジタルサービスが登場し、多くの中国人はスマホさえあれば、日々の暮らしにおいて、時間や距離に縛られない自由な生活を享受できるようになっているのだ。デジタル化の進展が中国にもたらしている変化は、多くの人の想像を超えている。

 本連載はその変化に焦点を当てるものであるが、当局の政策やテック企業の取り組みだけでなく、人々のライフスタイルや消費行動の変化なども取り上げ、「人」が見えてくる内容にしたい。

 1回目はテクノロジーを積極的に受け入れ、その利便性を享受しつつも、データの悪用に翻弄される中国人の悩みにフォーカスする。11月から中国初の「個人情報保護法」が施行され、これまでのデータ活用(乱用も)一辺倒から舵を切った中国の姿勢転換がみられた。