一方、建て替えた西庁舎のデザインも日建設計らしい。本庁舎と軒の高さをそろえつつも、デザインを中途半端にまねることはせず、ガラスを大胆に使って新旧の対比を明確にしている。

 西庁舎の建て替えと分庁舎の新築はすでに完了。これから北庁舎の建て替えが本格化し、2025年には整備が完了する見通しだ。

名古屋テレビ塔も“びっくり再生”

 ちなみに、先ほど触れた「免震」というのは、大きなゴムなどを柱の下に挟んで地震の揺れを軽減する技術を言う。日建設計はこの手法を用いた耐震改修に実績が多い。例えば、昨年(2020年)秋にリニューアルオープンした「中部電力 MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)」も、日建設計の改修設計により4本の脚の下を免震で改修している。

 もとの塔は、“塔博士”と呼ばれる内藤多仲(たちゅう)の設計で1954年に完成した。国の登録有形文化財だ。今回の改修により、かつて放送関連施設だった“空中スペース”が、現在はホテルになっている。従来の「文化財保存」では考えられない大胆な活用例だ。

 昨今の都市開発には、こうした既存建物の再生を伴うプロジェクトが増えている。こうした改修技術を高めることは、日建設計の国内での優位性を高めることにつながる。加えて西澤氏は、「海外においても、地震国日本として世界をリードする免震・制震設計技術がアドバンテージとなる。台湾・中国・韓国に加え、ヨーロッパでもポルトガルやフランス南部、イタリアは地震国なので、今後大きな需要が期待できる」とみる。

 実は、日建設計はこれまでの120年も、社会の要請に応えるために常に形を変えてきた。その歴史や組織に興味のある方は、拙著『誰も知らない日建設計 世界最大級の設計者集団の素顔』をぜひ手にとっていただきたい。

 次回はもう一つの新機軸、「カネを生む公園」を紹介する。
渋谷の公園が魅力的に変わった「カネを生む」デザイン
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67933

『誰も知らない日建設計 世界最大級の設計者集団の素顔』
著者:宮沢 洋
価格:2750円(税込)
ISBN:978-4-532-32442-1
発行日:2021年11月19日
発行:日本経済新聞出版
ページ数:184ページ
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4532324424/
日経の本:https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/32442

(宮沢 洋)