(井元康一郎:自動車ジャーナリスト)

「軽自動車批判」が度々起こる背景とは?

 税金や保険料が安く、地方の重要な足となっている軽自動車。2020年の乗用車市場における軽乗用車の比率は31.3%。普通車に較べて半導体不足の影響をより強く受けたことでコロナ禍前の2019年の40.4%より大幅に下落したものの、今なお乗用車の3台に1台前後というメインストリーム商品となっている。

 一方で軽自動車制度についてはたびたび増税、ひいては規格撤廃論が持ち上がったという歴史もある。近年の大きな話題は、乗用車の軽自動車税が7200円から1万800円に5割アップとなった2015年の増税くらいだが、2021年には東京都が軽自動車の再増税を“提言”、また国土交通省が高速道路の軽自動車料金区分の廃止に関して観測気球を上げるなど、圧迫は常にかかっている。

 一般的には負担増のネタが出てくれば庶民がこぞって反感を示すのだが、クルマの場合は一枚岩ではない。軽自動車の数倍の税金を取られている普通車ユーザーは軽自動車に対して何となく疎ましい感情を抱いている。軽自動車優遇を見直したい行政としてはその感情を利用してユーザーの分断を図りつつ、「軽自動車は(価格が)高い」「軽自動車は重い」「軽自動車は燃費がいいわけではない」といった論法で牙城を崩す構え。メディアでもそんな官の意向に忖度したと思しき記事を度々見かける。

 それらが本当のことであれば、たしかに軽自動車の存在意義が疑われても仕方ない。地方の重要な移動手段という社会的な意義を考慮しても、普通車の税額大幅引き下げを前提に負担の公平性をもっと進めるべきだ。だが、筆者の経験に照らし合わせれば、前記の軽自動車批判の論法のほうが事実に反するとしか思えない。

 筆者は軽自動車から大型乗用車まで、多種多様なクルマを長距離テストしている。走行距離は短いときで400km、長いときは4000kmを超える。クルマは自動車メーカーや輸入会社から拝借するが、燃料代、高速代、航送料金などの移動コストはすべて自分持ち。ブランドによってはトラブルで発生する経費もオウンリスクだ。当然コストは意識するし、とくに1000km超のドライブでは特別にテストしてみたいなどの理由がないかぎり燃費の悪いクルマは選ばない。

 そんな長距離テストで、使われている技術を問わず信頼してクルマを選べる代表格は、実は軽自動車だ。いくつかの事例を紹介したい。