「パワーカップル」なら1億円のローンも可能に
では、1億円を超える物件がどれほど供給されているのかをみると、グラフ2のようになっている。2021年3月から2022年2月までの1年間をみると、首都圏における1億円以上のマンションの発売戸数は2964戸と、実に3000戸近い水準に達している。
この間の首都圏の新築マンション発売戸数は3万3483戸だから、1億円以上の億ションの割合は8.9%になる。ほぼ1割に迫ろうかという勢いだ。当たり前とまではいわないが、都心やその近くのマンションであれば、上層階には1億円以上の住戸があるのはごくふつうだ。
では、そんな億ションを買っているのは誰なのか。
これまでは、億ションを購入できる人は、親代々の富裕層や企業経営者、大手企業の上級管理職、医師、弁護士、公認会計士などのいわゆる“士業”などに限られていたが、最近では会社員でも億ションを購入できるようになっている。
その代表格がパワーカップルと呼ばれる年収の高い共働き世帯だ。夫婦ともに優良企業などの責任ある地位につき、世帯年収が1000万円を超え、1500万円、2000万円というケースも増えている。
そんな世帯であれば、特に資産的背景はなくても、多額の住宅ローンを組んで億ションを買えるようになっている。大手不動産会社の営業担当者はこう語っている。
「夫婦ともに優良企業に勤めているので信用力があるうえ、購入物件は都心やその近くの物件なので、担保評価も安定している。購入価格の9割以上の融資を行う金融機関が多く、なかには、100%ローンで買っている人たちもいる」
たとえば、金利0.375%、35年元利均等・ボーナス返済なしで1億円借り入れても、毎月の返済額は25万円ほど。年収1000万円でも返済負担率は30%ほどだし、年収1500万円なら20%ほどに下がる。金融機関としてもローン破綻のリスクはほとんどないと、安心して融資できるわけだ。