多くの国々が中央銀行デジタル通貨の研究を進める中、これに付利をすべきどうかが議論されているが、当局や中央銀行の見解は、付利をしない方向が大勢である。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第82回。

 デジタル技術革新が進む中、中央銀行自身が発行するデジタル通貨、すなわち、「中央銀行デジタル通貨」(Central Bank Digital Currency, CBDC)が注目を集めています。中国やスウェーデンなど多くの国が調査研究を行っており、既にバハマ、東カリブ諸国、ナイジェリアなどは正式に発行しています。

 この中央銀行デジタル通貨の設計を巡っては多くの論点がありますが、とりわけ、学界などで盛んな議論に、「中央銀行デジタル通貨に金利を付けるべきか」という問題があります。

 もっとも、既に中央銀行デジタル通貨を正式発行、ないし試験的に発行している国々の中で、これに金利を付けている所はありません。現在中央銀行デジタル通貨について研究を行っている国々も、これに金利を付けることには消極的です。

中央銀行デジタル通貨にプラスの金利を付けると?

 もちろん、どの国でも現金には金利がつきませんので、中央銀行デジタル通貨を「デジタル化された現金」と捉えるならば、金利が付かないのは当然にも思えます。しかし、学界では、「中央銀行デジタル通貨にプラスの金利を付けてはどうか」という意見が根強くあります。これは、中央銀行デジタル通貨の金利が、あらゆる金利の「下限」として働きうるためです。

 政策当局がインフレ抑制や為替レート防衛などの観点から金利を引き上げたい場合でも、現金に金利を付けることは困難です。しかし、仮に誰もが持てるようになる中央銀行デジタル通貨に金利を付けられれば、どんなに運用手段のない人々でも、最低限、中央銀行デジタル通貨の金利は得られることになります。したがって、これよりも金利の低い金融商品は生き残れませんので、中央銀行デジタル通貨の金利は実質的に、預金金利や市場金利などの下限になります。

 しかし、中央銀行デジタル通貨に金利を付ければ、銀行預金などからの資金シフトを引き起こしやすくなります。そうなると、これまで民間主導で世の中に回っていたお金が中央銀行に集まってしまいます。中央銀行は企業や個人のリスクとリターンを判断して直接おかねを貸し出すことは得意ではありませんので、効率的な資源配分を歪めてしまうリスクも高まります。