スマートワーク経営研究会は、「多様で柔軟な働き方やイノベーションを通じた企業の生産性向上を後押しする」ことを目的に運営される、日本経済新聞グループ「日経スマートワークプロジェクト」から派生した学識経験者研究会である。同研究会委員を務める学習院大学経済学部教授の滝澤美帆氏が、研究会が実施したサーベイをもとに「働き方改革が企業業績に与える影響、健康経営との関係」について報告した。

※本コンテンツは、2021年12月1日に開催されたJBpress主催「第8回 ワークスタイル改革フォーラム」の特別講演Ⅱ「働き方と企業業績〜健康経営、従業員の理解に着目して」の内容を採録したものです。

労働生産性と利益率向上に影響を与えた働き方改革の施策

 2019年4月1日、「働き方改革関連法」施行に伴い、時間外労働の上限規制が大企業・中小企業に適用された。時間外労働の上限規制によって労働資源がさらに限られるようになった中、これまでと同水準以上のアウトプットを生んでいくには、働き方の抜本的見直し、そして柔軟な組織変革がポイントになる。近年はIoTやAIの導入も進んでいるが、それらの恩恵を十分に得るためには、働き方・組織運営体制の変革が急務である。

 スマートワーク経営研究会は、人材活用に関する「個別施策」(女性の活躍を推進するためのキャリア研修・セミナーなど、60歳以上の従業員の雇用制度、障がい者雇用やLGBTへの対応、多様な勤務体系を実施する制度など)が、「企業業績」(労働生産性・利益率)に与える影響について分析調査を行った。その結果が下図だ。


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「時間当たり労働生産性と利益率(ROA・ROE)に影響が及んだ施策に『○』がついています。職務限定正社員・フレックスタイム制度といった『正社員の多様で柔軟な働き方を実現するための施策』は、時間当たりの労働生産性向上に寄与。また、労働時間の適正化といった『ワークライフバランスに関する施策』、フレックスタイムやサテライトオフィス、モバイルワークといった『場所・時間に対して多様で柔軟な働き方を実現するための施策』は、ROA・ROEなど利益率を高める効果が生まれていると分かります。コロナ禍で多くの企業がある意味、強制的に柔軟な働き方を導入したと思いますが、今後もそれら施策を一時的な対処と考えず、生産性向上の手段として捉えていくことが重要であると言えます」