昨年、日量約240万バレルのロシア産原油を輸入していたEUのために国際エネルギー機関(IEA)と米国は4月、合計2億4000万バレルの備蓄原油を放出することを決定した。だが、ロシアからの輸出の減少分の4割に満たず、しかも半年間という期間限定の措置であり、力不足の感は否めない。

ロシア産原油の輸出はむしろ増加

 EU委員会の発表を受けて、案の定、4日のWTI原油価格は前日に比べ5%上昇したが、筆者は「原油価格が今後さらに上昇する可能性は低いのではないか」と考えている。

 西側諸国の制裁のせいでロシアの原油生産量は既に減少しているのはたしかだ。3月の原油生産量は1101万バレルだったが、4月の原油生産量は日量1004万バレルと減少した。ロシアの今年の原油生産量は前年に比べて最大で17%減少する可能性が指摘されており(4月27日付ロイター)、その減少幅は石油業界が投資不足に直面していた1990年代以来の大きさになる見込みだ。

 だが、割安な価格で売られているロシア産原油は魅力的であり、その輸出は生産ほど落ち込んでいないばかりか、むしろ増加しているようだ。

 最近、「目的地不明」のタンカーが増加しているという珍現象が起きている。「制裁を逃れるためにロシア産原油を積んだタンカーが目的地を不明にしている」と指摘されており、「そのおかげで4月のロシアの海上輸送による原油輸出は前月よりも増加した」との憶測が生じている。

 世界のタンカーの運航状況を調査する会社「ペトロ・ロジスティクス」の分析によれば、4月のロシア産原油の輸出量は7%増加した。米国向けは前年比83%、ドイツ向けは79%、英国向けは70%と大幅に減少したのに対し、インド向けは8.4倍、トルコ向けは2.4倍に増え、中国向けは13%増加した。