「日建設計」という会社は、一般の人にはほとんど知られていないだろう。同社は、建築設計分野では世界最大級の設計会社だ。書籍『誰も知らない日建設計』を執筆した元建築雑誌記者の宮沢洋氏が、同社のユニークさを4回にわたり読み解く。その3回目。(JBpress)

 世界最大級の建築設計会社「日建設計」がいかにユニークか、ということを2回にわたって紹介してきた。

東京タワー、東京ドーム、東京スカイツリー、共通点は何?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67790
大胆な建築デザインを生み出す“組織設計のカリスマ”とは
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67791

 今回と次回は、巨大設計組織・日建設計に生まれつつある新しい動きを紹介する。それは「近現代建造物の再生」と「カネを生む公園」だ。

近現代建造物を改修しながら使い続ける「再生」

 日本の都市というのは、どうして容積率いっぱいの面白味のない箱形ビルばかりなのだろうか。そんなふうに感じている人は多いだろう。筆者もそう思う。日建設計をはじめとする“組織設計”は、そうした容積至上主義を先導する存在だと世の中には認識されている。

 今回は、「組織設計=容積率パンパンの新築ビル」というイメージを払拭する、日建設計内の部署「ヘリテージビジネスラボ」について書きたい。明治以降に建てられた「近現代建造物」を再生する取り組みである。

 古い建物の保存改修は昔から行われているのではないか、と思われるかもしれない。確かにそうだが、ほとんどは江戸時代以前の木造建造物の保存改修だった。特に、文化財に指定されるような貴重な木造建造物の保存改修は、従来、官公庁や特定の文化財を専門とする設計監理団体が行うものだった。

 近年、明治期以降の近現代建造物が重要文化財指定を受けるようになると、修理・改修しながら継続的に活用しよう、つまり、見学するだけの「凍結保存」ではなく、新たな機能を加えて「再生」しようという機運が強まってきた(建築の世界では「動態保存」とも呼ぶ)。

 レンガ造や鉄筋コンクリート造、あるいはエレベーターを備えるような建物の保存改修には、木造とは全く別の知見が必要だ。そこに、明治期から120年の歴史を持つ日建設計の強みがある。

免震と大胆な対比で再生した京都市役所

 チームを率いる西澤崇雄氏(日建設計ヘリテージビジネスラボ アソシエイト ファシリティコンサルタント)はこう言う。「近現代建造物は、公共施設や企業が所有し現在も使用している資産が多く、弊社にとっては最も経験の多い領域。建物をこの先も活用し続けていけるよう、思い切った用途転用も視野に入れた事業計画の提案から、耐震構造の検討、新築・増築・改修の設計、工事後の運営支援まで、ワンストップで提供することができる」

 分かりやすい例が、京都市役所本庁舎(京都市中京区)の再生だろう。