技術的なエネルギー効率は、モーターのほうがエンジンよりはるかに高い。ガソリンエンジンの熱効率(熱エネルギーを動力に変える効率)は最大30%だが、モーターの電力を動力に変える効率は90%以上である。

 エネルギー効率は電源によって異なるが、燃焼から駆動まで車内で行うガソリン車に対して、発電と駆動を分業するEVのほうが合理的である。熱を電力に変換して動力に変えるロスはあるが、発電は大規模な発電所で集中的に行うことが合理的で、技術進歩の余地も大きい。

自家用車を減らすことが脱炭素化の決め手

 だからエンジンがモーターに置き換わることは時間の問題である。短期的には充電時間や航続距離などの問題もあるが、EVに投資が集中すれば解決できる。これは大型コンピュータがPCに置き換わり、電話がインターネットに置き換わったのと同じネットワーク外部性の問題である。

 しかし今すぐEVが普及するわけではない。半導体には18カ月で集積度が2倍になる(コストが半分になる)ムーアの法則があったが、EVの価格の40%を占める電池の材料はリチウムやコバルトなどの稀少金属なので、なかなかコストが下がらない。

 リチウムイオン電池は製造段階で多くのエネルギーを消費するので、現状で環境負荷がもっとも低いのはHVである。製造から廃車までのライフサイクル全体をみると、日本では10万km走行までは、ハイブリッド車のほうがCO2排出量は少ない。

 その原因は単純である。電力の77%が火力発電なので、電力を使うことは化石燃料を使うこととほとんど同じなのだ。自動車の台数が減らない限り、CO2排出量は減らない。重要なのは、自家用車を減らすことである。

 自家用車はきわめて効率の悪い乗り物であり、保有している時間の3%しか乗っていない。それは20世紀のアメリカできた浪費的ライフスタイルであり、世界の圧倒的多数の人々にとっては一生買えない贅沢品である。

 日本の都市では電車とタクシーでほとんどの用は足りる。週末の家族旅行はレンタカーで十分だ。地方でもウーバーのようなライドシェア(配車サービス)が普及すれば、自家用車は必要なくなる。

 これによって自動車は移動サービス(TaaS)になる。社会全体の走行距離は増えるが、自動車の生産台数は減るので、CO2排出量は90%減る可能性がある。